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2019年11月26日

産学連携のお手本

 地元に工学系大学があると、こういうこともできるという手本を長岡市、長岡技術科学大学が示してくれている。
 同大学には国際産学連携センターという部門がある。企業の
 「技術的な課題を解決したい」
 「新製品を開発したい」
 「現行製品を改良したい」といった要望に対し、
 同センターが適材の大学教員や研究者を紹介、専門家が課題解決に向けてアドバイスする仕組みだ。
 企業と大学教員が共通の課題を研究する制度もある。

 中越大震災翌年の平成17年、地元青年業界団体の長岡鉄工業青年研究会と、同大学の若手研究者が交流会を開いた。
 そこから生まれたのがレスキューロボット共同開発プロジェクト。
 レスキューロボットとは、災害時に倒壊した家屋内で逃げられなくなっている人を探すなど、危険な場所での救助作業を支援するロボットのこと。阪神淡路大震災を機に注目され、福島第一原発事故後は被曝リスクが高い場所での作業なども求められるようになった。

 中越大震災で被災した長岡の業界人と研究者が手を組み、被災地の頑張りと技術を世界に発信しようと立ち上げた共同開発プロジェクトはこの年、自作のレスキューロボットで自律移動型ロボットの競技会「ロボカップ」に出場。グッドデザイン賞は獲得したものの競技は予選で敗退した。
 これでメンバーたちのやる気に火が付き、同大学の研究者や学生たちは研究成果を、業界人たちは最新の加工技術を持ち寄り、ロボット開発に熱を上げた。
 その結果、19年には日本大会で優勝。20年には中国で開かれた世界大会で4位となった。
 その後も毎年のように日本大会や世界大会で入賞。昨年もカナダで開かれた世界大会で3位となり、長岡の高い技術力を世界に示した。メンバーはいまも毎週1回午後8時に同大学に集まって研究を続けている。

 三条市が再来年の開学を目指している三条技能創造大学も技術・経営工学科を持つ工学系だ。他に例のない中長期のインターンシップなどにより、より実践的な力を養成することが特色となっているが、教員は20人を超え、それぞれ研究成果を持っている。
 この人財を地域産業の発展に生かさない手はない。

2019年11月15日

県央のチカラ

 燕三条地域の産業力は新潟県経済の大黒柱のひとつだ。
 そのことを県などが13日に新潟市、朱鷺メッセで開いた地方創生フォーラムin新潟で改めて実感した。
 元総務相で東京大学公共政策大学院客員教授の増田寛也氏が基調講演で使った資料に「域外から稼いでいる産業~県際収支(平成23年)」があった。
 県外に売った輸移出額と、県外から買った輸移入額の差額のことだ。
 それによると新潟県の稼ぎ頭は「電力・ガス・熱供給」で県際収支黒字額は4000億円以上。
 以下「生産用機械」「電子部品」と続き、「金属製品」は4番手。
「対個人サービス」「農林業」までの6業種が1000億円以上の黒字だった。
 逆に「対事業所サービス」「石油・石炭製品」「情報通信」「輸送機械」「鉱業」「商業」は1000億円以上の赤字だった。

 県内の製造業で付加価値額がもっとも多く、特化係数がもっとも高いのは金属製品という。
 特化係数とは、地域と日本全体の付加価値構成比率のこと。これが高いと産業集積があり、競争力が強いことになる。
 金属製品の特化係数を高めているのは洋食器や作業工具、利工具など。つまり燕三条の産業だ。

 県内企業の昨年の売上高ランキングでもアークランドサカモトが9位、コロナが10位、オーシャンシステムが18位、ハーモニックが28位、ヴィームスタジアムが31位、パール金属が32位、高儀が36位。
 上位40社に三条市の企業が7社も入っている。県内トップの新潟市、コメリも三条出身企業だ。
 フォーラムでパネリストを務めた坂田匠サカタ製作所社長は新潟の魅力を問われ、
 「世界をあちこち見て回っているが、県央ほどのものづくりの集積地は見当たらない。東京・大田区や東大阪市と比べても県央は優れている。県央には金属加工だけでなく、木工も農業もある。すごい可能性に満ちた地域だ」と答えていた。

 フォーラムのテーマは人口減少や若者定住対策ではあったが、燕三条は新潟県を支える稼ぎ手であることが強く印象に残った。
 これだけ貢献しているのだ。
 県央に基幹病院を設置したってバチは当たらないだろう。

2019年11月08日

ホンコンバッタ

 「ある日、南の空に小さい雲が現れた。それは最初、地平線に、ささやかな霞のようにかかっていたが、風に吹きただよう雲とは違って、しばらく動かずにいた後、やがて扇形にひろがってきた。村人たちはそれを見守っては語りあい、恐怖に襲われた」
 パール・バックの小説『大地』(新居格訳・新潮文庫版)にある、中国・清朝時代の貧しい農村がトノサマバッタの大群に襲われる場面だ。
 農民たちは必死で戦い、何百万匹ものバッタを殺したが、数億匹規模で来襲した大群の前では微々たる抵抗でしかない。バッタたちは大切な農作物をすっかり食べ尽くしてしまった。
 バッタの大群の規模は想像を絶する。米国では幅160㎞、長さ500㎞という北海道の面積に匹敵するほどの大群が確認されている。

 バッタは普段はおとなしいが、干ばつなどが起き、少ないエサを求めて狭い範囲に密集すると、体つきや性格がガラリと変わる。
 体の色は濃くなり、ハネは長く、足は短くなる。
 性質は狂暴化し、イネや畑作物だけでなく紙や綿など植物由来のものはなんでも食べるようになる。
 これを群生相というそうだ。
 普段、バッタは一匹ずつ離れて生活している。群生相になると密集し、集団で行動する。もともと高い飛翔能力はさらにアップし、長距離を飛べるようになる。
 バッタの大群の被害はまさに災害レベル。これほど大きな被害をもたらす害虫は他にいない。

 香港で大規模デモが続いている。3月に始まり、すでに8か月間、続いている。
 最初は逃亡犯条例の改正に反対する抗議行動だった。
 それがデモ参加者の逮捕撤回、デモの暴動認定撤回、香港警察の過剰な暴力を調査する独立調査委員会の設置、さらには普通選挙の実施を求める政治運動に発展した。
 香港の若者たちは普段は青春を謳歌している。
 中国政府の露骨な干渉や介入によって民主主義の危機を感じ取り、デモ行進に参加した。
 バッタが密集することで群生相となるように、香港の若者たちは密着してデモ行進することによって急速に政治意識を高め、香港民主化のために戦う闘士となった。
 彼らが食べ尽くそうとしているのは農作物ではない。
 問答無用で住民の意思を踏みつぶそうとする独裁主義だ。