岐路に立つ奨学金制度
不況のため学費の滞納や、経済的理由による高校、大学の中退が増えているという。親が倒産、失業したために進学をあきらめざるを得なかった子どももいる。長岡藩の米百俵ではないが、意欲と才能のある若者が、経済的理由で進学をあきらめるようなことがあってはならない。社会の損失を防ぐためにも、経済的に厳しい学生たちを社会で支えてやるべきだ。
三条市が奨学金を設置したのは昭和30年。三条市出身の日魯漁業創立者の実弟、堤清次郎氏から寄付された100万円を原資に、その運用益を高校生の支援に充てた。60年には市民有志が三条市奨学金育成会(坪井正康会長)を結成、3年にわたり募金活動を展開した。集まった善意は1億3626万円。これによって支援対象を大学生まで広げることができた。
現在、三条市は高校生に月額9600円を支給している。返済の必要はない。支給額は公立高校の授業料を目安としており、授業料の値上がりに伴って来年4月以降は9900円とする。
大学・短大・専門学校生には月額3万円を貸与している。こちらは卒業後、返さなければならない。返済期間は卒業2年目からの10年間。ただし三条へのUターン促進のため、三条市内に住むか、市内の事業所で働く利用者は、返済を全額免除している。
市は奨学金利用希望者を毎年募っている。新規枠は高校生が25人、大学生などは15人。大学などの場合、月額3万円では魅力がないのか、枠に達しない年もある。今年度の利用者は高校生が新規、継続合わせた全学年で73人、大学生などは34人。高校生への支給と、大学生などへの貸与を合わせた年間必要経費は2064万9600円。これに対して、かつて奨学金を利用した社会人の返済予定額が700万円。差し引き1365万円が不足する。
この不足分を奨学基金の運用益で賄えれば問題はないのだが、現在の基金残高は2億6417万円。運用益は年利0・1%で264万円。これで不足額をカバーしようとしても1100万円足りない。やむなく基金を取り崩している。平成20年3月に約2億8700万円だった基金残高が、わずか1年半で2200万円も減った。
今後も低金利が続けば基金はさらに減り続ける。大学生などへの貸与額の増額も求められている。鳩山政権は高校生のいる世帯への助成方針を示している。その機会に、三条市の奨学金のあり方も見直さなければならない。