きょうはどうされましたか?
病院で処方せんをもらい、それを持って調剤薬局に行くと「きょうはどうされましたか?」と聞かれる。
さっき医師に説明したばかりだ。なんで同じことをまた説明しなければならないのか。
こっちは具合が悪いから病院に来ている。熱があり、のどや関節が痛み、話すことも億劫なのだ。早く帰って寝たいのだ。
病院では受け付けでカルテをもらうのに5分、診察で1時間20分、会計で15分待たされた。調剤薬局でも20分待った。
合計2時間。
燕三条駅から新幹線に乗っていれば、いまごろ東京駅に着いている。
さっさと薬を受け取って帰りたいのに、解熱剤や鎮痛剤、せき止め、鼻水止めなどの薬を机の上に並べられて「どうされましたか?」。
自分が並べた薬を見ればこっちの症状くらい分かるでしょと言いたいのをぐっと我慢して「風邪です」。
相手は分かっていますよと言わんばかりにうなずき、薬の説明を始める。
分かっているなら聞くなよ、こっちは辛いんだから。
薬剤師もおしゃべりが好きで説明しているわけではないらしい。
薬剤師は「調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供しなければならない」と薬剤師法に定められており、これに違反すると1年以下の懲役か50万円以下の罰金に処せられる。
薬歴というカルテも書かなくてはならないため、やむなく症状を聞くのだという。
厚労省には病気で辛いときに「どうしました?」と聞かれてイライラした経験のある役人はいないのだろうか。
患者は病気の話が大好きな老人ばかりではない。
思春期の若者もいれば、年頃の女性もいる。
風邪程度ならいいが、便秘や痔(じ)に苦しんでいる若い女性は「どうしました?」と聞かれて、どう答えればいいのだろう。
病院と違って診察室があるわけでもない。
他の患者に筒抜けのオープンカウンターでは言いにくい病名はたくさんある。
日本薬剤師会は「個人情報保護方針」を定め、個人情報の保護に努めると宣言している。
自分が行く調剤薬局がたまたま配慮していないだけで、他の薬局はプライバシーに配慮しているのだろうか。