総合窓口「お客様係」 問題は人材育成だが~100点でなくていいから
三条市は4月から本庁に市民総合窓口を設置する。いわば「お客様係」となるフロアマネージャーも配置する予定で、市役所を訪れた市民が「どこに行けばよいのか分からない」といった事態は大幅に減る。
市役所が行っている窓口業務は全部で306種類あり、現在は各課に分散している。子どもが生まれた場合、市民は市民課に出生届を、社会福祉課に児童手当、都市計画課に誕生祝樹を申請し、国保加入者はさらに保険年金課国保係に出産育児一時金を、同課医療係に乳児医療費助成を申請しなければならない。出生関係はまだ窓口5か所を回るだけで済むが、死亡の場合、本人の年齢などによってさらに煩雑な手続きが必要になる。
こうした不便を解消するために総合窓口を設置するもので、目指す姿は「便利」「分かりやすい」「やさしい」。取り扱い件数で全体の94%を占める212種類の業務を本庁低層棟2階ロビー周辺に設置する窓口で取り扱う。出生や死亡、婚姻、転入出、子育て、医療、高齢福祉、障がい者福祉などに関する手続きは、市民が各課を回らずとも総合窓口一か所で事足りるようになる。
総合窓口のカウンターには受付番号の発券機も設置、事務処理の効率化を図るとともにプライバシーを考慮し、申請者の名前を呼び出すことはやめる。
ロビーにはフロアマネージャーを配置。各窓口への案内役を務めるほか、申請書の記載方法が分からないといった来庁者をサポートする。
確定申告時に大会議室などに特別受付を設置している税の申告や、個々の事情が異なる身体障害者手帳、療育手帳の交付などは、総合窓口に移すとかえって待ち時間が長くなるといったサービス低下をきたすため、引き続き担当課の窓口で行うが、これらの申請も総合窓口を訪ねれば、フロアマネージャーが担当窓口まで案内する。
こうしたサービスは仕組みも大事だが、より大切なのは人材。市では1月から職員研修を始めているが、212種類の窓口業務に精通し、作業をスピーディに進めつつ来庁者に好印象を持たれる応対ができる職員の育成には時間がかかる。
総合窓口の設置時期を先送りし、研修期間をたっぷりと設け、万全の体制で新サービスを始めたほうが批判は浴びにくい。しかし、その間も来庁者は各課窓口を回り続けなければならない。百点満点を目指して慎重の上にも慎重に物事を進めるのが従来のお役所仕事だった。だからサービス開始が遅くなる。満点は取れなくても落第点にはならない、80点は見込めるという状況なら、より早く市民にサービスを提供し、提供しながら改善に努めて85点、90点と点数アップを目指す行政の方が、時代に合っているのではないだろうか。総合窓口の設置を黄金連休や盆休みの後ではなく、あえて年度当初の4月1日とした背景には、こうした考え方もある。
なお窓口業務の統合と、「面倒な話はうちではなくてあっちの課で」という責任逃れのたらいまわしは別問題。こちらはこちらで別途、解消に努めなければならない。(スキップビート69 1月12日付け三条新聞)