夕方5時にはウェルナーの『野ばら』 季節ごとに変えては?
三条市内では毎日午後5時になると同報系防災行政無線のスピーカーから、穏やかで優しいメロディーが流れる。クラシックファンにはお馴染みの、ウェルナーの「野ばら」という曲なのだそうだ。
同報系防災行政無線の屋外スピーカーは市内179か所に設置してある。7・13水害の教訓を踏まえて16、17年度の2か年で放送設備やFM緊急割り込み放送システムなどを整備した。費用は4億7250万円。
「野ばら」の定時放送を始めたのはことし6月。緊急時に役立たないようでは困るので設備の日常点検という意味があるほか、子どもたちに帰宅時間が近付いたことを知らせる意味もある。
この放送システムには、「野ばら」やドボルザーク「家路」などのクラシックから「故郷」「夕焼け小焼け」などの日本の名曲、「イエスタディ」「恋は水色」などのポップスまで8曲が、あらかじめプログラムされている。市では曲調のほか、演奏時間が約40秒と適度な長さのため8曲のなかから「野ばら」に決めた。
ちなみに「野ばら」と言えばシューベルトも有名。ゲーテの詩を近藤朔風が訳した「童は見たり野中のば~ら」の歌詞からシューベルトの「野ばら」を思い浮かべる人も多い。このゲーテの詩にはシューベルト、ウェルナーのほか、ベートーベン、シューマン、ブラームス、ライヒャルトなど数多くの作曲家が曲を付けていて、現在、分かっているだけで150曲以上もあるのだという。曲がたくさんあるのだから歌詞もと「裏金見たり野中のば~か」といった旧橋本派の替え歌や、「童もビビる背中のば~ら」といった暴力団関係者の替え歌などを作り始めると、収拾が付かなくなるからやめておく。
屋外スピーカーでの放送は、近くはうるさく、遠方は聞こえないことが弱点。定時放送を始めた当初、スピーカーのすぐ近くの住民から「うるさい」といった苦情が市役所に相次いだ。
一方で「子どもの帰宅時間の目安になって安心」「畑仕事の最中でも時間が分かって便利」といった声も届いた。近所の人には日常点検が必要であることなどを説明し、なんとか理解を得た。
さて「野ばら」が定時に流れるようになって約半年。「いい曲だけど、そろそろ飽きてきた。季節によって曲を変えたりできないのか」との声も出始めている。八曲も入っているのだから変えることは簡単だ。曲で四季の移り変わりを表すのもしゃれているが、市は「せっかく定着してきたのに、いま変えるのはいかがなものか。他の曲は演奏時間が長すぎたり短すぎたりする」と消極的だ。
行政は何事も一度決めたことを変えるのは難しい。(スキップビート65 11月17日付け三条新聞)