一体校の賛成討論
三条市長は小中一貫教育のモデル校となる第一中学校区一体校建設に向けた関連議案を9月定例会に提出しました。私は市議会内会派「新しい風」を代表して大綱質疑を行ったほか、討論では賛成の立場でその理由等を述べました。壇上ではそれほど気にならなかったのですが、同僚議員によると結構、やじられていたそうです。採決では賛成14票、反対11票で可決されました。以下、私の討論内容です。ちょっと長いのですが、私たちの考えを理解していただきたく、全文を載せます。
「新しい風」を代表し、議第4号三条市立学校設置条例の一部改正についてと議第8号平成23年度一般会計補正予算に賛成の立場で、また認定第一号平成22年度決算の認定については認定すべきとの立場で討論を行います。
最初に学校設置条例の一部改正と、一般会計補正予算ですが、いずれも第一中学校区一体校建設に関連する議案です。そこで小中一貫教育や第一中学校区一体校に対する私たちの考えを述べます。
1 小中一貫教育はいじめや不登校、学力低下などの、いわゆる中1ギャップを解消する手段のひとつとして導入を検討してきた制度です。現実に三条市の中学校においては、いじめや不登校が依然として存在しています。学力も全国標準学力テストで小学6年生は全国平均を上回っているのに、中学2、3年生になると全国平均を下回る結果となっています。なんらかの対策を早急に講ずる必要があります。
2 現状の義務教育は、小学校は小学校、中学校は中学校という区別のなかで、その隔たりが大きなものとなっています。小学校の先生は中学校で、中学校の先生は小学校でそれぞれどのような授業が行われ、どんな学校生活が営まれているのかよく知らないという実情も垣間見えます。
私たちは小中が連携を強め、先生方が子どもたちの環境や性格、特性などの情報を共有することは重要と考えます。また中学校の先生や先輩の中学生たちが、小学生に「もう少し先にはこんな授業や学校生活が待っているんだよ」と早いうちから知らせておくことは、中1ギャップを生じさせる要因のひとつを取り除くことになると思います。
中学校の授業や学校生活になかなか慣れることができず、ついていくことに四苦八苦している生徒もいます。そうした生徒をその子の特性を良く知る小学校の先生が励ましたり、アドバイスしてやることで、自分のペースをつかむことができるといった効果も期待できます。また中学生が後輩たちを指導することによって、自分自身の学習理解を深める効果も期待できます。これらが小中一貫教育導入の主たる目的と理解しています。
3 三条市ではこうした小中一貫教育について教職員や保護者、地域の代表などによる検討委員会を設け、3年間にわたって議論してきました。各中学校区にも推進協議会を設置して議論を深めてきました。
議会においても21年度は小中一貫教育推進事業費を、22年度は第一中学校区一体校建設事業費を含む小中一体校費を、23年度も小中一貫教育推進事業費を含む予算を可決してきました。民主主義のルールにのっとり、きちんと手順は踏んできています。
4 反対運動があるのだから事業を先送りすべきとの意見もありましたが、合併特例債を使える期限は平成26年度までです。それ以降になると三条市の負担が31億7700万円も増えます。災害からの復興、構造的は景気低迷からの脱却などに向け、市民の大切な財源をより一層、有効に使わなければならない時期にあるのに、31億円もの負担を増やす道を選ぶべきとは到底、思えません。
5 何より四日町小学校や条南小学校は耐震診断の結果、耐震強度が不足している危険校舎であることが分かっています。いつ大きな地震が来るやもしれないのに、何年もこのまま放置しておくことは許されません。早く結論を出し、子どもたちに安全な学び舎を提供するのはおとなの責務です。
また四日町小や条南小を現地改築せよといった意見もあったようですが、両校はともに敷地が狭く、周辺の状況からして拡張も困難であります。現地改築すれば現在、在校している子どもたちは数年間もグラウンドがないといった劣悪な教育環境のなかで学校生活を送ることを強いられます。そうしたことはとても認められませんし、保護者も子どもたちも納得しません。
6 先送りしろと主張される方々には、たかが1,2年という感覚があるのかもしれません。実際に基本設計の見直しによって開校時期は1年先送りせざるを得なくなりましたが、これによって現在の第一中学校の1年生たちは、おとなたちが早く結論を出していれば入れるはずだった新校舎に入れないまま、卒業することになってしまいました。
私自身、大崎小学校6年生のときに現在の校舎ができ、7か月だけでしたが、新校舎を体験できました。いまでも非常に思い出深い経験となっていますが、一中の1年生たちは可愛そうに、そうした経験をつむことができなくなってしまいました。私たちは恨まれてもやむを得ないことをしてしまったと思っています。もう先送りはできません。
ちなみに大崎小学校は現在の校舎ができる以前は大崎中学校と同じ敷地内にありました。私自身、それを経験しています。中学生と一緒に運動会を行った思い出もあります。小学校と中学校が同じ敷地内に建つ環境で教育を受けた経験を持つ者として、一体校の弊害は感じません。
7 大規模校では不安との声もありましたが、教育委員会によると第一中学校区の児童生徒数はことし5月1日現在で1500人、一体校が開校する予定の26年度、つまり2年後には96人減って1404人になります。小学生は888人、中学生は516人です。クラス数は小学校が各学年4から5クラス、中学校は5クラスです。4、5クラスというのはかつての一ノ木戸小より少なく、むしろ多くの同学年生を持てる子どもたちにとっては、さまざまな友情を生み、広げられるチャンスを得ることになります。したがって私たちは規模が大きすぎるから一体校にすべきではないとの意見には同意できません。
8 国定市長は昨年10月の三条市長選で小中一貫教育推進、第一中学校区一体校推進を訴え、それに反対する候補を破って再選されました。一体校建設は選挙公約であり、仮にここで建設を断念すれば、公約違反となります。国定市長を信任した37035人の期待を裏切ってはなりません。
9 第一中学校区一体校の基本設計は、当初は小中学生がひとつ屋根の下で学ぶ一棟型でした。しかし、体の大きな中学生が走り回る廊下を小学低学年生が通るのは心配だといった意見もあったことから、実施設計では小学校棟と中学校棟を分離し、先生方が使う教務室だけをワンフロアとする形に変えました。これらの変更によって建設費は9億円余、増えましたが、保護者や地域の声を聞いた結果であり、無駄ではないと思います。
理事者側は住民の意見を聞く耳を持っていないといった批判をされる議員もおられますが、子どもたちのことを最優先に考えた前向きな意見に関しては、検討委員会でも推進協議会でも取り入れてきたのではないでしょうか。新しい取り組みを始めるに際しての課題を検討し、それを解決する方法をともに考え、議論することは積極的に行うべきです。そうではなく、ただただ計画を白紙に戻せ、時計の針を3年前に戻せといった意見では何も前に進みません。被害をこうむるのは子どもたちであり、そうした時間の無駄遣いはすべきではありません。
10 我々 新しい風の4人は昨年から何度もこの問題に関して協議を重ねてきました。教育委員会の担当者を呼んで意見交換を行ったことも何度かあります。途中、統合する小学校を3つではなく、2つにしたらどうなるかといったシュミレーションを行ったこともあります。最終的には3つを統合し、一体型とすることがよりベターという結論に達しました。
反対の議員各位から「中1ギャップはもっと別の方法で解消すべきだ。それにはこういう方法がある」という意見が示されたならば、真摯に検討すべきと思いますが、この計画はだめだというだけで三条市の教育環境が良くなるとは思えません。
なお第二中学校区でも一ノ木戸小学校の移転改築によって、同じ敷地内に渡り廊下などで結ばれた小学校棟と中学校棟が並び立つ一体校ができます。こちらの予算には多くの議員が賛成しました。第二中学校区の一体校には賛成なのに、第一中学校区のときは小中一貫教育の弊害を主張するのは矛盾しています。私たちは地域にとって何が良いのかではなく、まして先生にとってどうすれば都合が良いかなどでもなく、子どもたちにとって何がよりベターなのかを最優先に考えるべきです。私たち新しい風は、それを最優先に考えた結果、第一中学校区一体校建設に賛成します。
次に22年度決算の認定について意見を述べます。先日の決算審査特別委員会で、第一中学校区一体校費を含む決算について「住民合意がなされた」との説明を信じて22年度予算には賛成してきたが、形ばかりの合意だったので、決算には反対するといった趣旨の討論がありました。
私たちはそうした意見には同意できません。そもそも議員は住民代表であって、住民合意がなされたかどうかは理事者に聞く話ではなく、自分で判断することです。理事者には理事者の考えがあり、議会には議会の判断があります。それが二元代表制です。住民が合意したのかどうかを判断するのはまさに個々の議員の役割であり、その判断が間違っていたのだとしたら、その責任は個々の議員にあります。
基本的に予算審議で予算案に賛成した議員が、決算の際に反対するのは予算の執行が不適切だった、あるいは執行に瑕疵があったということになります。予算書通りに執行したのに、決算になったら反対ということは、予算に賛成した判断が間違いでしたと自分で認めていることになります。その間違いの責任は自分自身にあるのであって、それを理事者に転嫁するのは筋違いです。
私たちは22年度決算は予算書通り執行されており、大きな瑕疵は認められないため認定すべきと思います。
最後に申し上げます。
新しいことを取り入れること、現状を変えることには必ず抵抗があります。
現状のままが一番、楽です。できることなら楽をしたいというのが人の性です。
しかし、現実に中学校にはいじめに苦しんでいる子ども、登校できずに悩んでいる子ども、勉強についていけない子どもがいます。なんとかしなければなりません。
なんとかするために、大変であっても現状を変える勇気を持たなくてはなりません。3年間の議論を無駄にせず、子どもたちによりよい教育環境を提供する努力を重ね、新しい教育に取り組む勇気を持つべきと議員各位に呼びかけて討論といたします。