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2008年06月19日

小中一貫教育導入検討しても~教職員の人事権なくては

 前回に続いて政府の地方分権改革推進委員会の第一次勧告について。勧告は大胆な分権を打ち出す一方、「中核市」などを重要視していることも特徴で、県央も中途半端な規模で満足せず、さらなる合併によって中核市を目指さないと地域づくりがやりにくくなる。
 勧告は現在、都道府県が許認可権を持っている三百五十九事務を市町村に移すとしている。
 とはいえ市町村の扱いは一律ではない。都市計画決定や二ヘクタール以下の農地転用といった権限移譲は市まで。対象外となった町村は、今後も県にお伺いを立てなければ自分たちの思うまちづくりはできない。
 市にも区別がある。福祉施設で見ると、保育所や児童館などの認可権限はすべての市に移譲するとしているが、助産施設や母子生活支援施設などの権限移譲は特例市までで、一般の市は対象外となっている。
 小中学校教職員の人事権や学級編制、教職員定数の決定権の移譲対象も、当面は中核市までで、一般市は対象外だ。
 中核市とは、政令で指定する人口三十万人以上の市で、現在、長野市など三十九市が指定を受けている。特例市は人口二十万人以上で、長岡市や上越市など四十三市が指定を受けている。
 教職員の定数や人事の決定権を持っているかどうかの違いは大きい。発達障害児の増加などもあって、教職員は臨機応変、弾力的に配置しなければ学級運営が難しいクラスが増えている。
 加えて三条市では現在、小中一貫教育の導入を検討している。小中学校の連携を強め、教職員の相互乗り入れなどによって小学五、六年の段階から英語など一部の教科に担任制を導入、子どもたちの学力向上と中一ギャップの解消を目指すもので、来年度からモデル校の第一中、第三中学区での一部実施、平成二十四年度から市内全中学校区での実施を計画している。
 中学校の教職員が小学校で教えたり、小学生たちを中学校まで引率するには、小中学校間の綿密な打ち合わせと、カリキュラム作成のノウハウが必要となる。市が教職員の人事権を持たない現状では、モデル校での試行錯誤の末にノウハウをつかんだ先生が市外に異動し、新任の先生が一からやり直すといったことにもなりかねない。
 市が人事権を持てば、こうした心配はなくなる。政令指定都市の新潟市はすでに教職員の人事権を持っており、研修にも力を入れている。
 県央各市が教職員の人事権を握るには人口三十万人以上の中核市になる必要がある。教育格差をこれ以上、広げてはならないという点だけ見ても、県央合併には大きな意味がある。(スキップビート79 6月18日付け三条新聞)

2008年06月16日

族議員排除しなければ 『官治』を『自治』には不可能

 政府の地方分権改革推進委員会の第一次勧告が小気味好い。国民の信頼を失った官僚による統治の限界を指摘し、「生活者の視点に立つ地方政府の確立」を訴えている。
 同委員会は5月30日、福田首相に第一次勧告を提出した。大規模農地の転用許可や直轄国道、一級河川などに関する権限を国から都道府県に移譲するほか、小中学校教職員の人事権など359項目の事務権限を都道府県から市町村に移すことを明記している。
 まず同委員会の現状認識が痛快だ。勧告は、財政難によって「政府は各種の社会問題に政策的に対応する能力を厳しく制約されている」ことに加え、「社会保険庁の年金記録漏れ問題に始まり、新しくは道路特定財源の不明朗な使途や後期高齢者医療制度をめぐる混乱に対する憤まんと不満の噴出など、従来、国の官僚の能力や資質に寄せられてきた国民の信頼は急速に低下している」「これまでの行政、特に国の行政では、生活者の視点がおろそかにされていた」と分析している。
 政府はもはや政策遂行能力も、その基盤となる国民の信頼も失っているという意味だ。法に基いて設置された政府の機関が、ここまで明確に政府批判、官僚批判をするのも珍しい。
 さらに「地方自治体は、住民に対して幅広い行政サービスを提供している。しかし、こうした行政サービスの多くは、実質的な決定権が国に留保されていたり、財源を国に依存せざるを得ないのが実態である。地域ごとの実情や個性の違いを考慮せず、国が全国画一的に定める基準を一律にあてはめることは、地域活性化の障害となる危険性がある。『自治』に対する『他治』、官主導による統治を意味する『官治』ではなく、地域のあり方は地方独自の個性を優先し自ら決定する自治の確立が住民にとって望ましい」と説いている。
 暗にこれまでの日本は官僚が統治する「官治」だったが、それではもう対応しきれなくなっている。だから地方が主役の分権国家に、「国と地方自治体」から「中央政府と地方政府」に国の形を変えなければならないと説いている。
 分権の具体案では、農地転用に関する国の権限を県に移譲し、現在、県が持っている2ヘクタール以下の転用権限を市に移譲することとしている。
 教職員の人事権は市に移譲する方向で検討すべきとし、商工関係では商工会議所と商工会の一元化を含めた新たな商工団体制度を設けるといった検討を行って今年度中に結論を得るとしている。
 勧告に対し、農水省は農地転用の権限委譲に強く抵抗している。自民党地方分権改革推進特命委員会からも「分権を推進すれば国がよくなるというのは間違いだ」といったクレームがついた。選挙区では分権推進と言いながら、永田町では官僚とタッグを組んで自分たちの権力を守ろうとする。こうした族議員を排除しなければ「官治」を「自治」に改めることはできない。(スキップビート78 6月12日付け三条新聞)

2008年06月02日

三条市勤労者福祉共済~不況のときこそのはずが

 三条市勤労者福祉共済事業が低迷している。不況のときこそスケールメリットを活かさなければならないのに、実態は景気低迷とともに事業規模も縮小している。
 福祉共済は三条市内の事業所の福利厚生を担う事業。月額1人300円の掛金で、祝い金などの給付や各種割引券の発行、検診といった事業を行っている。
 給付関係では結婚や出産、銀婚、傷病に各1万円、入学や成人、退職に5000円といった祝い金や見舞金、会員死亡時に10万円の弔慰金を給付している。割引事業では1500円値引きとなる東京ディズニーリゾートをはじめ、温泉施設や海の家、スキーリフト、映画館、フィットネスクラブなどがある。旅行代理店が企画したツアーやコンサートへの補助、郵送でできる各種検診の割引などもある。
 平成8年には408事業所、3571人が加入していたが、ことし5月1日現在は404事業所、2882人。事業所数は横ばいだが、会員数は2割減った。
 19年度の給付事業実績は476件、392万5000円で、給付金は前年度より26%の減、各種割引券などの余暇事業は8579件、421万3890円で24%減だった。
 燕市の(財)燕西蒲勤労者福祉サーボスセンターの会員数はことし4月1日現在で919社、8099人。三条市の方が事業所数も労働者数も多いのに、福祉共済の会員は3分の1近くにとどまっている。
 三条市は福祉共済の加入対象を市内の中小企業に限っている。大手の企業は独自に福利厚生事業を行っているからとの理由のようだが、大企業が入ったからといって中小企業が不利益を被ることもない。むしろスケールメリットが増すのだから、企業規模の枠を取り払うべきではないか。景気が低迷している昨今、大手も福利厚生の負担を軽くできるなら、加入を検討してくれるのではないか。
 給付や余暇事業の利用が大幅に減っているのだから、内容や周知、申し込み方法の見直しも必要だ。給付事業は事業所からの申請がなければ祝い金も見舞金も送らない。結婚や出産、入学や成人など申請漏れがかなりあるのではないだろうか。
 最近、独身社員の増加を心配する経営者の話をよく聞く。共済事業でパーティーなどを企画し、そこで出会った社員同士が結婚するようなことになれば、本人や家族だけでなく、経営者にも喜ばれる。既婚者が「俺も行きたい!」とうらやむような企画があった方が楽しいのではないだろうか。(スキップビート77 5月30日付け三条新聞)