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2009年05月21日

地方分権と三条市議会

 先日、三条南ロータリークラブ様の例会で「地方分権と三条市議会」をテーマに卓話をさせていただきました。以下はその内容です。

1 上下・主従関係から対等・協力関係へ

 かつて市町村の仕事の6、7割は、機関委任事務という国から言われたとおりにしなければならない国の下請け仕事でした。市長は大臣の地方機関といった位置付けで、機関委任事務に関して市議会は関与すらできませんでした。それが95年の地方分権推進法、2000年の地方分権一括法の施行によって機関委任事務が全廃され、法定受託事務となりました。補助金や交付税、許認可権などによって依然、国と地方の力関係は圧倒的に国が強いことに変わりはありませんが、法的には上下、主従の関係から対等、協力関係に変わりました。市長は各大臣の命で働く営業所長から、協力会社の社長に変わったようなものです。
 その分、地方の裁量も増え、地方が独自に上乗せしている行政サービスも増えました。北海道の夕張市が財政破綻し、財政再建団体となったのはご承知の通りです。市の上乗せサービスができないため、保育料の最高額は三条市が月額45,300円なのに対して夕張市は80,000円です。夕張市民は本当に大変だと思います。三条市も昭和31年から37年まで財政再建団体でしたが、市民生活への影響はいまの夕張ほど大きくはありませんでした。地方の裁量が増えた結果、自己責任も大きくなったということだと思います。


2 なぜ役所仕事が起こるのか

 市役所の仕事はすべて、予算と条例に基づいて行われています。逆に言うと予算や条例がなければ市役所は動けません。その予算や条例を決めるのが市議会なのですが、議会は年に4回、3月、6月、9月、12月しか開かれません。大相撲より少ないのです。民間なら、例えば3月の納期に間に合わなければ残業して4月早々に納品しようと努めます。しかし役所はお客様、つまり市民からこういうサービスをしてほしいという発注があっても、納品、つまりサービス提供は3月に間に合わなければ次の6月議会で予算や条例を決めてから動くことになります。それも間に合わなければ半年後の9月。下手をすると1年後の来年度当初予算でとなってしまいます。よく役所の職員はひまそうにしていると言われますが、それは動きたくても動けないシステムになっているからという面もあるんです。
 子育て支援策に児童クラブというものがあります。保育所のころは朝から夕方まで子どもを預けておけるので親御さんは安心して働けるのですが、小学生になると下校は午後2時、3時になり、夏休みや冬休みは一日中、家にいることになります。お母さんが仕事を休んだり、パートを辞めたりしなければならないと困るので、放課後や長期の休み期間中、子どもさんを預かるのが児童クラブです。これを設置するにあたり、準備の都合で6月定例会での条例制定が間に合わない地域がありました。だったら7月に臨時会を開いて条例を整備すれば夏休みに間に合うのですが、市は次の9月定例会まで待ちました。夏休みにこそ必要な施設なのに、9月から準備を始めるわけです。
 民間なら、こんなことをしていたら倒産します。役所だけはそれが当たり前になっています。地方自治法の改正で定例会は年4回に限らず、いくらでも開けるようになりました。一年中でもよくなりました。役所仕事をなくし、市が市民要望にスピーディーに対応するには議会から変えなくてはならないと思います。


3 二元代表制なのに市民ニーズは一元集約

 国は国民に選ばれた国会議員が内閣を造る一元代表制ですが、市町村は首長と議員、いずれも選挙で選ばれる二元代表制です。どちらも民意を代表していることになっているのですが、市長は1,000人もの職員を使って組織的に民意がどこにあるかを確かめます。自治会長さんがまとめる地域要望も市長のもとに集まります。市長へのたよりといった制度もあります。これに対して現在29人いる議員はそれぞれ自分ひとりで市民の間を回り、民意を集めています。A案とB案、どちらが民意に沿うのか、首長と議会のどちらが民意を正しく把握しているのかといった議論になると、いわば千人規模の企業と29の個人商店が対決しているような形となります。情報量の差は圧倒的です。議会も個人商店の集まりではなく、組織として民意を把握する仕組みづくりが必要ではないかと思います。


4 株主総会から取締役会へ

 議会はこれまで、執行機関の監視役、市長のチェック機関としての機能が最重視されてきました。市長の行き過ぎ、あるいは怠慢をチェックすることが議会に求められるもっとも大きな役割でした。しかし分権が進み、地方同士の競争が激しくなった現在、議会は監視機能に加えて、政策や予算を決定する機関としての責任や、問題を提起したり、政策を提案する能力が求められています。政策によって都市間格差が広がる時代に入ったのですから、議会の位置付けも変わって当然です。
 先ほど話した夕張市は、標準財政規模の14倍もの負債を抱えて破綻しました。この膨大な債務があることを最初に指摘したのは北海道新聞で、議会ではなりません。財政破綻の責任は市長だけでなく、放漫財政を放置してきた議会にもあります。
 企業に例えると、これまでの議会はどちらかというと株主総会のような存在でした。役員の決定権を握り、意見や要望を言うことはあっても、経営責任は役員にありました。これからの議会には取締役会のような役割が期待されています。政策を決めるとともにその責任も負う存在です。市長とは緊張感を持った協力関係を保ち、陳情ではなく政策提言をする機関にならなければ地域間競争に勝ち残れないのではないかと思います。
 地域への強い影響力を持ったロータリーの皆様には、今後も議会のあり方についてご指導ご支援を心からお願い申し上げます。つたない私の話を聴いてくださったことに感謝申し上げ、卓話を終わらせて頂きます。