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2008年09月10日

古きよき三条のまちを残すために~登録有形文化財制度

 「まちづくり」というと、とかく都市開発や区画整理など、新たに何かを造ることに目が向きがちだ。三条市の五大事業などはその典型。一方で新たなものは造らない、古いものを守ることを主眼とするまちづくりもある。
 文化財を守り、地域の資源として積極的に活用しようとしている自治体が増えている。それが顕著になったのが平成8年の文化財保護法改正後。新たに登録有形文化財制度が設けられたためだ。
 以前からあった有形文化財の指定制度は、審査も指定後の規制も厳しく、とっつき難かった。これに対して登録有形文化財制度は、建築後50年以上の建造物などが対象で、指定制度よりは審査のハードルが低く、規制も緩やか。文化的価値のある近代の建造物が、都市開発や生活様式の変化などによって安易に壊されることのないようにと設けられた。
 ことし7月までに全国の登録建造物は7千件を越えた。住宅や店舗、神社仏閣などのほか、工場や駅舎、橋、トンネル、ダム、煙突、門、井戸、石垣などもある。
 これら登録建造物に対しては、保存や活用に必要な修理などの設計管理費の半額を国が補助したり、相続税の3割、固定資産税の5割を免除するといった優遇措置がある一方、規制は外観が大きく変わる場合などに届け出る程度となっている。
 新潟県内の登録も300件を越えた。新潟市、佐渡市、村上市などの登録が多く、県央では平成10年に弥彦神社、13年に大河津分水洗堰、ことし6月に燕市、鎚起銅器製造玉川堂の登録が認められた。
 三条市内の登録は現在ゼロ。市では昭和10年建築の歴史民俗産業資料館(旧武徳殿)の登録準備を進めているが、これ以外にも市有施設では昭和8年建築の大崎浄水場の事務所とポンプ室、市民運動によって保存された丸井今井邸などがある。
 民間となると対象は数え切れない。三条の中心部には寺社や老舗の商店、かつて料亭だった建物などがある。農村部にはかつての大地主の館などがある。
 他市ではこうした文化的な資産を上手に活用している。三条も見習わなければならない。何らかの手を打たないと建て替えられたり、取り壊されて駐車場にされてしまう。
 かつて三条の大通りに、間口が狭くて奥に長いウナギの寝床のような建物がずらりと並んでいた頃、「江戸時代は建物の間口に応じて課税されたため、節税用にこうした建物が並ぶようになったのだ」と教わったものだ。そうした三条らしい建物も少なくなった。一方で新しい三条の代表的な建物である再開発ビルは苦戦を強いられている。
 いま古き良き三条のまちを守ることを考え、実行しないと、二度と取り戻せなくなるのではないだろうか。(スキップビート85 9月10日付け三条新聞)

2008年09月01日

赤字大きいほど交付税も大きい~まじめ勤勉市町村ほど損

 「なんで三条市だけマイナスなのか」「佐渡や村上、十日町などより三条が少ないのはどういう訳か。三条市長は怠けているのか」。8月16日付け三条新聞2面、平成20年度普通交付税に関する記事の反響だ。
 記事によると国から普通交付税を受ける新潟県内の自治体は、県と28の市町村。県や他市町村の交付額は前年度を上回ったが、三条市だけは前年度より3752万2000円、0・5%減の68億9890万円にとどまった。
 三条市の交付額は県内で多いほうから11番目。新潟、長岡、上越のみならず、三条より人口の少ない佐渡や村上、十日町、魚沼、新発田、南魚沼、糸魚川の方が三条を上回る交付税を受けている。おかしいではないか、三条は国から冷遇されているのではないかと感じた市民もいた。
 交付税は地方の財源の不均衡を調整し、どの地域の国民にも一定の行政サービスを提供できるよう財源を保障する制度。所得税、法人税、酒税、消費税、たばこ税の国税5税の一定率を割り当てることになっている。
 普通交付税は、その自治体が行政サービスなどのために必要な支出(基準財政需要額)から、得られる収入(基準財政収入額)を差し引いて算出する。つまり収支の赤字分を埋め合わせるためのもの。支出よりも収入が多い黒字の自治体、県内では湯沢町や刈羽村のような市町村には交付されない。
 市町村の場合、支出は人口をはじめ道路の面積や延長、学校数や学級数などによって算定することになっている。収入は市民税や固定資産税などの地方税、地方譲与税などで算定する。
 三条市の普通交付税が佐渡や村上などより少ないのは、この収支の赤字が佐渡などより少ないため。地場産業などによって法人市民税をはじめとする税収が多いためだ。
 19年度より20年度の交付額が減ったのは、公共下水道事業に関連する支出が減った一方、水害に関係する雑損控除などの減によって収入が増えたためだ。
 産業育成などによって税収増に努め、合理化などによって支出を削った自治体の交付税は減る。頑張って黒字にでもしようものなら交付税額がゼロになる。逆に税収増に向けた手を打たず、行政改革にも不熱心、その結果、収支の赤字額が大きい市町村ほど、国が交付税で面倒を見てくれる。
 何十年も前から「努力すると損をするような制度はおかしい」と指摘されてきたが、国はいつまでたっても抜本的な改革をしようとはしない。ちなみに地方交付税法第一条には、交付税の目的について「地方団体の独立性を強化することを目的とする」とある。下手な冗談としか思えない。(スキップビート84 8月31日付け三条新聞)