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2008年07月28日

樋渡市長の『がばい市政』~市政にも楽しさと笑い必要

 全国にはユニークな市長がいるものだ。佐賀県武雄市の樋渡(ひわたし)啓祐市長がこのほど来条、「がばい市政」の一端を見せてくれた。
 樋渡市長は昭和44年11月生まれの38歳。東京大学経済学部卒業後、総務庁(現総務省)に入庁、平成17年に退官し、18年4月から武雄市長。同年11月に総務省の後輩、国定勇人三条市長が34歳で当選するまで、全国最年少市長だった。
 樋渡市長の武雄市の売り出し方がおもしろい。島田洋七氏の小説『佐賀のがばいばあちゃん』がヒットし、テレビドラマ化が決まると、そのロケを誘致。武雄市を「がばいばあちゃん」の故郷にしてしまった。
 さらには平均年齢74歳、最高齢91歳の地元女性たちによる観光PR隊「7人のがばいばあちゃん」を結成。歌って踊れる最高齢コーラスグループにしようとオリジナル曲を作り、CDを発売した。グループ名は「ABBA(アバ)」ならぬ「GABBA(ガバ)」。市役所内に「佐賀のがばいばあちゃん課」まで設置し、市職員がマネージャーとなって各地で公演している。
 市長就任翌年には武雄温泉で日曜朝市を開催。地場の農作物などのほか、市長の音頭とりによって地元のパン店とかまぼこ店が協力して開発した「楼門バーガー」も販売している。
 このほかハーブの一種「レモングラス」を武雄の特産品として栽培することにも力を入れており、市役所内に「レモングラス課」を設置、お茶をはじめエッセンシャルオイルの開発なども進めている。
 樋渡市長は「GABBA」とともに三条市を訪れ、国定市長とのパネルディスカッションなどで武雄市を紹介した。樋渡市長は「地域活性化のために、武雄という名をより多くの人に知ってもらうことが大切」と説き、「リーダーは風呂敷を広げられるだけ広げ、夢を語るべき」と話していた。
 樋渡市長を「可視化のプロ。見るだけで政策が分かる取り組みを進められている。本当に勉強になる」とたたえ、そのひらめきと粘り強さ、手腕にほれ込んでいる国定市長が、ことし1月に武雄市を訪問。相互交流をすべく、7月に樋渡市長が来条した。
 三条市政に武雄市政ほどの楽しさやスピード感があるだろうか。九州の陽気なノリを三条市に持ち込んだらどうなるだろう。武雄の「がばいばあちゃん」と、三条の「ごうたれジサ連」のコラボレーション。「ふざけるな」「まじめにやれ」と怒られるかもしれないが、固すぎるのもつまらない。観光客数が着実に増えている武雄市は、市政にも適度な笑い、遊び心が必要であることを教えてくれている。(スキップビート82 7月27日付け三条新聞)

2008年07月24日

『狂乱物価』まで世襲とは! インフレに困るのは農家も

 原油に始まり、野菜ジュースやキャンディーにいたるまで一斉に値上がりしている。急激なインフレを「狂乱物価」と名付けたのは福田康夫首相の実父で、当時、蔵相だった故福田赳夫元首相だ。狂乱物価まで世襲するのは御免こうむりたい。
 全国いか釣漁業協議会は6月18、19の2日間、一斉休漁した。漁船の燃料高騰で採算割れとなっている現状を政府や消費者に訴えるためだ。7月15日には全国漁業協同組合連合会など16団体に所属する22万隻が一斉休漁する。こちらも目的は同じ。窮状を訴えるための、形を変えたストライキだ。
 インフレに困っているのは農家も同じ。JA全農は7月から化学肥料を平均60%程度値上げした。値上げは5年連続だが、上げ幅は過去最大だ。薬剤費や他の諸材料費も値上がりは必至となっている。
 北陸農政局新潟統計事務所によると、新潟県の平成18年産米の平均生産費は10㌃当たり11万2587円。ここから労働費を差し引いた直接費用は7万9905円。うち肥料費と薬剤費は1万3760円で、直接費用の17%を占めている。肥料費、薬剤費の値上がりは農家所得を直撃する。
 この年の平均米価は60㌔当たり1万6025円だった。これで計算した所得は10㌃当たり5万4168円。これはあくまで平均で、作付け面積50㌃未満は1万9220円、100㌃未満は3万2486円にとどまっている。
 翌19年産米の細かな数値はまだ発表されていないが、平均米価が60㌔当たり1000円は下がっているだけに所得が減ったことは確実だ。米価は下がり、経費は上がるでは泣きっ面にハチだ。
 政府は生産調整による米価維持に失敗した。いまや生産調整の目的は米価の維持ではなく、下げ幅をできるだけ抑えることになっている。ことしも旧三条地区は34・9%、下田地区は33・3%、栄地区では37・8%もの減反に取り組んでいる。下田地区で3年に1度の全面休耕、三条や栄地区はそれ以上の休耕を行っている率になる。
 ある農家は「うちらも漁師を見習って全国一斉に1年間、コメ作りを休めばいいんだ。そうすれば翌年の米価は上がる。田んぼの大切さも分かってもらえる。三割減反なんかするより全面休耕の方が手間も金もかからない」と説く。
 農家のゼネストという発想に驚いていると、農家は続けて「でも無理なんだて。全国で決めても抜け駆けする奴が出てくるし、そもそも俺ら百姓はコメを作らんでいらんねんだて」。
 20年産の米価が気になる。(スキップビート81 7月23日付け三条新聞)

2008年07月03日

避難所に指定されているのに~急がなければならない耐震化

 平成16年10月の中越大震災、昨年7月の中越沖地震の痛ましい記憶が生々しく残っているなか、ことし5月には中国・四川大地震、6月14日には岩手・宮城内陸地震が発生した。「天災は忘れぬうちにやってくる」。
 四川大地震では学校校舎が倒壊し、多くの児童生徒の命が奪われた。中国では手抜き工事が問題になっている。日本とは事情が違うのだろうとのんびり構えてもいられない。文部科学省によると、大規模な地震で倒壊などの危険性の高い小中学校施設が全国で約1万棟もあるという。小中学校の多くは災害時の避難所に指定されている。避難所が危険では話にならない。三条市6月定例会でも、学校施設の耐震性に関する質疑が相次いだ。
 三条市の小中学校で昭和56年の耐震基準見直し前に建てられ、耐震診断が必要な施設は17校、89棟。いずれも旧三条市の学校だ。旧栄町、下田村が学校施設を新築、改修している間、旧三条市は何をしていたのか。五大事業をはじめとする都市基盤整備を優先させたことなどから、学校施設関係は赤いさび水が出る水道や、雨漏りする天井を修繕する程度で精一杯だったのだという。
 市はこれらの施設を対象に耐震化優先度調査を行った。早急に診断が必要なランク1、2と判定されたのは四日町、条南、一ノ木戸、裏館、三条、月岡の6小学校と、第一、第二、本成寺の3中学校の合わせて9校、21棟。今年度内に耐震診断を行い、耐震化指数(IS値)0・3未満と判定された施設の補強工事を今後3年以内に行うことにしている。
 補強工事には数千万円から数億円単位の経費がかかる。0・3未満を対象とするのは事業費の86・7%を国が補助し、市の負担が13・3%で済むためだ。しかし国土交通省は耐震化指数0・3未満を「大規模地震に対して倒壊または崩壊する危険性が高い」としているだけでなく、0・6未満も「倒壊または崩壊の危険性がある」としている。0・4、0・5と診断された学校も、国の補助が少ないからといって、いつまでも放置しておくわけにはいかない。
 優先度調査だけで診断を先送りしている井栗、西鱈田、大崎、保内、須頃、南の6小学校と、第三、大崎の2中学校の計8校も、安全安心と呼ぶには根拠が薄い。
 小中学校のほかにも旧耐震基準で建てられ、診断未実施の保育施設や公民館などが避難所となっている。
 耐震化は急がなければならない。しかし税収増が期待できない昨今、その財源を確保するには他の市民サービスを削らなければならない。何を削るか。国定市長も苦慮している。(スキップビート80 7月1日付け三条新聞)