国会議員の資質
芥川賞や直木賞の選考委員が候補者に
「講評用のメモ、書いておいてくれる?」
と頼んでいたら、文学賞の権威は地に落ち、文芸春秋社は信用を失う。
プロ野球の審判が選手に
「いまのセーフ? アウト?」
「このケースでインフィールドフライって認められるんだっけ?」
などと聞いていたら試合にならない。
選考委員や審判は、専門的知識を持つ第三者が公平公正に判断するから判定が尊重される。
候補者に頼る程度の実力しかない選考委員や、選手にルールをたずねるような審判では、信頼も信用もされない。
国会には法律を作ったり、変えたりする立法権が与えられている。
内閣は国会が決めた法律や予算に基づいて行政を執行する。
国会は立法機能とともに、行政を監視する機能も担っている。
閣僚や官僚たちが国民のためにしっかり仕事をしているかどうか、ルールをねじ曲げたり、自分たちに都合が良いよう勝手に解釈を変えたりしていないかどうかをチェックするのも国会議員の仕事だ。
一部の国会議員が地元の会合に出席する際のあいさつ文や講演の資料を官僚に作ってもらっていたことが厚労省の内部調査で明らかになった。
一昨年12月から昨年11月までの1年間だけで4百件以上の依頼があったという。
国会議員が選挙区の会合に出席し、医療や福祉、介護、子育て、雇用、年金などに関してあいさつしたり、講演するときの原稿や資料を官僚に作ってもらっていたというのだ。
与党議員からの依頼が中心だが、野党議員からも数十件あったという。
官僚たちは「これは本来の公務ではない」と思い、負担に感じつつ、国会議員の機嫌を取るため、あるいは恩を売るために依頼を引き受けていたようだ。
あいさつ原稿まで頼んでいる国会議員が、官僚の仕事ぶりのチェックなどできるわけがない。
地元で使う原稿を頼むような議員は、国会質問の原稿も官僚に作ってもらっているのかもしれない。
行政の監視役であるはずの議員が官僚に操られている。
国民が自分たちの代表である国会議員を選ぶ際に、その資質をしっかりと見極めないと、恐ろしいことになる。