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戒律にひと言、付け加えるだけで

 イギリス人作家ジョージ・オーウェルの小説『動物農場』は、牧場の動物たちが革命を起こす物語だ。
 動物たちはある日、自分たちの利益を人間に搾取されていることに気づく。
 動物のなかでもっとも賢いと周囲から思われているブタの指導のもと、動物たちは蜂起する。
 牧場からうまく人間を追い出すことができた動物たちは、動物主義にもとづく戒律を定めて壁に書き出した。

 「二本足で歩くものはすべて敵である」
 「四本足で歩くものと羽のあるものはすべて友である」
 「動物は服を着るべからず」
 「動物はベッドで寝るべからず」
 「動物は酒を飲むべからず」
 「動物は他の動物を殺すべからず」
 「すべての動物は平等である」の七戒だ。


 動物たちは理想に燃えて懸命に働く。
 牧場を取り戻そうとする人間たちとは命がけで戦った。
 そのうちにブタが権力を独占し、他の動物たちを支配するようになった。
 「七戒」にも、いつの間にかいくつかの文字が書き加えられていた。


 「動物はベッドで寝るべからず」の後ろには「シーツを用いては」が付いた。
 この結果、他の動物たちは床で、ブタだけはシーツのないベッドで眠るようになった。
 「動物は酒を飲むべからず」の後ろには「過剰には」が付き、ブタは毎晩、酒を楽しむようになった。
 「動物は他の動物を殺すべからず」の後ろには「理由なしには」が付き、理由があれば殺してもいいことになった。
 「すべての動物は平等である」の後ろには「一部の動物はより平等である」が付いて、ブタは独裁体制をより強固にした。


 この小説が発表されたのは昭和20年。
 ソ連の全体主義、スターリン主義を痛烈に批判した作品として評価された。
 オーウェルは戒律に、たったひと言を付け加えるだけで意味が正反対になることも示した。
 「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
 「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」の後ろに
 「実力組織として、自衛隊を保持する」を付けた場合はどうなるのだろう。

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