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スギヒラタケとカリギュラ

 「カリギュラ効果」というものがある。
 禁止されると、かえってやってみたい気持ちが強くなる心理現象のことだ。
 かつて『カリギュラ』という残酷シーンと過激な性描写だけが売り物の映画が米国内の一部地域で上映禁止となった。ただの低俗映画だったが、禁止となったことで話題になり、映画を見たがる人が増えてヒットしたことから、この言葉が生まれた。
 昔話の『鶴の恩返し』には「けっして部屋の中をのぞいてはいけません」、
 『浦島太郎』には「けっして玉手箱を開けてはなりません」という台詞がある。
 どちらも禁じられたために、どうしても中を見たくなってしまう。
 「ここだけの話だからね。だれにも言わないでね」と頼んだ方が、頼まないときより話が広まってしまうのもカリギュラ効果だ。


 「食べてはいけない」と言われると、かえって食べたくなるものがある。
 新潟ではカタヒラやスギゴケとも呼ばれるきのこ、スギヒラタケもそのひとつだ。
 以前はみそ汁や炒めものなどにして食べていた。
 平成16年に新潟や秋田、山形などでスギヒラタケを食べた約60人が急性脳症となり、うち19人が死亡した。
 発症者の多くは腎臓を患っていた。
 その後も毎年のようにスギヒラタケを食べて急性脳症となる人が続いた。
 腎臓病患者だけでなく、健康な人も脳症を発症している。
 厚労省や農水省はスギヒラタケを食べないよう呼び掛けている。
 「そう言われると、かえって食べたくなる」と思うのがカリギュラ効果だが、スギヒラタケ中毒に有効な治療法はまだ確立されていない。


 植物と動物の間には長い攻防の歴史がある。
 植物は動物に食べられまいとしてサボテンやバラのようにトゲをつけたものもあれば、スイセンやトリカブトのように毒を身につけたものもある。
 菌類にも同じように生き残るための戦略があるはずで、スギヒラタケも人間やサルなどから身を守るために中毒症状を起こす成分を身につけたのかもしれない。
 ことしのきのこ採りはいつもの遭難の危険だけではない。
 エサ不足のため人里に出没するクマと出会う危険もある。
 そのうえスギヒラタケには急性脳症発症の危険がある。
 さすがのカリギュラ効果も色あせる。

 

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