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2012年07月02日

患者中心の医療?

 仲のいい夫婦だった。
 よく2人で旅行に出掛けていた。
 昨年1月、妻(76)が脳内出血で倒れた。
 三条市内の病院で受けた手術が成功、目立った後遺症もなく3か月後に退院できた。

 ホッとしたのもつかの間、ことし5月20日夕方、妻は自宅で嘔吐した。
 県央応急診療所で点滴を受け、翌21日朝には頭の手術を受けたところとは別の、自宅近くの公立病院に行った。
 血液検査と腹部のレントゲン撮影を行った医師の診断は「なんともない。健康そのもの」だった。
 夫には妻が衰弱しているように見える。
 夫は妻の病歴も説明し、「今晩だけでも病院に泊めてもらえないか」と頼んだ。
 医師は「あなた個人の考えで病院を使っては困る」と認めなかった。
 妻は点滴を受けた後、午後2時半すぎに帰された。

 夫と娘に支えられて自宅に戻った妻は、車を降りたところで黒っぽい液体を大量に吐き、意識を失った。
 夫はあわててさっきまでいた病院に電話をかけた。
 事情を説明しても要領を得ない。救急車を頼んで病院に戻った。
 その間に意識が戻った妻を見た医師は「また来ましたか。救急車を勝手に使っては困りますね」。
 嫌味を言われながら入院し、点滴と酸素吸入を受けた。

 翌22日になっても妻の状態は良くならない。血圧も脈拍も不安定で、夕方には声をかけても返事が返ってこなくなった。
 尿は前日から出ていない。
 夜になってベテラン看護師に「今晩が山かもしれません。ご家族を呼ばれた方がいいですよ」と言われて仰天した。
 夫はそれほど悪いとは思っていなかった。医師からそうした説明もなかった。
 「先生を呼んでくれ」と何度も頼んだ。
 医師が病室に来たのは深夜になってからだ。
 医師は相変わらず「大丈夫です」という。
 「危険度は10%」とも言った。90%助かるということかと確認すると「そうです」と言った。
 その5時間後、妻は死んだ。医師は死因を「重症脱水による心原性ショック」とした。

「妻は病院に殺されたようなものです」と夫は悔しがっている。
 病院側にはきちんとした文書での説明を求めてもいる。
 医療が適切だったのかどうかは我々素人には分からない。
 ただ、この病院が基本方針に掲げている「患者様の権利を尊重し、患者様中心の医療を実践します」が守られていないことだけは分かる。