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2020年12月25日

知っているのに、知らんふり

 かつて結婚式では仲人や来賓が、どんな新郎新婦もほめちぎった。
 新郎は「仕事熱心で成績優秀」ということにされ、「明るく朗らかな性格で、いつも場を盛り上げてくれるので同僚や後輩からも大変好かれている」ことになった。
 営業職などの場合は「お客様からも絶大な信頼を寄せられており、わが社にはなくてはならない存在」ということにもなった。
 新婦は「愛嬌があってだれからも好かれる」か「控えめだが、さりげなく気配りができる」、もしくは「気品とやさしさに満ち溢れている」、あるいは「清楚さと教養をあわせ持っている」ことにされた。
 もちろん式に出席した新郎の友人たちは「さぼり癖があってネクラで、いつも上司に怒られ、部下から嫌われている」ことは知っているが口には出さなかった。
 新婦の家族も「無愛想で欲張りで気が利かない女」であることは承知しているが、黙って祝辞を聞いていた。
 式に出席している大半の人たちが、来賓あいさつを「そんなことはない」と思いながら、訂正しようとまではしなかった。

 似たようなことが全国レベルで起きている。
 吉川貴盛元農水相が22日、衆院議員を辞職した。
 「体調不良」を理由としているが、多くの国民が「そんなことはない」と思っている。
 農水相在任中に鶏卵業界に便宜を図った見返りに、鶏卵業者から大臣室などで500万円を受け取っていた疑いが強まり、東京地検特捜部が捜査に乗り出したため、議員を辞めざるを得なくなったことを知っている。
 甘利明元経済財政担当相が「睡眠障害」を理由に半年間にわたって国会を欠席したときも、多くの国民は都市再生機構(UR)に対する口利きで建設会社から金品を受け取っていたことが暴露されたために大臣を辞め、雲隠れしたことを知っていた。
 丸山穂高代議士が「適応障害」を理由に国会を長期欠席したときも、本当の原因は北方領土で酔っ払って失態をさらしたことだと知っていた。

 最近、結婚式では実態とかけ離れたあいさつが減り、無理にほめない自然体のスピーチが増えてきた。
 国会も早くそうなってほしいと思う。