« 2008年12月 | メイン | 2009年02月 »

2009年01月23日

三条市の21年度は「根張りの年」~不況で苦しいときを粘り強く

 「芽だし」「深化」の次は何か。毎年度の施政方針をひと言で表すように努めている国定勇人三条市長は、21年度を「根張り」の年と位置付けた。
 市長は平成17年の合併から2年間を「足場固め」の時期だったとし、国定市政最初の予算編成となった19年度を「芽だしの年」、20年度はその芽をしっかり根付かせる「深化の年」と位置付けてきた。
 21年度は「根張りの年」。根張りとは、根が土中に張り広がること。未曾有の不況が世界を覆っている昨今、無理して開花を急ぐより、茎が倒れないようにしっかりと根を張りめぐらせ、次年度以降の開花を目指して着実に前進しようという意図だという。また異業種連携、異地点間連携、あるいは地域コミュニティといった各種ネットワークの構築を推進する意味も込められている。
 こうした方針で21年度予算の編成作業を進めているわけだが、不況で三条市も税収の大幅減は避けられない。税源不足をどう乗り切るかが課題だが、「根張り」は「粘り」にも通じる。苦しいときこそ粘り強い市政運営に努めなければならないとの自戒も込められている。
 「芽だし」や「根張り」が分かりやすい言葉かどうかは別として、政治や行政のリーダーが理念やスローガンを掲げ、それを市民に説明し、理解を求めるのは大切なことだ。日本は池田勇人首相の「所得倍増」の掛け声に乗って高度成長を成し遂げた。当時の池田内閣のスローガンは「寛容と忍耐」。政策も理念も明確だった。
 所得倍増計画だけなら貧富の差が激しい、いまの中国のような社会になっていた。そこで田中角栄首相が唱えたのが「国土の均衡ある発展」に向けた「日本列島改造」。これを「決断と実行」という果敢な政治スタイルで推進し、格差拡大を防いだ。
 中曽根康弘首相は「戦後政治の総決算」を掲げ、佐藤栄作、吉田茂に続く戦後3番目の長期政権を維持した。その中曽根政権を抜いて戦後三位となった小泉純一郎首相は「聖域なき構造改革」「構造改革なくして景気回復なし」「官から民へ」といったスローガンを次々と打ち出し、劇場型政治を展開した。
 評価はどうあれ大物政治家が国民に発したメッセージには、政治理念や目標が込められていた。ことしの年頭記者会見で麻生太郎首相が掲げた言葉は「安心」「活力」。紛争続きの中近東の政治家が発した言葉だったら、それなりに政治理念や深さを感じられたのかもしれない。日本の政治家が使うには、安心も活力も、ありきたり過ぎる。使い古されたものを再利用するエコは、言葉以外の分野で実践した方がいいのではないだろうか。(スキップビート91 1月23日)

2009年01月17日

だます手口は年々巧妙に~三条署管内の振り込め詐欺

 タクシー強盗などの犯罪が多発している。景気の悪化は治安に響く。粗暴犯はもとより、地場産業の町三条では資金繰りの苦労に付け入る悪質詐欺などにも気をつけなければならない。
 三条署管内の昨年1年間の振り込め詐欺被害は10件、487万円だった。11月には三条市内の80歳代の男性Aさんが150万円を騙し取られた。手口は、甥を装う男が電話で「株に失敗して会社の金を遣い込んでしまった。きょうの会議でそのことがばれてしまう」、甥の上司を名乗る男が「ばれると警察沙汰になる。150万円振り込んでもらえれば、きょうの会議は乗り切れる」と説明。甥を可愛がっていたAさんは、指定された口座に150万円を振り込んだ。男と甥は別人と気付いたとき、150万円は引き出され、男の携帯電話もつながらなくなっていた。
 未遂事件となると、少なくともこの数十倍はある。60歳代の女性が息子を装う男に騙され、あやうく300万円を振り込みかけたこともある。このときは「携帯電話をなくした。新しい番号はこれ」と犯人が事前に連絡してきた携帯番号のメモをなくしたことが幸いし、なくしたはずの携帯番号をダイアルしたところ、本物の息子と連絡がとれ、詐欺と分かった。
 不況下、資金繰りに苦しむ中小零細企業を狙った融資保証金詐欺という手口もある。正規の金融業者を装って無担保融資のはがきやメールを送り、問い合わせには、いかにも有利な融資を実行するかのように説明。実行直前になって保証金を求める。最初は少額で、振り込みがあれば追加保証を求める。振り込み済みの金を無駄にはしたくないとの心理を利用して保証金を吊り上げていく。
 これの一般消費者向けがおまとめローン詐欺。消費者金融などの高金利融資を一括返済するための資金提供を装う手口で、まず信用調査のためと称して別の消費者金融から借金をするよう指示。その金を証拠金や保証金、入会金などの名目で送金させる。「送金すれば融資を実行する」との説明は、もちろん嘘だ。
 国は平成15年に金融機関に対し、口座開設にあたっての本人確認を義務付ける本人確認法を、16年には預金口座の売買にも罰則を適用する改正本人確認法を施行。17年には携帯電話の販売に際しても本人確認を義務化したが、犯罪現場ではやみ金融などの多重債務者やホームレスなどの名義の売買が横行している。犯罪に使われた口座を凍結することは可能だが、大半は発覚前に金が引き出されており、被害金の回収も、口座などの名義人からの捜査も困難となっている。
 騙す手口は年々、巧妙になっている。油断は禁物だ。(スキップビート90 1月17日付け三条新聞)

2009年01月14日

定住自立圏構想~三条・燕市は新制度の下「中心市」へ

 広域行政のあり方がことし4月から抜本的に変わることになった。これまで県央の広域行政の核となってきた県央広域市町村圏協議会(会長・国定勇人三条市長)は解散せざるを得ず、今後は三条、燕両市が新たな制度における「中心市」について協議していくことになる。
 総務省が現在の広域行政圏に変わる、新たな地方活性化施策として定住自立圏構想を打ち出したもの。ことし4月に同構想推進要綱を施行する。一方、昭和44年の策定から現在まで広域行政を支えてきた広域行政圏計画策定要綱はことし3月末で廃止となった。
 県央では県央広域市町村圏協議会が40年にわたって活動してきた。当初は県央11市町村、合併などを経た現在は5市町村が会員で、県央まつりの開催や国県への要望活動などを行ってきた。
 近年は公共施設の相互利用協定や、応急診療所の設置などをめぐり、加茂市と他市町村の足並みがそろわず、広域協力は停滞。協議会の存在意義も薄らいできた。結果的には内部から解散の声が上がる前に、総務省の要綱廃止によって存在根拠を失うため、協議会は遅くとも数年以内に解散せざるを得なくなった。
 総務省が新たに打ち出した定住自立圏構想は、中心市と周辺市町村が、自らの意思で1対1の協定を結ぶことで形成する、核が明確な圏域。中心市は原則として人口5万人以上で、夜間人口より昼間人口が多いことなどが条件となっている。中心市になろうとする市は地域全体の経営の中心的役割を担い、協定相手の周辺市町村住民にも積極的に各種サービスを提供していく方針などを明記した宣言書を作成。医療や福祉、教育、産業振興、公共交通、人材育成などに関する協定を周辺市町村と結び、共生ビジョンを策定する。
 総務省は協定を結んだ中心市には年間4000万円程度、周辺市町村には1000万円程度の特別交付税を交付するほか、協定などに基づく基幹的施設整備などに地域活性化事業債、民間事業者などに融資を行うファンドを形成する場合は一般単独事業債を充当するといった財政支援も行うことにしている。
 県央で中心市となりうるのは三条、燕両市。加茂市は人口要件を満たしていないため対象外となる。三条、燕両市の場合、それぞれが中心市となってふたつの定住自立圏を作る方法のほか、両市は隣接しているため、合併していなくても両市をひとつの中心市とみなし、ひとつの定住自立圏を作ることもできる。
 もっとも定住自立圏を作るには協定を結ぶ相手が必要。もともと広域協力に消極的な加茂市は別として、田上町や弥彦村まで三条や燕と協定を結ぶのは嫌だとなれば、県央は自立圏なしとなる。協議はこれからだが、いずれにしろことしは県央の広域行政が大きく変わる年となる。(スキップビート89 1月14日付け三条新聞)