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2012年01月26日

 けっこう軽だらけ 

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に日本が参加することについて、米通商代表部(USTR)が意見を公募した。いわゆるパブリックコメントだ。
 昨年12月7日から今月13日までの1か月余に寄せられた意見は100件以上。米国内の穀物や食肉などの業界団体は「日本は除外品目なしで参加すべき」と包括的な農業市場の開放を求め、保険業界は日本郵政のかんぽ生命保険について「国有保険が民間競争をゆがめている」などと主張したようだ。
 日本政府との本格的な事前協議開始にあたり、米国内の意見を確認するために公募したものだが、日本のJA全中までが「米政府は日本の交渉参加を認めるべきではない」といった意見を提出したという。国内の対抗勢力と戦うために米国を利用する、いわゆる「ガイアツ」頼みの手法を、日本は官僚だけでなく農協まで使うようになってしまった。
 米自動車業界も日本のTPP参加に反対する意見を提出した。日本の農協と、米国の自動車業界の意見が期せずして一致したわけだ。米自動車業界は日本の参加を認める前に、日本が米国車の輸入拡大に向けて数量を示す複数年枠を設けるべきと主張しているほか、日本独自の軽自動車規格についても「日本メーカーだけに恩恵がある。市場の30%を占めており、もはや合理的な政策ではない」と廃止を求めている。
 言いたいことを言い合うのが交渉だとしても、米自動車業界の言い分はあまりに身勝手だ。日本の道路事情には軽自動車が合っている。エコの観点からも小さくて軽い軽自動車の方が、ガソリンを大量消費するアメ車より優れている。そもそも外国メーカーであっても、サイズと排気量が規格内であれば軽自動車扱いになる。事実、ドイツ車「スマート」の排気量660㏄以下のモデルは軽自動車登録できた。
普通車の税や保険を軽自動車並みに引き下げるというならまだしも、軽自動車の優遇措置をなくして普通車並みに引き上げるなど、とんでもない。米自動車業界はそのうち左側通行も非関税障壁だからイギリス連邦や日本は世界で多数派となっている右側通行に改めろなどと言い出すのではないだろうか。

2012年01月13日

キソ的自治体のキソ的な仕事とキソ的な民主主義

 スポーツも勉強も仕事も、基本が大切であることは言うまでもない。地方自治も一緒。ごみ処理などの基本をしっかりこなせなければまちづくりだ、市民参加だなどと格好をつけても始まらない。
人口11万人で三条市とほぼ同規模の東京都小金井市が、基本をおろそかにすると大変なことになると教えてくれている。同市は以前、調布市、府中市と3市共同でごみ焼却処理場を運営していた。昭和60年にはこの施設の現地建て替え計画も作ったが、近所の小金井市民たちが反対、焼却場の移転を強く求めた。これに小金井市議会が同調し、現地建て替え計画を潰した。怒った調布、府中両市は小金井市と袂を分かち、それぞれ別の組合に加入した。
 残された小金井市は国分寺市を新たなパートナーに選び、共同焼却場の建設地を探したが、迷惑施設だけにどこも住民合意を得られない。適地を見つけられないまま、平成19年3月には調布、府中両市と運営してきた焼却場が寿命を迎えて廃止となった。
 行き場を失った小金井市のごみの一部は国分寺市が引き受けた。条件は両市の共同焼却場建設予定地を小金井市が用意することだった。残りのごみは他市などに頼んだ。
 昨年4月の小金井市長選では、この他市へのごみ処理委託料を「無駄遣い」と批判する新人が現職を破って当選した。ごみ処理を引き受けてきた他市は「人道的見地から引き受けてやってきたのに、無駄遣いとはふざけている」と怒り、ごみの受け入れを止めることにした。新人市長はおわび行脚に回ったが、相手にされなかった。同市はごみ処理ができなくなり、市長は責任を取って辞職した。
 12月の出直し市長選では元市長が復活当選。とりあえず昔の人脈を頼って他市に頭を下げて回り、しばらくの間、ごみを受け入れてもらうことになった。市内にごみがあふれる事態こそ避けられたが、国分寺市との約束も含めて根本的な解決にはまだ遠い。
 大阪では強気の行政が一部から「独裁」と批判を浴びた。東京では住民の反対の声を尊重しすぎる市政がごみ焼却場を失い、新施設建設地も確保できず、結果的に住民や周辺自治体に多大な迷惑をかけている。ごみよりもまず住民エゴと、それに流される首長や議員の無責任さを焼却しなければならない。

2012年01月07日

ドジョウのわな

 ネギやゴボウと一緒に割り下で煮て卵で閉じれば柳川鍋、生きたまま豆腐と一緒に鍋に入れて徐々に加熱すれば地獄鍋となるのがドジョウだ。
 唐揚げにしてもよし、蒲焼きもよし。ドジョウは江戸の郷土料理のひとつだ。カルシウムはうなぎの九倍で、良質なたんぱく質を含んでいながらカロリーはうなぎの3分の1。ビタミンDやコラーゲン、鉄分も含んでいる。
 表面のネバネバしたぬめりには血液をきれいにして細胞の働きを活発にするコンドロイチン硫酸が含まれている。中国の薬膳書には「体を温め、生気を増し、酒をさまし、痔を治し、強精あり」と書かれているという。
 江戸っ子と同じように「どぜう」が大好きなのが佐渡のトキ。ところが過ぎたるは及ばざるが如しで、ドジョウが大好物のメスがこのほど、プール内で反り返るようにして転倒した。佐渡トキ保護センターの職員は栄養失調と判断、ビタミン剤を注射したところ、回復したという。ドジョウにはビタミンB1を壊す成分も含まれており、食べ過ぎると栄養失調になってしまうのだという。同センターではドジョウのほかに馬肉やニンジン、ビタミン剤を加えた人工飼料をトキたちに与えているが、倒れたメスはドジョウばかり食べていた。トキのビタミン不足は今回だけではない。昨年1月には放鳥に向けて訓練中だった3羽、3月にも1羽にビタミンBの欠乏と思われる症状が確認され、訓練を中止した。偏食は人間ばかりかと思っていたが、トキにもあった。
 「人間が自然環境を壊したために日本のトキは絶滅した」と言われてきた。仮に自然環境が昔に戻ったとしても、自分の体にどんな栄養が必要なのかも分からず、ドジョウばかり食べてひっくり返っているような鳥がこの先、自然界で生き残っていけるのだろうか。
 ドジョウは栄養豊富であっても、そればかり食べているとビタミンB1不足になる。ドジョウ総理は財政再建派であっても、そればかりに目を向けていると日本経済が活力不足に陥る・・・ということにならないだろうか。