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2009年12月24日

岐路に立つ奨学金制度

 不況のため学費の滞納や、経済的理由による高校、大学の中退が増えているという。親が倒産、失業したために進学をあきらめざるを得なかった子どももいる。長岡藩の米百俵ではないが、意欲と才能のある若者が、経済的理由で進学をあきらめるようなことがあってはならない。社会の損失を防ぐためにも、経済的に厳しい学生たちを社会で支えてやるべきだ。
 三条市が奨学金を設置したのは昭和30年。三条市出身の日魯漁業創立者の実弟、堤清次郎氏から寄付された100万円を原資に、その運用益を高校生の支援に充てた。60年には市民有志が三条市奨学金育成会(坪井正康会長)を結成、3年にわたり募金活動を展開した。集まった善意は1億3626万円。これによって支援対象を大学生まで広げることができた。
 現在、三条市は高校生に月額9600円を支給している。返済の必要はない。支給額は公立高校の授業料を目安としており、授業料の値上がりに伴って来年4月以降は9900円とする。
 大学・短大・専門学校生には月額3万円を貸与している。こちらは卒業後、返さなければならない。返済期間は卒業2年目からの10年間。ただし三条へのUターン促進のため、三条市内に住むか、市内の事業所で働く利用者は、返済を全額免除している。
 市は奨学金利用希望者を毎年募っている。新規枠は高校生が25人、大学生などは15人。大学などの場合、月額3万円では魅力がないのか、枠に達しない年もある。今年度の利用者は高校生が新規、継続合わせた全学年で73人、大学生などは34人。高校生への支給と、大学生などへの貸与を合わせた年間必要経費は2064万9600円。これに対して、かつて奨学金を利用した社会人の返済予定額が700万円。差し引き1365万円が不足する。
 この不足分を奨学基金の運用益で賄えれば問題はないのだが、現在の基金残高は2億6417万円。運用益は年利0・1%で264万円。これで不足額をカバーしようとしても1100万円足りない。やむなく基金を取り崩している。平成20年3月に約2億8700万円だった基金残高が、わずか1年半で2200万円も減った。
 今後も低金利が続けば基金はさらに減り続ける。大学生などへの貸与額の増額も求められている。鳩山政権は高校生のいる世帯への助成方針を示している。その機会に、三条市の奨学金のあり方も見直さなければならない。

2009年12月22日

時代遅れの公選法

 鳩山政権はホームページの更新など、インターネットを活用した選挙運動を解禁する方針を固めたという。原口一博総務相が解禁に向けた問題点の整理を総務省に指示した。小沢一郎民主党幹事長もネット利用や戸別訪問の解禁など、選挙運動の自由化に向けた公職選挙法改正が必要との考えを示している。
 他国ではネットの選挙活用は常識となっている。米国では平成12年の大統領選で600万人のアドレスリストを確保した共和党のブッシュ陣営が選挙期間中、効果的なメールを発信し続けたことで当選した。昨年の大統領選では民主党のオバマ陣営がネットでメッセージを発し続けたほか、大量の小口献金をネットで集め、活動資金を調達した。韓国でも平成15年の大統領選では盧武鉉(ノ・ムヒョン)陣営のホームページに1日40万件のアクセスと7000件の書き込みがあったという。
 日本の公選法は「文書図画の頒布」を制限している。法定のちらしやポスター以外の文書を不特定多数に配ると選挙違反になる。総務省はネット上での文書公開もこれにあたり、ブログを含めて選挙期間中の更新は認められないとしてきた。ネットを活用すれば、さほどの経費をかけずに候補者は多くの有権者に主張や公約を伝えることができる。
 有権者も各候補者の詳細な政見を自宅などで手軽に知ることができる。候補者と有権者の意見交換も可能だ。ネットの選挙活用が公選法違反だとしたら、公選法は「表現の自由」を保障した憲法違反だとの指摘もある。
 民主党は過去4回、ネット選挙解禁に向けた公選法改正案を国会に提出した。その都度、自民党はネットの普及率が低い、匿名性を利用した中傷合戦になりかねないといった理由で改正に反対、改正案を廃案にしてきた。ネットを利用できる人と、そうでない人との有権者間の情報格差が生じるのではないかとの懸念、匿名でネットを悪用した選挙妨害が行われるのではないかとの心配があることは事実だ。だからといって、利用禁止はない。自動車が発明されたが交通事故が心配だから禁止する、ストーブはあるが火事が心配だから冬でも使わせないと言っているようなものだ。
 事前運動や戸別訪問の禁止など、公選法には候補者と有権者を遠ざけるための多くの規制がある。欧米では戸別訪問が民主主義を機能させる大事な活動と位置付けられているのに、日本は候補者が有権者宅を回って政策を訴え、支持を求めることを禁止している。公選法をしっかり守ると、有権者は各候補者の詳しい主張を知らないまま、投票することになる。羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くような公選法はさっさと改正すべきだ。

2009年12月20日

よってげ邸裁判

 おかしな判決もあるものだ。三条市の農業体験学習施設「よってげ邸」内でけがをした女性が、三条市などに損害賠償を求めた裁判で、新潟地裁新発田支部は三条市などに約190万円を支払うよう命じた。施設の管理責任を問われた市に落ち度があったと認められたことになる。市の施設内でけがをしたのだから、市にも責任があるというわけだが、このケースは一般的な施設利用とは違う。想定外の使われ方をしている。
 事故は合併前の平成16年12月11日午後10時30分ごろ、当時の下田村早水地内のよってげ邸で起きた。下田出身などの男性10人が宿泊を申し込み、忘年会を開いていた。男性たちは女性コンパニオン4人を呼んで酒を飲んだ。コンパニオンが来ることを施設の管理人は知らず、コンパニオンたちは事故の時点で施設使用の申し込みもしていなければ使用料も払っていない。
 邸内には男女別の浴室がある。それぞれ2、3人で利用する程度の広さしかない。男性たちは風呂の利用も申し込んだため、管理人は男性用の浴室を掃除しておいたが、酒に酔った男性たちが自分たちで湯を張ったのは女性用。しかも男性4人、女性2人の計6人が一緒に浴室に入り込み、湯をかけあうなどして騒いだ。
 その結果、浴室の窓がサッシごと落ち、ガラスが割れて女性が左肩や腕、ももを切るなどのけがをした。女性は救急車で三条市内の病院に運ばれ、手当てを受けたが、傷跡が残った。女性は昨年6月、施設管理者である三条市と男性のうち1人を相手取り、連帯して327万円余を支払うよう求めて提訴した。
 よってげ邸は農業体験や農業者とのふれあい交流を通じ、農業に対する理解を深めてもらうための施設。大崎山のグリースポーツセンターなどと同じく学校やクラブ、地域団体などの合宿や研修といった利用を想定している。条例でも「公の秩序又は善良な風俗に反するおそれがあるとき」や「建物及び設備等を損傷するおそれがあるとき」は施設の使用を許可しないことになっている。「使用者は、許可を受けた目的以外に使用し、又はその権利を譲渡し、若しくは転貸してはならない」と目的外使用も禁じている。勝手にコンパニオンを呼び入れたり、コンパニオンと風呂で騒ぐための施設では、もちろんない。
 許可なく施設に入り、想定外の使い方をした人がけがをした場合でも、施設の管理責任を問われるとは驚いた。小学校に侵入した泥棒が、窓ガラスが割れてけがをしたから損害賠償しろと言っても認められるのだろうか。三条市は東京高裁に控訴した。

2009年12月03日

当たるも八卦 つまみはホッケ

 人類最古の商売は売春だと言う人がいる。人類発達の初期段階から存在したと見られているためだ。本当かどうかは怪しいが、遠い遠いご先祖様もスケベだったと思うと、なんとなくホッとする。売春婦には娼婦、遊女、女郎、白拍子、傀儡女(くぐつめ)など、多くの呼び名がある。古さという点では占いも負けていないのではないだろうか。占い師にも易者、卜(ぼく)者など様々な呼び名がある。
 占いの種類は膨大だ。手相や人相もあれば、古代バビロニア発祥の占星術、古代中国発祥の風水もある。生年月日などでその人の命運を占う四柱推命もあれば、水晶を使って幻視する水晶占い、カードを使うタロット占いもある。ユダヤ教やキリスト教、イスラム教では占いを邪悪な行為と位置付け、仏教でも多くの宗派が否定している。否定されても生き続ける。占いの生命力は強い。
 日本では毎朝、民放各局が朝の情報番組でその日の運勢占いを取り上げている。星座占いの局もあれば、血液型占いの局もある。名前の最初の文字で運勢を占う「あかさたな占い」なるものもある。同じ番組内でニュースを解説し、社会正義を熱く語っているインテリも、占いを「非科学的だ」などとなじることはしない。そんなことをしたら「大人気ない」と笑われるからだろう。
 21世紀は科学の時代どころか、占い全盛の中世以前に戻ったかのようだ。テレビでは占い師の細木数子氏がもてはやされ、霊視ができるというスピリチュアル・カウンセラー江原啓之氏のレギュラー番組もあった。ちなみに日本民間放送連盟は放送基準第8章で「占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない。現代人の良識から見て非科学的な迷信や、これに類する人相、手相、骨相、印相、家相、墓相、風水、運命・運勢鑑定、霊感、霊能等を取り上げる場合は、これを肯定的に取り扱わない」と定めている。テレビ人の良識から見ると細木、江原両氏の占いや霊視は肯定的に取り上げてもかまわないらしい。
 出版界でも、血液型占いの本が爆発的に売れている。昨年はA,B,AB,O各血液型の「自分の説明書」4冊すべてがベストセラーランキングの10位以内に入った。占い本で不安を解消したり、元気を出せるならそれもいい。ただ優劣を言い始めると危ない。「A型はO型より緻密」といった科学的根拠のない分析を「○○人は○○人より優秀」に転化し、「優等人種は劣等人種を淘汰すべき」とホロコーストを行ったのがナチスだ。
 朝のテレビで占いコーナーが始まると、ついその日の自分の運勢を見てしまう。そのくせ夜にはその内容を忘れているから、当たっていたのかどうか、いまだに分からない。