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2017年06月30日

火の用心

 火事は怖い。
 27日午後7時前、三条市本町二、曹洞宗福昌寺の本堂から出火、本堂と庫裏を全焼し、付近の寺や住宅など8棟の外壁などを焼いた。
 同寺の家人から三条市消防本部に通報が入ったのが午後6時44分。消防車が現場に到着したのは5分後の6時49分。この時点ですでに本堂から炎が立ち上っており、庫裏の炎上も防ぎようがなかった。
 本堂の屋根が焼け落ちた際には巨大な火柱が上がり、周辺の家屋や道路に火の粉が飛び散った。火の粉は火元から約350㍍離れた、五十嵐川付近の空き家の屋根を焦がし、通報を受けて急行した消防車が放水、消し止めた。五十嵐川を越えて嵐南側まで飛んだ火の粉もあったという。

 三条の旧市域では5年前の平成26年5月7日深夜に横町一地内で住宅や店舗など10棟を全半焼、6棟を焦がす大火があった。
 9年前の20年10月27日早朝には、本町一地内でスナックなどが入った雑居ビルなど6棟を全半焼、3棟を焦がす火災があった。
 住宅密集地や繁華街の火災は被害が大きくなりやすい。今回は本堂が墓地に囲まれていたこと、東西南北の各方向から放水できたことなどで延焼被害を最小限に抑えることができ、人的被害もなかったが、同寺にあった石川雲蝶作の欄間などを焼失した。

 退社時間帯の繁華街の火事とあって、一時期、周辺は騒然とし、渋滞も発生した。
 現場近くのスナック経営者は「友だちから『あんたの店、やばいよ』と電話が来て、あわてて店に向かったらものすごい火と煙が見えた。店から大事なものを持ち出して、少し離れた友だちの店に置かせてもらったあと、ずっと消火活動を見ていた。9時すぎにようやく鎮火したみたいだったけど、なんだか疲れて、店を開ける気力がなくなったので店は休んだ」と話していた。
 店から持ち出した大事なものは何だったのだろう。「ブタの貯金箱と営業許可証。貯金箱には小銭しか入っていないし、営業許可証は燃えても保健所でまたもらえるそうだけど、それしか思いつかなかったんだよね」。炎と煙を見ると、冷静ではいられないものだ。

2017年06月29日

頑固ジジイはいまどこに

 最近、物分かりのよい、優しいおじいさんが増えた。
 「頑固ジジイ」や「因業ジサ」が少なくなった。
 世の中には時代が変わっても、頑固に守り続けなければならない価値観もある。
 それを守ろうとするお年寄りが減っているのではないだろうか。
 肺炎で入院していた落語家の桂歌丸さん(80)が先日、復帰会見した。落語の魅力を問われると「日本語というのは日本の文化じゃないですか。その文化を一番使っているのが我々噺家」との自負を示す一方、「失礼ですけれども日本語を使わないで笑いを取っている芸能人が大勢いる。裸でお盆を持って何が芸なんですか。私は違うと思うな。ああいうのを見て面白いな、うまいなと思われちゃ困るんですよ」と最近、裸芸で売れているピン芸人などを批判した。

 裸芸を称える芸人もいる。歌丸さんの発言に対し「落語以外の笑いを蔑むのは傲慢」との意見もあったようだが、歌丸さんは週刊ポスト7月7日号のインタビューでさらに踏み込み、「あれを日本の文化だと思われたら困るんですよ。あんなのは酔っ払いがお座敷でやるようなもんですよ。落語家も、漫才師も、あるいは歌舞伎、お能、狂言の方も、みなさん日本語を駆使して芸を披露しています。言葉ってのは、その国の文化なんです」「ああいう方は、言葉を生かさずに、裸で踊っているだけじゃないですか。『笑われている』だけなんですよ」と批判。「起用する側にも責任はあるんです。視聴率が取れたとしても、それは一瞬のものです。だからいらなくなったらポイッと捨てられる。使い捨てのライターと同じですよ」「テレビに出れば、子どもも観るじゃないですか。子どもに『おもしろい』と思われたら大変な間違いですよ。親も一緒になって笑っているようじゃ、しょうがない。昔の親だったら『観ちゃいけない!』ってしかっていたはずです」と指摘している。

 ガミガミとうるさく言われているときはむかつくが、後になって「それもそうだ。次はこうしよう」と気付く注意をしてくれる頑固ジジイほど、ありがたい存在はない。

2017年06月25日

こんかつか、とんかつか

 行政の婚活支援事業が盛んだ。
 三条市も婚活イベント「さんじょう恋婚」を行っている。
 三条市はこれまで行政が婚活にかかわることに消極的だった。「基本的に結婚は個人の活動。行政が過度に立ち入るべきことではない」という立場だったが、一昨年に態度を変更。人口減少社会を迎えて少子化への対応に迫られ、未婚化や晩婚化対策として婚活事業に取り組むことにした。
 この事業で一昨年は21組、昨年は23組のカップルが成立。交際を始めており、少なくとも一組が結婚したという。


 ことしも4回のコースを設定。7月にランチパーティー、9月に中身は内緒のシークレットパーティー、11月に野外パーティー、来年1月に結婚式場でのパーティーを開く。
 男性向けには事前に身だしなみやコーディネート、女性との会話で注意することなどを学ぶ講座も開く。
 対象は25歳から45歳までの未婚の男女で、4回とも参加できる人。男性は三条市内在住に限るが、女性は市外からの参加も受け付ける。男女とも定員20人で、参加費は4回分の飲食費として男性1万3000円、女性8000円。
 いつもは「男女共同参画社会の実現」をうたっている三条市だが、こういうときは「女性が参加しやすいように」と男女格差を認めている。会場費など49万7000円は三条市が負担する。


 三条市に限らず、全国の都道府県や市町村が婚活支援を始めている。
 厚労省が2年前に行った「人口減少社会に関する意識調査」では、自治体の婚活支援について「積極的に取り組むべき」が19・6%、「ある程度は取り組むべき」が40・0%で、合わせて59・6%が公的な婚活支援を認めている。
 「最低限必要な範囲にとどめるべき」は23・6%、「公的な支援に取り組む必要はない」は16・8%だった。
 同じ調査で「若者世代が出産・子育てにより前向きになるために必要なこと、大事だと思うこと」を問うたところ、圧倒的に多かったのが「安定した雇用と収入」で72・1%。次が「安心できる出産・小児医療の体制確保」の44・2%、「安心して保育サービスが利用できること」の44・1%だった。
 婚活支援もいいが、より求められているのは安定した雇用と収入を確保することだ。

2017年06月20日

昔は「壁に耳あり障子に目あり」、いまは「町中にカメラあり」

 先日、東名高速道路で中央分離帯を飛び越えた普通車が宙を舞うようにして観光バスと正面衝突する衝撃的な映像がニュースで流れた。睡眠薬を飲んでもうろうとなったお笑い芸人が運転する普通車が「止まれ!」という警察官の制止を無視してゆっくり前に進む映像も流れた。
 昔なら目にすることのなかった場面を、現代社会は簡単に見ることができる。
 自動車登載カメラもあれば、コンビニなどの防犯カメラもある。東京の新宿歌舞伎町など巨大な繁華街には、街角のあちこちに防犯カメラが設置されているという。
 撮った映像は車載カメラのものはバス会社やタクシー会社、防犯カメラの映像は自治会やコンビニ、警備会社など、それぞれカメラの設置者が記録している。インターネット経由の画像はハッキングされているかもしれない。
 最近の映画やテレビドラマでは、捜査官がこうした映像を分析して容疑者を割り出すシーンが増えている。電話の通話記録などから容疑者を探し当てるシーンもある。


 共謀罪が成立した。犯罪を実行していなくても、準備をしたと判断されれば、その段階で処罰の対象となることになった。準備をしているかどうかは調べてみなければならない。共謀罪の捜査を理由に、警察はさまざまな人たちを調べることが可能になった。
 犯罪捜査のための通信傍受を認める通信傍受法はすでに施行されている。
 これと共謀罪を組み合わせれば、警察は各種カメラの映像や電話、メール、SNSなどの記録をチェックすることもできる。


 街角の防犯カメラをいかがわしい店やラブホテルなどの出入り口に向けておけば、その映像を分析してだれがいつ、どんな店に出入りし、だれと浮気しているのかといった情報をためこんでおくこともできる。
 元官僚が内閣に刃向いそうだとわかれば、元官僚が「出会い系バーに出入りしている」といった情報をて政権寄りの新聞にリークし、元官僚の信用を落とす工作に使うこともできる。
 記者会見で官房長官を問い詰め、政府が「ない」と言い張ってきた内部文書の再調査を行わせ、その存在を認めさせた敏腕女性記者の身辺を探り、脅しに使う材料を集めることだってやれないことはない。
 そんなことになったら、まさに監視社会の到来だ。
 昔は「壁に耳あり障子に目あり」だった。
 いまは「町中いたるところにカメラあり」だ。その情報を権力が悪用したら、怖いことになる。

2017年06月12日

人手不足はこの先、ますます深刻に

 加計学園問題で有名になった国家戦略特区。そのなかには特定の地域だけ外国人を雇用しやすくしたり、外国人が働きやすい環境を作るための規制緩和もある。家事支援サービス提供企業の外国人雇用を促進する外国人家事支援人材特区、創業を目指す外国人の在留資格要件を緩和する創業外国人材特区などで、東京都や神奈川県、福岡市などが指定を受けている。


 厚労省によると昨年10月末時点で国内17万余の事業所で108万3700人の外国人が働いている。平成19年に届け出が義務化されて以来、もっとも多い人数で、外国人労働者が初めて100万人を超えた。
 国籍別では中国が32%、ベトナム16%、フィリピン12%、ブラジル10%、ネパール5%。雇用事業所の業種は製造業が31%、卸・小売業が13%、宿泊業・飲食サービス業が12%、情報通信業と建設業が各4%となっている。


 三条公共職業安定所管内の有効求人倍率はことし2月末で1・99倍、3月末で1・87倍と全国平均の1・45倍をはるかに上回っている。
 「需要はあるのに人手が足りずに受注できない」と嘆く経営者もいる。少子化によって、この先ますます若者は減っていく。このままでは人手不足倒産も起きかねない。
 外国人労働者の雇用を真剣に考える時期に来ているのではないだろうか。かつて三条商工会議所・三条市国際交流協会が中国人研修生を受け入れた。いまは三条経営労務センターがフィリピン人研修生を受け入れている。平成7年にスタートした同センターの研修事業は近年、受け入れ希望が増えており、ことしは組合員事業所の20社が130人を受け入れている。


 この制度の研修期間は3年間。仕事や日本での生活に慣れたころに帰国しなければならない。制度改正によって11月からは条件付きで最長5年まで延長できるようになるが、事業の目的はあくまで技能研修であって、労働者の雇用ではない。
 外国人の雇用とそれに伴う様々な問題解決に向けた研究に行政や業界、自治会やボランティア団体なども含めた地域全体で取り組むべきではないだろうか。

2017年06月02日

iPhone10年

 アップル社がiPhoneを発売して10年が過ぎた。電話だけでなく、電子メールやインターネット、カメラ、音楽、ゲームなど、さまざまな機能を詰め込んだ携帯端末の登場によって世の中は大きく変わった。十年一昔というが、いまや電車内で本や雑誌を読んでいる人は少数派となった。代わってスマートフォンをのぞきこみ、LINEなどSNSのやり取りをしたり、動画に見入ったり、ゲームに熱中している人が増えた。イヤホンで音楽に聴き入っている人も多い。改札口の出入りも、コンビニなどでの買い物も、決済はスマホで済ませる人が増えている。

 スマホのような小さくて精密な製品づくりは日本のお家芸だったはずだが、実際は米国のアップルと韓国のサムスン電子が先行。それをファーウェイやオッポなどの中国勢が追い上げている。ソニーや富士通などの日本勢は劣勢だ。ハード面の競争以上に激しいのがソフトの開発競争で、世界中の開発者がゲームや音楽などのエンターテイメント系、スケジュール管理などのビジネス系、加工や編集などの画像処理系、ニュースなどの情報系といったアプリ開発にしのぎを削っている。

 スマホを使った新しいビジネスモデルも登場している。例えばタクシー。位置情報などスマホのさまざまな機能を組み合わせて使う「配車アプリ」というものが登場した。これを使うと、近くにいるタクシーを早く呼ぶことができるうえ、何分後に到着するのか、目的地までいくらかかるのかなどが乗車前に分かるようになる。決済もスマホで行うので運転手と現金のやり取りをせず、すぐに降りることができるという。
 iPhone発売からわずか10年でここまで変わってしまった。この先の変化はもっと早いのかもしれない。
 近いうちに医者や美容院、居酒屋などの予約も、ピザやラーメンなどの出前も、食料品や日用雑貨の宅配サービスも、スマホで行うのが当たり前の世の中になるのだろう。
 県央の産業界にはどんな影響があるのだろう。