道路特定財源~この機会に車社会を作り直す議論を
衆院が道路財源特例法を再可決した。今後は一般財源化するかどうかが争点になるという。この機会に車社会を作り直す議論がなされないものだろうか。
道路特定財源制度が始まったのは昭和29年。当時は道路がなければ急病人を病院に運べなかったり、経済が成り立たない地域も多かった。道路は国民の命や暮らしを守るために必要不可欠だった。
現在、計画中の道路の多くは交通渋滞緩和や移動時間短縮のためのバイパス的性格が強い。数百億円を投じて短縮される移動時間は数十分。それも何年かすると交通量の増加によって、再び渋滞が始まる。道路を造れば造っただけ、沿線に事業所や住宅が建ち、交通量が増える。
道路特定財源は建設業界の甘い蜜、族議員や建設業界が利権を死守するために一般財源化に反対しているとの論評も多いが、それ以上に道路特定財源で潤ってきたのが自動車産業ではないか。
道路特定財源導入を機に日本の自動車業界は成長を始め、道路整備が進むに連れて発展してきた。道路使用の受益者負担という理屈なら、ガソリンに課税するより車購入時に一括課税した方が徴税コストは安い。そうしなかったのは、裏の狙いが自動車産業育成だったからと見るのはうがち過ぎだろうか。
いまや車は1家に1台を通り越し、運転免許所有者1人につき1台となりつつある。公共交通機関が未発達な地方では、車がなければ不便この上ない。食費や家賃より、車のローンや維持費の方が高い若者もいる。
政府は道路特定財源を来年度から一般財源化することを閣議決定した。前回総選挙で「小さな政府を作る。郵政民政化はその象徴」と訴えて当選した人たちが、2年半後には「大きな政府」の代表例であるガソリン暫定税率の堅持に血眼になるのだから、一般財源化もどうなるか分かったものではないが、いずれにしろ暫定税率は今後10年続く。
この税を国民生活最優先で使うのか、関係業界の保護育成も考えるのか。地方では、同じ交通問題でも道路より公共交通機関につぎ込んだ方が国民の生活は楽になる。
三条市で見ると18年度、維持管理費を除いた道路新設だけで22億7700万円使っている。対して循環バスや民間路線バスの赤字補てんに使ったのは6300万円。仮に道路新設経費の半分、11億円を循環バスにつぎ込めば、現在、2時間に1便しかない市内循環バスを都会の地下鉄並みの7分に1便まで増やすことも、計算上は可能となる。これは極端としても、15分に1便あればかなり使いやすくなり、利用者も増える。
循環バス運行に対する市の負担は1㌔当たり5万円。30㌔のコースなら150万円で1便を新設できる。11億円なら733便。交通渋滞などすぐに解消できる。
バスが使いやすくなれば家族全員が車を持つ必要もなくなり、市民の経済的負担は軽くなる。自宅からバス停、バス停から目的地まで歩くことは健康にも良い。企業も社員駐車場が不要となり、土地を有効活用できる。地球環境に良いことは言うまでもない。なにより「帰りに一杯どう?」が増えそうなのがいい。
残念ながら三条市が勝手に道路新設費をバス運行などに回すことはできない。国の補助金がカットされる。分権を進められないのなら、国には都市住民ばかりでなく、地方の生活実態をしっかりと見てもらいたいものだ。(スキップビート76 5月19日付け三条新聞)