小中一貫教育導入検討しても~教職員の人事権なくては
前回に続いて政府の地方分権改革推進委員会の第一次勧告について。勧告は大胆な分権を打ち出す一方、「中核市」などを重要視していることも特徴で、県央も中途半端な規模で満足せず、さらなる合併によって中核市を目指さないと地域づくりがやりにくくなる。
勧告は現在、都道府県が許認可権を持っている三百五十九事務を市町村に移すとしている。
とはいえ市町村の扱いは一律ではない。都市計画決定や二ヘクタール以下の農地転用といった権限移譲は市まで。対象外となった町村は、今後も県にお伺いを立てなければ自分たちの思うまちづくりはできない。
市にも区別がある。福祉施設で見ると、保育所や児童館などの認可権限はすべての市に移譲するとしているが、助産施設や母子生活支援施設などの権限移譲は特例市までで、一般の市は対象外となっている。
小中学校教職員の人事権や学級編制、教職員定数の決定権の移譲対象も、当面は中核市までで、一般市は対象外だ。
中核市とは、政令で指定する人口三十万人以上の市で、現在、長野市など三十九市が指定を受けている。特例市は人口二十万人以上で、長岡市や上越市など四十三市が指定を受けている。
教職員の定数や人事の決定権を持っているかどうかの違いは大きい。発達障害児の増加などもあって、教職員は臨機応変、弾力的に配置しなければ学級運営が難しいクラスが増えている。
加えて三条市では現在、小中一貫教育の導入を検討している。小中学校の連携を強め、教職員の相互乗り入れなどによって小学五、六年の段階から英語など一部の教科に担任制を導入、子どもたちの学力向上と中一ギャップの解消を目指すもので、来年度からモデル校の第一中、第三中学区での一部実施、平成二十四年度から市内全中学校区での実施を計画している。
中学校の教職員が小学校で教えたり、小学生たちを中学校まで引率するには、小中学校間の綿密な打ち合わせと、カリキュラム作成のノウハウが必要となる。市が教職員の人事権を持たない現状では、モデル校での試行錯誤の末にノウハウをつかんだ先生が市外に異動し、新任の先生が一からやり直すといったことにもなりかねない。
市が人事権を持てば、こうした心配はなくなる。政令指定都市の新潟市はすでに教職員の人事権を持っており、研修にも力を入れている。
県央各市が教職員の人事権を握るには人口三十万人以上の中核市になる必要がある。教育格差をこれ以上、広げてはならないという点だけ見ても、県央合併には大きな意味がある。(スキップビート79 6月18日付け三条新聞)