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2008年05月21日

道路特定財源~この機会に車社会を作り直す議論を

 衆院が道路財源特例法を再可決した。今後は一般財源化するかどうかが争点になるという。この機会に車社会を作り直す議論がなされないものだろうか。
 道路特定財源制度が始まったのは昭和29年。当時は道路がなければ急病人を病院に運べなかったり、経済が成り立たない地域も多かった。道路は国民の命や暮らしを守るために必要不可欠だった。
 現在、計画中の道路の多くは交通渋滞緩和や移動時間短縮のためのバイパス的性格が強い。数百億円を投じて短縮される移動時間は数十分。それも何年かすると交通量の増加によって、再び渋滞が始まる。道路を造れば造っただけ、沿線に事業所や住宅が建ち、交通量が増える。
 道路特定財源は建設業界の甘い蜜、族議員や建設業界が利権を死守するために一般財源化に反対しているとの論評も多いが、それ以上に道路特定財源で潤ってきたのが自動車産業ではないか。
 道路特定財源導入を機に日本の自動車業界は成長を始め、道路整備が進むに連れて発展してきた。道路使用の受益者負担という理屈なら、ガソリンに課税するより車購入時に一括課税した方が徴税コストは安い。そうしなかったのは、裏の狙いが自動車産業育成だったからと見るのはうがち過ぎだろうか。
 いまや車は1家に1台を通り越し、運転免許所有者1人につき1台となりつつある。公共交通機関が未発達な地方では、車がなければ不便この上ない。食費や家賃より、車のローンや維持費の方が高い若者もいる。
 政府は道路特定財源を来年度から一般財源化することを閣議決定した。前回総選挙で「小さな政府を作る。郵政民政化はその象徴」と訴えて当選した人たちが、2年半後には「大きな政府」の代表例であるガソリン暫定税率の堅持に血眼になるのだから、一般財源化もどうなるか分かったものではないが、いずれにしろ暫定税率は今後10年続く。
 この税を国民生活最優先で使うのか、関係業界の保護育成も考えるのか。地方では、同じ交通問題でも道路より公共交通機関につぎ込んだ方が国民の生活は楽になる。
 三条市で見ると18年度、維持管理費を除いた道路新設だけで22億7700万円使っている。対して循環バスや民間路線バスの赤字補てんに使ったのは6300万円。仮に道路新設経費の半分、11億円を循環バスにつぎ込めば、現在、2時間に1便しかない市内循環バスを都会の地下鉄並みの7分に1便まで増やすことも、計算上は可能となる。これは極端としても、15分に1便あればかなり使いやすくなり、利用者も増える。
 循環バス運行に対する市の負担は1㌔当たり5万円。30㌔のコースなら150万円で1便を新設できる。11億円なら733便。交通渋滞などすぐに解消できる。
 バスが使いやすくなれば家族全員が車を持つ必要もなくなり、市民の経済的負担は軽くなる。自宅からバス停、バス停から目的地まで歩くことは健康にも良い。企業も社員駐車場が不要となり、土地を有効活用できる。地球環境に良いことは言うまでもない。なにより「帰りに一杯どう?」が増えそうなのがいい。
 残念ながら三条市が勝手に道路新設費をバス運行などに回すことはできない。国の補助金がカットされる。分権を進められないのなら、国には都市住民ばかりでなく、地方の生活実態をしっかりと見てもらいたいものだ。(スキップビート76 5月19日付け三条新聞)

2008年05月09日

さすが諸橋博士の下田村~急げ小中学校の環境改善

 「三条市って本当にお金がないみたいですね」。市外から転入してきた小学校教諭の感想だ。
 この先生は以前、旧下田村の小学校に勤務したことがある。「下田村当時は感じませんでしたが、三条市になったら本当に学校予算が少なくて、備品を買いたいと思ってもなかなか買えないんです」。それほど極端な差はないだろうと思いつつ、調べてみて驚いた。
 合併前の平成16年度決算によると、児童1人当たりの小学校管理費は旧下田村が18万7048円、旧栄町が11万5830円だったのに対し、旧三条市はわずか6万1555円。旧三条は旧栄の約半分、旧下田の3分の1以下だったことになる。管理費には消耗品や備品の購入費、工事請負費、光熱水費、学校施設保守管理委託料などが含まれている。
 合併後の18年度決算では、新三条市全体の平均が児童1人当たり12万1754円となった。旧三条の小学校は2倍近くに増え、旧栄も微増となったものの、旧下田の小学校は35%もの大幅減となったわけだ。
 小学校1校当たりの児童数が旧三条は330人、旧栄は229人、旧下田は107人。大規模校と比べれば小規模校はコストがかかる。
 こうしたスケールメリットの差もあるとはいえ、児童1人当たりで3倍もの違いがあり、先生が「三条は予算が少ない」と感じるのも無理はない。旧三条市内では傷みの激しい校舎の壁など、本来は市の予算で行うべき修繕を、予算配分が少ないためにやむを得ずPTA会費で行っている小学校まである。
 さすがは大漢和辞典の諸橋轍次博士を生んだ下田村。たとえ財政が厳しくても、教育には金を惜しまなかった。そういえば漢学の里・諸橋轍次記念館の上映ビデオは、いまも字幕やナレーションは「南蒲原郡下田村」のまま。三条市が教育を尊ぶ精神を受け継ぎ、旧下田並みに教育予算を増やさない限り、字幕やナレーションは変わらないのかもしれない。
 ちなみに三条市内から市外の中学校に通っている生徒は今年度、79人いる。中高一貫の燕中等教育学校がもっとも多い32人、新潟大学附属中が長岡、新潟合わせて21人、新潟市内の私立中が13人など。中学受験の難関を突破した優秀な子どもたちだ。
 大都会のように成績や保護者の経済力によって、中学校段階から子どもたちの通う学校が違ってくる社会に、いずれ三条もなってしまうのだろうか。そうしないためにも、市立小中学校の環境改善は大切だ。(スキップビート75 5月8日付け三条新聞)