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2021年11月29日

国会議員の資質

 芥川賞や直木賞の選考委員が候補者に
 「講評用のメモ、書いておいてくれる?」
 と頼んでいたら、文学賞の権威は地に落ち、文芸春秋社は信用を失う。
 プロ野球の審判が選手に
 「いまのセーフ? アウト?」
 「このケースでインフィールドフライって認められるんだっけ?」
 などと聞いていたら試合にならない。
 選考委員や審判は、専門的知識を持つ第三者が公平公正に判断するから判定が尊重される。
 候補者に頼る程度の実力しかない選考委員や、選手にルールをたずねるような審判では、信頼も信用もされない。

 国会には法律を作ったり、変えたりする立法権が与えられている。
 内閣は国会が決めた法律や予算に基づいて行政を執行する。
 国会は立法機能とともに、行政を監視する機能も担っている。
 閣僚や官僚たちが国民のためにしっかり仕事をしているかどうか、ルールをねじ曲げたり、自分たちに都合が良いよう勝手に解釈を変えたりしていないかどうかをチェックするのも国会議員の仕事だ。

 一部の国会議員が地元の会合に出席する際のあいさつ文や講演の資料を官僚に作ってもらっていたことが厚労省の内部調査で明らかになった。
 一昨年12月から昨年11月までの1年間だけで4百件以上の依頼があったという。
 国会議員が選挙区の会合に出席し、医療や福祉、介護、子育て、雇用、年金などに関してあいさつしたり、講演するときの原稿や資料を官僚に作ってもらっていたというのだ。
 与党議員からの依頼が中心だが、野党議員からも数十件あったという。
 官僚たちは「これは本来の公務ではない」と思い、負担に感じつつ、国会議員の機嫌を取るため、あるいは恩を売るために依頼を引き受けていたようだ。

 あいさつ原稿まで頼んでいる国会議員が、官僚の仕事ぶりのチェックなどできるわけがない。
 地元で使う原稿を頼むような議員は、国会質問の原稿も官僚に作ってもらっているのかもしれない。
 行政の監視役であるはずの議員が官僚に操られている。
 国民が自分たちの代表である国会議員を選ぶ際に、その資質をしっかりと見極めないと、恐ろしいことになる。

2021年11月20日

冥土の土産

 「八十里越ってオレが生きているうちにできるんだろっか。下田から福島の只見町まで車で通ってみてえけど、開通するのはオレが死んでしもたあとらろっかね」と聞かれた。
 「大丈夫ですよ、きっと」と答えたが、本当のところは分からない。
 「我や先、人や先、今日とも知らず、明日とも知らず、遅れ先立つ人は元のしずく、末の露より繁しと言えり。されば朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身なり」と蓮如上人も書いている。
 人間、いつ死ぬのか分からない。
 年上のその人がピンピンしているうちに、こっちが先に旅立つかもしれない。
 その人がこの先、どのくらい長生きするのかは分からないが、国道289号線八十里越は、あと5年で開通するそうだ。
 これまで「いつできるのか」と何度問われても時期を示すことを避けてきた国土交通省がことし3月、ようやく「今後5年程度での全線開通を目指す」という目標を示した。
 事業が予定通りに進めば令和8八年までに開通する。

 明治時代の下田出身の衆議院議員、西潟為蔵氏が開さくに努め、田中角栄元首相も期成同盟会の会長として事業促進に尽力した八十里越。昭和45年に国道に昇格し、滝沢亮三条市長が生まれた61年に事業化した。
 延長20・8㎞。うち県境の11・8㎞が国の直轄施工箇所で、その9割近くが11か所のトンネルと、10か所の橋となっている。
 なかには延長3・2㎞の長いトンネルもあれば、地上高81mという高層ビルのような橋もある。
 急峻な地形での難工事のうえ、豪雪地帯のため施工が4月末から11月までの7か月程度に限られているため、完成までに時間がかかっている。
 全体事業費は695億円。進捗率はことし3月末でようやく91%となった。

 17日に初めて現地を視察した花角英世知事は
 「改めて大変な工事と実感したが、新潟、福島両県民が待ち望む道路であり、可能な限り早く完成させてほしい」と述べ、開通後の観光・経済交流に期待した。
 みんなが無事、開通まで生き延びることができますように。

2021年11月17日

神無月

 全国ほとんどの神社はいま留守だ。
 伊勢神宮の天照大神(あまてらすおおみかみ)を除く全国の神様が島根県出雲市の出雲大社にいる。
 神々がいないから旧暦の10月は「神無月(かんなづき)」。
 神々が集っている出雲だけは「神在月(かみありづき)」というそうだ。

 神々たちは出雲大社で祭神の大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)が主宰する会議「神議(かみはかり)」を開いている。
 議題は「すべての縁の結び付け」。
 男女の縁をはじめ、友人との縁や仕事の縁、お金の縁などについて、どこをどう結び付けるかを決めている。
 期間は一週間。この間、出雲大社では神議の邪魔にならないよう歌舞音曲を控え、参拝の拍手も大きな音を立てないようにしている。
 ことしの神議は新暦の11月14日から21日まで。
 休憩中には
 「秋篠宮家の眞子さんと小室圭さんを結び付けたのは面白かったのう」
 「眞子さんは芯の強い子じゃ。さすがは天照大御神の子孫、あっぱれあっぱれ」といった雑談が交わされていたかもしれない。

 神々と違って人間の会議はなかなかうまくいかない。
 10月31日にイギリス・グラスゴーで開会した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は予定した期日までに意見がまとまらず、1日延期して13日に閉会した。
 最後までもめたのが石炭問題。
 議長国イギリスは石炭の使用を「段階的に廃止する」ことを提案したが、インド代表が「まだ開発目標や飢餓の削減に取り組まなければならない発展途上国は、石炭の使用や化石燃料への助成金を段階的に廃止するとは約束できない」と主張。
 これを中国も支持したため、「段階的廃止」ではなく「段階的削減」という表現に変えることになった。

 議長として会議をまとめたアロック・シャルマ前英国ビジネス相は
 「この展開について謝罪します。本当に申し訳ありません。大きな落胆があることも理解しています。けれどもこの合意を守ることが不可欠だったのです」と妥協に理解を求めて声をつまらせ、涙を流した。
 神々から与えられた地球の環境を人々は守り切れるのだろうか。