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2013年10月30日

21世紀型の子育て

 私たちは人類史上、もっとも変化の激しい時代を生きているのだそうだ。
 1200年前の平安時代と、200年前の江戸時代の生活はそれほど変わっていないが、江戸時代と現代ではまったく違う。
 社会の変化が遅い時代は先人の知識や経験が役立つので経験豊富な年長者は尊敬される。
 親は自分が教わってきたことを子に教え、子は親の指導に従う。
 現代のような変化が早い時代は前の世代の経験が通用しなくなる。発明や技術革新などに伴って仕事のやり方も変われば、生活のパターンも知恵も変わってくる。
 親や祖父母が自分の知識を子どもに伝えようとしても「古い!」と言われてしまう。子どもから見ればパソコンやスマートフォンなどのことを質問してもチンプンカンプンなおとなでは尊敬しにくいというわけだ。
 だから、いまほど子育てが難しい時代はないのだと東大名誉教授で白梅学園大学学長の汐見稔幸氏が説いている。

 汐見氏はどれみ福祉会が29日に三条市中央公民館で開いた公開子育て講座で講演した。
 人間の子どもは大昔から「仕事の手伝いをする」「子ども同士で存分に遊ぶ」「家族団らんで疲れをいやす」という三つの行為を繰り返すことによって育ってきたのだという。
 それが近年、3つともなくなりつつある。
 仕事や家事の手伝いをすることもなければ、異年齢の子ども集団を作って屋外で創意工夫して遊び回ることもなくなった。
 その結果、親は子どもを言葉だけでしつけようとして過干渉、過評価となり、子どもはお手伝いや遊びで得られた達成感や役立ち感を得にくくなっている。
 親子ともにストレスがたまりやすい生活を送っているのだという。では、現代はどういう子育てをすべきなのか。
 汐見氏は「おとなの好みを押し付けるのではなく、子どもがやりたいことを自分で見つけ、自分で決め、自分でやる環境をできるだけ作ってやること、子どもの自己決定を保障してやることで、子どもの自尊感情や個性が育つ。ほめるのではなく認める、させるのではなく見守る育児が二十一世紀型だ」と説いた。
 子どもが小さいころに聴いておけばよかった。

2013年10月26日

学力テスト

 文科省が全国学力テストの結果公表を検討している。
 小学6年生と中学3年生を対象に毎年行っているテストで、現在は結果を公表するかどうかを学校長の判断に委ねている。
 自治体や教育委員会が各校の結果を公表することは「学校の序列化や、過度の競争につながるおそれがある」として認めていない。
 昭和30年代の苦い経験を踏まえてのことだ。このときは各校や地域の成績が報じられた結果、成績の悪い学区から良い学区への越境入学が相次ぎ、テスト当日に成績の悪い子どもを休ませるといった不正まで起きたため、開始から11年で調査を打ち切ることになった。

 結果を公表することに賛否両論がある。
 文科省がことし7月に行った調査では、都道府県知事は賛成が44%で反対の24%を大きく上回った。
 都道府県教委は賛成40%、反対43%、保護者は賛成45%、反対52%で、わずかながら賛成より反対が多かった。
 市町村長は賛成34%、反対62%、市町村教委は賛成17%、反対79%、学校は賛成20%、反対78%と圧倒的に反対が多かった。

 佐賀県武雄市では「学校には保護者への説明責任がある」との理由ですべての小中学校が結果を公表している。
 三条市で結果を公表している学校はない。
 三条市教委は「小学6年生は全国平均並みか全国をやや上回っているが、中学3年生は全国をやや下回っている」といった全体の傾向しか明らかにしていない。
 公表反対派は子どもへの影響や学校の序列化を懸念し、賛成派は学力向上に向けた各校の取り組み強化を期待している。文科省は来月にも結論を出すことにしている。

 結果を公表しようがしまいが、各校各学年の学力をかなり細かく把握している人たちがいる。
 学習塾だ。
 どの中学校のどの学年は算数の成績は良いが国語は平均程度、英語は平均以下といった情報を持っている。
 各校から通ってくる子どもたちの実力を分析し、どの学年のどの教科に問題があるかをつかんで対策を指導しているのだ。
 そんなデータを公にされたら、教え方が下手な教師は保護者に糾弾されかねない。
 学力テストの結果公表を教委や学校が嫌がるわけだ。

2013年10月16日

とっく 特区 得?

 また特区が始まる。
 小泉純一郎政権が始めたのは「構造改革特区」だった。規制緩和の促進を目的に、小学校から高校まで国語以外はすべて英語で授業を行う「外国語教育特区」や、農家が自家産米で仕込んだどぶろくを製造、販売できる「どぶろく特区」など、政府はこれまでに1189件の特区を認めてきた。
 安倍晋三政権はこれだけでは足らず、新たに「国家戦略特区」を始めることにしている。世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくることが目的で、国家戦略特区を突破口として大胆な規制改革などを実行するという。15日召集の臨時国会に関連法案を提出し、成立後は新たに任命する国家戦略特区担当相をはじめ全閣僚が参加する推進本部を設置し、首相が本部長を務める。

 特区には批判もある。「本当に改革を進めるなら規制緩和を特別な区域だけに限定せず、全国で進めるべきだ。特区から始めて効果があれば全国にというのは官僚が逃げるときの常套句で、どうでもいいようなものは別として本格的な改革を特区から全国に広げた例はない。そもそも地方分権を進め、地方政府に立法権や徴税権を移譲するなら特区など必要ない。特区は中央集権を守るための地方の不満のガス抜き装置だ」というものだ。

 だからといって特区を無視していると都市間競争に置いて行かれる。
 政府には国家戦略特区に関し、すでに地方自治体や民間企業から62件の提案が届いている。
 そのなかには新潟県と新潟市、上越市、聖篭町による「エネルギー戦略特区」がある。これは日本海横断ガスパイプラインで新潟県とロシア・ウラジオストックを結び、さらに新潟県から関東へのパイプランも整備して天然ガスを大消費地に供給するといったものだ。
 新潟市はほかにも新潟市を食料輸出入基地、食の流通拠点とする「ニューフードバレー特区」などを提案している。商売しやすいまちづくりは県央の生命線でもある。注視していかなくてはならない。

2013年10月06日

子ども議会

 三条市は5日、市役所議長で子ども議会を開いた。
 平成12年以来、13年ぶりの開催で、理事者席には市長や市の幹部が並び、議長席には熊倉均市議会議長が座って進行役を務めた。
 子ども議員は自ら参加を希望した小学生5人、中学生10人の計15人。答弁を含めて1人7分間の持ち時間で一般質問を行った。

 もっとも多かった意見が「学校給食に月1回でもいいからパンやめんを復活させてほしい」「米粉パンもだめなのか」。5人が通告し、実際に4人が取り上げた。
 通告を受けて国定勇人市長も気持ちが揺れたようだ。子どもたちの要望を取り入れられないかどうか、庁内で再検討するよう担当者に支持した。

 再検討した結論は従来通りの完全米飯。
 市長は「給食も国語や算数と同じ教育の一環であり、遊びの場ではない。算数が嫌いだから算数の授業はなしというわけにはいかないのと同じ。そもそも1日3食として1年間の食事回数のうち、学校給食はわずか17%でしかない。日本人の体には米飯が一番いい。学校外での食事がいつも米飯というなら考えるが、学校外でパンやめん類を食べることが多くなっているなかで、学校給食にまでパンを入れるべきではない」「コメは粒で食べるから意味がある。米粉にすると栄養の吸収が早くなり過ぎてしまう」と答えた。

 児童数の減少が続く三条小の将来を問う中学生もいた。
 市長は「それは(あなたたち)みんなが考えること。僕にできるのは残すか、閉じるかのどちらかしかない。おとなはいろいろ考えるが、この二つ以外の選択肢はない。三条小のことだけ考え、学区外から子どもを回すなどということはできない。君たちは違う。柔らかい頭で考えてほしい。一般論で言えば僕の母校は統合されてなくなったが、いまでも母校に誇りを持っている。学校は形ではない。どんな形が望ましか、自分たちの結論を出し、僕たちにぶつけてほしい」。
 いつもの市議会答弁よりはるかに率直に子どもたちに語り掛け、本音を垣間見せていた。