三条市の21年度は「根張りの年」~不況で苦しいときを粘り強く
「芽だし」「深化」の次は何か。毎年度の施政方針をひと言で表すように努めている国定勇人三条市長は、21年度を「根張り」の年と位置付けた。
市長は平成17年の合併から2年間を「足場固め」の時期だったとし、国定市政最初の予算編成となった19年度を「芽だしの年」、20年度はその芽をしっかり根付かせる「深化の年」と位置付けてきた。
21年度は「根張りの年」。根張りとは、根が土中に張り広がること。未曾有の不況が世界を覆っている昨今、無理して開花を急ぐより、茎が倒れないようにしっかりと根を張りめぐらせ、次年度以降の開花を目指して着実に前進しようという意図だという。また異業種連携、異地点間連携、あるいは地域コミュニティといった各種ネットワークの構築を推進する意味も込められている。
こうした方針で21年度予算の編成作業を進めているわけだが、不況で三条市も税収の大幅減は避けられない。税源不足をどう乗り切るかが課題だが、「根張り」は「粘り」にも通じる。苦しいときこそ粘り強い市政運営に努めなければならないとの自戒も込められている。
「芽だし」や「根張り」が分かりやすい言葉かどうかは別として、政治や行政のリーダーが理念やスローガンを掲げ、それを市民に説明し、理解を求めるのは大切なことだ。日本は池田勇人首相の「所得倍増」の掛け声に乗って高度成長を成し遂げた。当時の池田内閣のスローガンは「寛容と忍耐」。政策も理念も明確だった。
所得倍増計画だけなら貧富の差が激しい、いまの中国のような社会になっていた。そこで田中角栄首相が唱えたのが「国土の均衡ある発展」に向けた「日本列島改造」。これを「決断と実行」という果敢な政治スタイルで推進し、格差拡大を防いだ。
中曽根康弘首相は「戦後政治の総決算」を掲げ、佐藤栄作、吉田茂に続く戦後3番目の長期政権を維持した。その中曽根政権を抜いて戦後三位となった小泉純一郎首相は「聖域なき構造改革」「構造改革なくして景気回復なし」「官から民へ」といったスローガンを次々と打ち出し、劇場型政治を展開した。
評価はどうあれ大物政治家が国民に発したメッセージには、政治理念や目標が込められていた。ことしの年頭記者会見で麻生太郎首相が掲げた言葉は「安心」「活力」。紛争続きの中近東の政治家が発した言葉だったら、それなりに政治理念や深さを感じられたのかもしれない。日本の政治家が使うには、安心も活力も、ありきたり過ぎる。使い古されたものを再利用するエコは、言葉以外の分野で実践した方がいいのではないだろうか。(スキップビート91 1月23日)