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ワクチンの糸

 ある日の事でございます。
 お釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶらお歩きになっていらっしゃいました。
 お釈迦様は蓮の葉の間から、ふと下の様子をご覧になりました。
 極楽の蓮池の下は、ちょうど感染症地獄に当たっておりますから、重症患者で満床の病院や人気の途絶えた繁華街などが、はっきりと見えるのでございます。
 すると感染症地獄の底にうごめくカンダタという男の姿がお眼に止まりました。
 この男はいろいろ悪事を働いた大泥棒でございますが、うがいや手洗い、マスク着用には努めていたのでございます。
 お釈迦様はカンダタを感染症地獄から救い出してやろうとお考えになりました。
 幸い、側を見ますと感染症の予防ワクチンがあります。
 お釈迦様はそのワクチンを糸にして白蓮の間から遥か下にある感染症地獄の底へ、まっすぐお下ろしなさいました。

 こちらは感染症地獄の底のウイルスの池で、ほかの罪人と一緒に、浮いたり沈んだりしていたカンダタでございます。
 何気なく空を眺めますと遠い天上からワクチンの糸が、するすると自分の上へ垂れてまいるのではございませんか。
 カンダタは手を打って喜びました。
 ワクチンの糸にすがりつけば、感染症地獄から抜け出せるに違いありません。
 そうすれば宴会や旅行、外出を自粛する必要もありません。
 カンダタは他の罪人たちを押しのけ、引き倒してワクチンの糸をつかみ、上へ上へと一生懸命のぼりました。

 途中、一休みして下を見ると、数限りない罪人たちが、自分の後をつけて、まるでアリの行列のようにワクチンの糸をのぼって来ていました。
 底の方では
 「医療従事者が先だ」
 「年寄りを優先しろ」
 「それより外で働く現役世代が先だ」といった争いも起きています。

 カンダタは
 「こら、罪人ども。このワクチンは己のものだぞ。お前たちは下りろ、下りろ」とわめきました。
 その途端、ワクチンの糸はぷつりと切れ、カンダタたちは暗の底へ、まっさかさまに落ちてしまいました。

 お釈迦様はこの一部始終をじっと見ていらっしゃいましたが、やがて悲しそうなお顔をなさりながら、またぶらぶらお歩きになり始めました。

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