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2010年02月16日

ドクターヘリよりも・・・

 テレビドラマ「コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命」がヒットしている。フジテレビの看板ドラマで、新潟ではNSTで月曜の午後9時から放送されている。舞台は大学付属病院の救命救急センター。ドクターヘリに乗って事故現場などに駆けつけ、瀕死の患者を助けるフライトドクター候補生を山下智久さん、新垣結衣さん、戸田恵梨香さんなどが演じている。
 山下さんたちが様々な試練に耐えて成長していく姿を描くドラマで、ドクターヘリが大活躍する。ドクターヘリは救急専用の医療機器を装備し、専門医師と看護師が乗るヘリコプター。消防などからの出動要請に応じて救急現場に向かい、救命医療を施しながら患者を救命救急センターに運ぶ。飛行速度は時速200㌔から250㌔。専門スタッフが現場で必要な措置を行い、搬送時間も短くなるため、救命率も上がる。
 このドラマの影響かどうかは分からないが、「県央は救命救急センターを設置するより先に、ドクターヘリを導入すべきなのではないか。ドクターヘリがあれば新潟市民病院や長岡日赤病院まで10分程度で行けることになる」といった意見がある。県もドクターヘリ導入には前向きで、ことし夏ごろまでに、どこの医療機関で運航するかを決めることにしている。
 ドクターヘリは万能ではない。まず飛行時間が限られる。有視界飛行が原則のため、日没後は無理。冬期は午後5時近くになると翌朝まで出動できなくなる。1・5㌔先の視界が確保できない強い雨や雪の場合も、風速15㍍以上の強風の場合も出動できない。「コードブルー」の舞台は太平洋側の都市のようだ。悪天候で出動できないという話は紹介されないが、雪国の場合、実際に出動できるのは好天の日中という条件が付く。
 ドクターヘリはどこにでも着陸できるわけではない。ドラマのように事故現場に直接、降りることは、よほど条件が整わない限りない。一般的にはまず患者を救急車に乗せ、グラウンドなどヘリが離着陸できる広い場所まで搬送、そこでヘリに移すことになる。こうしたランデブーポイントをいくつか用意しておかないと、ドクターヘリの機能を十分に発揮できないことになる。
 県がドクターヘリを導入しても、県央の場合、夜間や悪天候の日の救急医療は何ら変わらない。地元に救命救急センターがないために新潟や長岡のセンターに受け入れを頼み込み、了解が得られた場合だけ救急車で搬送することになる。県央に必要なのはヘリよりセンターだ。

2010年02月07日

諸橋漢字検定を!

 三条市庭月、諸橋轍次記念館で年3回、漢字能力検定が行われている。財団法人日本漢字能力検定協会による検定で、県央の小学生などが挑戦している。検定のランク設定は10級から準1級、1級までの12段階。入門クラスの10級は「糸」「森」など小学校一年生レベルの漢字の読み書きができれば合格。1級の問題は「城砦」の読み方や「しょうゆ」「おびただしい」の書き取りなどで、約6000字の読み書きや対義語、類義語、四字熟語などの理解度が試される。ちなみに正解は「じょうさい」「醤油」「夥しい」だ。
 平成20年度の受験者は延べ289万人、合格者は151万人。同協会では大学や短大、高校入試などで漢字検定の取得を人物評価基準としている学校も多いとしている。珠算や簿記などと比べれば歴史は浅い。同協会は昭和50年に任意団体として発足し、漢字検定を始めた。創設者の大久保昇前理事長は漢字の権威だったわけでも何でもない。松下電工を脱サラして貸しビル業を営んでいたが、そのビル内に漢字塾が入っていたことから漢字検定を思い付いたという。
 平成4年には当時の文部省認定の検定となり、組織も任意団体から財団法人に改組。各省庁の認定試験制度が廃止された後も、文科省後援の検定であり続けた。7年には「今年の漢字」の募集を始めた。1年を振り返り、その年の世相を漢字1文字で現すアイデアと、京都の清水寺で発表するスタイルがマスコミに受け、定着した。18年には携帯ゲーム機のニンテンドウDS用の漢字検定ソフトも発売、ヒットさせた。
 儲かりすぎたのだろう。同協会が京都市内の豪邸を購入していたり、前理事長親子のファミリー企業との不明朗な取り引きなどが問題となり、文科省は昨年、検定試験の後援を取り消すとともに、成績優秀者に対する文科相賞の授与も取りやめた。その直後には前理事長親子が背任の疑いで逮捕されている。
 「検定も独占はよくない。ライバルがいて切磋琢磨した方が、受験者のメリットになる。漢字検定も日本漢字能力検定協会に独占させておく必要はない。漢字と言えば三条の誇りである大漢和辞典の諸橋轍次先生。漢学の里を拠点に、新たな漢字検定を興すべきだ」と説く地元経済人がいる。面白いアイデアだ。諸橋博士の三男で三菱商事社長、会長を務めた諸橋晋六氏の力も借りて実現できないものだろうか。