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2008年01月13日

総合窓口「お客様係」 問題は人材育成だが~100点でなくていいから

 三条市は4月から本庁に市民総合窓口を設置する。いわば「お客様係」となるフロアマネージャーも配置する予定で、市役所を訪れた市民が「どこに行けばよいのか分からない」といった事態は大幅に減る。
 市役所が行っている窓口業務は全部で306種類あり、現在は各課に分散している。子どもが生まれた場合、市民は市民課に出生届を、社会福祉課に児童手当、都市計画課に誕生祝樹を申請し、国保加入者はさらに保険年金課国保係に出産育児一時金を、同課医療係に乳児医療費助成を申請しなければならない。出生関係はまだ窓口5か所を回るだけで済むが、死亡の場合、本人の年齢などによってさらに煩雑な手続きが必要になる。
 こうした不便を解消するために総合窓口を設置するもので、目指す姿は「便利」「分かりやすい」「やさしい」。取り扱い件数で全体の94%を占める212種類の業務を本庁低層棟2階ロビー周辺に設置する窓口で取り扱う。出生や死亡、婚姻、転入出、子育て、医療、高齢福祉、障がい者福祉などに関する手続きは、市民が各課を回らずとも総合窓口一か所で事足りるようになる。
 総合窓口のカウンターには受付番号の発券機も設置、事務処理の効率化を図るとともにプライバシーを考慮し、申請者の名前を呼び出すことはやめる。
 ロビーにはフロアマネージャーを配置。各窓口への案内役を務めるほか、申請書の記載方法が分からないといった来庁者をサポートする。
 確定申告時に大会議室などに特別受付を設置している税の申告や、個々の事情が異なる身体障害者手帳、療育手帳の交付などは、総合窓口に移すとかえって待ち時間が長くなるといったサービス低下をきたすため、引き続き担当課の窓口で行うが、これらの申請も総合窓口を訪ねれば、フロアマネージャーが担当窓口まで案内する。
 こうしたサービスは仕組みも大事だが、より大切なのは人材。市では1月から職員研修を始めているが、212種類の窓口業務に精通し、作業をスピーディに進めつつ来庁者に好印象を持たれる応対ができる職員の育成には時間がかかる。
 総合窓口の設置時期を先送りし、研修期間をたっぷりと設け、万全の体制で新サービスを始めたほうが批判は浴びにくい。しかし、その間も来庁者は各課窓口を回り続けなければならない。百点満点を目指して慎重の上にも慎重に物事を進めるのが従来のお役所仕事だった。だからサービス開始が遅くなる。満点は取れなくても落第点にはならない、80点は見込めるという状況なら、より早く市民にサービスを提供し、提供しながら改善に努めて85点、90点と点数アップを目指す行政の方が、時代に合っているのではないだろうか。総合窓口の設置を黄金連休や盆休みの後ではなく、あえて年度当初の4月1日とした背景には、こうした考え方もある。
 なお窓口業務の統合と、「面倒な話はうちではなくてあっちの課で」という責任逃れのたらいまわしは別問題。こちらはこちらで別途、解消に努めなければならない。(スキップビート69 1月12日付け三条新聞)

2008年01月11日

県央の救急医療 首長たちも政治手腕発揮して~再構築のために連携を

 「政治手腕」とは具体的にどういうものなのか、県央地域の救急医療の在り方に関する検討会で実感させられた。
 三条、燕、加茂、見附南蒲の4つの医師会が同検討会を設置したのは平成19年4月。これまでの協議で県央に新たな応急診療所を設置することを決めた。運営主体は県央の4つの医師会。診療科目は内科、小児科、外科の3科とし、診療時間は夜間が午後7時30分から10時30分まで、休日は午前9時30分から午後5時までを予定している。
 問題は応急診療所の位置付け。「県央の救急医療はこのままでは大変なことになる」との認識は一致しているものの、医師会が担うべき役割という点では各医師会内部に温度差があった。現在、南新保、三条市医師会館で行っている救急診療所の拡充で手一杯との考え方もあった。救急医療の主役はあくまで病院であり、医師会による診療所はそれを補完するものとの位置付けだ。
 草野恒輔三条市医師会長をはじめとする検討会幹部は、あえてその問題には踏み込まずに協議を重ねた。最初から位置付けにこだわって空中分解しては元も子もない。応急診療所の設置や科目、時間などについての合意を先行させた。
 そのうえで12月の検討会に県央の各病院長、消防長を招いた。病院長からは「医師不足のために救急患者を積極的に受け入れる体制は組めない」「36時間労働を続けている。さらに負担が増えれば医師たちは辞め、病院がなくなる」といった実態報告があり、「開業医の先生方のご協力をお願いしたい」との要望も出た。
 各消防は、受入病院探しに時間がかかっていることを説明。搬送した救急患者の50%前後が軽症、30%前後が中等症であることも報告した。
 入院の必要がない軽症患者が多すぎるために各病院がパンク状態となり、入院が必要な患者や重篤患者をしっかりと診ることができなくなっているのが県央の救急の現状。草野会長は「(入院不要な)一次患者は診療所で診る、それ以外の患者は診療所から各病院に振り分けるようにしたい。診療所がファーストタッチ機能を持てば、病院は(入院が必要な)二次患者に専念し、当番科目の調整などの病院と病院の連携も進めやすくなる」、古川伸夫燕市医師会副会長も「開業医がどこまで一次救急にかかわっていけるか、診療時間の延長も含めて年次的に考えなくてはならない」と指摘した。
 この日の協議の結果、新たな応急診療所は「通常診療時間外の医療機関のひとつ」にとどまらず、「救急患者をひとまず受け入れて軽症患者を治療、それ以外は専門当直医のいる病院に振り分ける初期救急医療機関」を目指すことになった。
 問題点を明確にし、解決策を示し、全体をその方向に導く。見事なものだ。
 一方、政治が本職の各首長。医師会が県央の救急医療のために力を合わせているのに対し、行政側はいまだに足並みをそろえられないでいる。加茂市は検討会に不参加。小池清彦加茂市長は「県央への救命救急センター設置が優先」との考え方から参加を断ったというが、これまでの協議でセンターと診療所は役割が違うこと、またどちらも県央に必要であることが明確になった。そろそろ首長たちも「政治手腕」を発揮し、県央の救急医療の再構築のために連携すべきではないだろうか。(スキップビート68 1月6日付け三条新聞)