公選法を変えない限り、投票率は上がらない
新潟県知事選の投票率はどうなるだろう。
候補者はそれぞれ来月10日の投開票に向けて県内を走り回っているが、投票率が大幅にアップする気配は、いまのところない。
告示から一週間が過ぎても「何の選挙?」という人が多い。
知事選は平成になって今回が9回目。平成でもっとも投票率が高かったのは金子清、志苫裕、長崎明各氏が出馬した元年の79・07%で、70%を超えたのはこのときだけ。60%台も2回しかなく、16年以降は4、50%台が続いている。
2年前の前回は53・05%。今回も60%の壁は高い。
県選挙管理委員会は「明日へ生かそう この一票」の看板を県庁などに掲げ、チラシやティッシュペーパーを配りながら県民に投票するよう呼び掛けているが、投票率アップに必要なのはキャンペーンより公職選挙法の改正だ。
公選法は候補者を有権者から遠ざける、時代錯誤の規制だらけとなっている。
まず運動期間。告示日前に「この候補者に投票を」などと呼びかける事前運動を禁じている。違反者は1年以下の禁錮または30万円以下の罰金に処せられ、選挙権も停止される。
知名度のない新人が立候補を決意し、事前に自分がやりたいと思っている政策を訴え、支援を求めることも選挙違反。「ごく短い選挙期間にすべての有権者に自分の主張を伝えなさい」という現実離れした法律になっている。
告示後のごく短い期間に主張を伝えるにしても、戸別訪問は禁止されている。
各家庭を訪問して候補者を宣伝し、投票を依頼した者は、事前運動と同じく1年以下の禁錮または30万円以下の罰金となる。
せめてビラを配って主張を伝えようとしても、候補者の名前や顔写真を載せた候補者ビラは枚数が制限されているうえ、個人演説会場内や候補者が街頭演説を行っている周辺での配布などに限られえる。ローラー作戦などによる全戸配布は認められていない。
確認団体ビラは、枚数制限はないが、候補者の名前や写真を載せることができない。
こんな規制があるから候補者の主張も人物像も有権者に伝わらず、伝わらないから投票率も上がらない。
公選法を変えずに投票率が上がらないと嘆くのは、店の前の道路を通行止めにしておきながら「客がこない」とぼやいているようなものだ。