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終わった人  終わった映画

 「これ、見たい」と思う映画が年に何本かある。 思っているうちに上映が終わってしまっていることが多い。
 『終わった人』もそのひとつ。内館牧子氏が著した原作は読んだ。内館氏は横綱朝青龍の言動を厳しく批判した横綱審議委員として有名だが、本職は脚本家。代表作にNHK朝の連続テレビ小説『ひらり』や大河ドラマ『毛利元就』などがある。脚本出身の作家は小説でも読者を飽きさせない。講談社文庫の『終わった人』はあとがきを含めて532ページと厚いが、一晩で一気に読んでしまった。
 小説は「定年って生前葬だな」で始まる。主人公は昭和24年、岩手県盛岡市生まれ。東京大学法学部を卒業し、メガバンクに入行したエリートだ。40代で本部の部長職まで出世するが、役員を目前にライバルとの競争に敗れて子会社に出向。63歳で定年退職する。
 仕事一筋だったので趣味もなければ友人もいない。子育てを終えて美容師になった妻は、まだ仕事が忙しくて相手になってくれない。スポーツジムやカルチャースクールに通っても、元エリートのプライドが邪魔をして他のジジババとの他愛のない会話に馴染めない。自分は「終わった人」なのだと頭では分かっていても、仕事をすることへの思いを捨てきれずに「成仏」できない、何かで自分の存在意義を確認したいと切望している。そこにスポーツジムで出会った若いIT企業経営者から「顧問になってほしい」との誘いがあり・・・。
 人生の着地点や、そこに軟着陸することについて考えさせられる小説だ。
 映画化したと知って「見たい」と思った。ただ主人公を舘ひろしさんが演じ、「第二の人生と向き合っていく高齢者の実態とリアルな夫婦・家族の在り方を、心地よいユーモアと味わい深い人間ドラマが交差する、心温まるコメディ」として描いたという点にひっかかった。
 うーん、コメディか。原作は軟着陸に失敗してあがく男の心理を丹念に描いている。
 どうして日本の映画はテーマがシリアスになればなるほどコメディタッチにしようとするのだろう。山田洋次監督の影響だろうか。
 いつ行くか迷っているうちに上映期間が終わっていた。DVDで見るしかなくなってしまった。

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