性犯罪者にGPS~地方連携で実効を
宮城県の村井嘉浩知事が、性犯罪で服役した前歴者にGPS(全地球測位システム)を携帯させ、警察が日常行動を監視できる条例の検討を始めた。対象は女性や13歳未満への強姦(ごうかん)、強制わいせつなどで有罪となり、刑務所を出所した20歳以上の県民。GPSの携帯と行動記録の定期報告を義務付け、必要に応じてDNAの提出も求める。ドメスティックバイオレンス(DV)防止法に基づき、裁判所から被害者への接近禁止命令を受けた加害者にも、GPS携帯義務付を検討する。
法務省も数年前から性犯罪前歴者にGPSを持たせることを検討してきたが、人権にかかわることだけに慎重だ。平成16年に奈良市で小学1年女児誘拐殺人事件が発生、対策が求められると、ようやく性犯罪受刑者の出所予定日や居住予定地を警察庁に提供するようになったが、GPS携帯までは踏み出せないでいる。
アメリカやスペイン、韓国などでは性犯罪者にGPS付きの腕輪や足輪の着用を義務付けている。日本でも、強姦致傷事件の裁判で被告の26歳の男が「今後は被害者に近付かない」と約束。それを証明するものとして「今後は被害者が自分の居場所を特定できるようGPS機能付きの携帯電話を持ちます」という誓約書を東京地裁に提出した例がある。裁判官は誓約書を証拠採用したうえで、懲役5年の求刑に対して懲役3年、執行猶予5年の判決を言い渡した。
法務省の判断が待ちきれなかったのか、宮城県警は性犯罪などで3度の逮捕歴がある30歳の男に対し、出所後、GPS端末を持つように説得したことがある。後日、これが明らかになると県警は「人権侵害だ」と批判を浴びた。このとき村井知事は「人権にからむナーバスな問題だが、同時に犯罪抑止も非常に重要だ。性犯罪被害者には小さな子どもや体力のない女性が圧倒的に多い。そうした被害者の人権も同時に考えていくべきだ」と県警を擁護した。
GPSの携帯義務付けは都道府県単位で決めることだろうか。仮に宮城県が条例を制定しても、前歴者が県外に出れば適用されない。前歴者を県外に追い出すための条例となると、隣接県は迷惑だ。地方主権の時代、国に委ねる必要もないが、知事会などで協議すべきことではないのだろうか。