« 2021年01月 | メイン | 2021年03月 »

2021年02月15日

同調圧力に屈しない青年

 「世間をお騒がせして申し訳ありません」と謝罪する人がいる。
 不祥事を詫びる政治家や経済人、芸能人、スポーツ選手などだ。
 違法行為やモラル違反を犯した場合だけではない。
 離婚や親子げんかといった家庭内のトラブルや、企業内の派閥争い、合併問題などが報じられたときも「世間にご迷惑をおかけしました」と詫びる。
 その人たちが世間に「騒いでくれ」と求めたわけではない。
 世間が勝手に騒いだだけなのに、騒いだ世間が悪いのではなく、騒がせた自分が悪かったと謝る。
 そうしなければ世間から非難を浴びる。
 いわゆる「世間体が悪い」ことになってしまうからだ。

 日本では、子どものころから世間と歩調を合わせるように求められる。
 小中学校では集団行動の和を乱してはならないと教えられる。
 遠足などで勝手な行動をしてはならない、お菓子ですら人と違ったものを持ってきてはならない。
 任意参加の部活動だけでなく、全員参加の運動会や学園祭でも「ワンチーム」が求められ、それに同調しないと「KY(空気が読めない)」「変人」と言われ、仲間外れにされる。

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長を辞任した森喜朗元首相(83)の問題発言の底流にあるのは、女性蔑視だけではない。
 メンバーの上下関係や会議の雰囲気、提案者に対する忖度などをわきまえずに発言してはならないという同調圧力がある。

 将棋の藤井聡太二冠(18)が地元の愛知県瀬戸市を走る予定だった東京五輪の聖火ランナーを辞退した。
 一昨年に依頼を引き受けたが、その後、東京五輪が一年延期となり、自身は将棋界八大タイトルのうち棋聖と王位の二冠を獲得した。
 ことしはタイトル防衛戦がある。
 「これまで以上に将棋に向き合う必要がある」と考え、昨年11月に瀬戸市に辞退することを伝えた。
 「日本人が一致結束し、みんなで東京五輪を成功させよう。協力しないのは非国民だ」といった同調圧力にもめげることなく、「自分はいま一心不乱に将棋に取り組むべき」と決意し、瀬戸市の慰留工作にも屈せず、辞退の方針を変えなかった藤井二段。
 改めてすごい青年と思う。