買い物難民にならないために
「もちはもち屋」という。
もちはもち屋がついたものが一番うまい。物事にはそれぞれ専門家がいる。いくら上手な素人でも、専門家にはかなわないといった意味だ。
もち屋は江戸時代に生まれたという。江戸には下駄屋、扇子屋、屛風屋、手ぬぐい屋、筆屋、煙草道具屋など細分化されたさまざまな店があった。戦後、三条市の商店街にも八百屋、魚屋、肉屋、総菜屋、酒屋、菓子屋、雑貨屋、靴屋、雨具屋、洋服屋、呉服屋、本屋、文房具屋などが軒を並べていた。農村部でも、商店街を形成するほど多くはなくても酒屋や肉屋、煙草屋などの店があった。店員はそれぞれの商品の専門家だった。
三条中央商店街にはまるよし本店、東三条商店街には長崎屋東三条店という総合スーパーもあった。どちらも地元商店街との共存共栄を目指していたが、商店街から離れた場所に出店した郊外型スーパーやディスカウントストアとの競争に敗れて閉店した。郊外型スーパー同士の競争も年々激しくなり、ドラッグストアなど新業態も参入。近年はインターネット販売も伸びている。それらのあおりを受けて商店街の個店は大幅に減った。
世界最大の小売業者、米国のウォルマートが地方都市に進出するとき、同社の幹部社員たちは地元の商店街を回って賭けをするという。いつまでに何軒が潰れるかを予測するのだ。
同社は24時間営業のスーパーセンターを3500店舗、他の業態も含めると5300店舗を世界展開している。スーパーセンターは品ぞろえも豊富で、格段に安い。この店が近くにできた町では、代々続いてきた個店がごっそりと客をとられて潰れてしまう。
スーパーセンターがそこで営業を続けるなら、そうした競争による淘汰もやむを得ないのかもしれないが、同社はその店の利益が思ったほど伸びず、今後の成長も期待できないと判断すればあっさりと撤退する。残されるのは毎日の生活必需品を買うにも苦労する買い物難民だけだ。
三条でも小売業界の激しい競争が続いている。買い物難民にならないためには、多少の値段の差には目をつぶり、「この店がなくなったら困る」と思う店で買い続けることが大切なのではないだろうか。