全国的に増加~飛び込み出産 出産までの無料検診三条市は2回
妊婦検診を一度も受けないまま陣痛を迎え、救急車で産婦人科に運び込まれる「飛び込み出産」が全国的に増えつつあるという。
神奈川県産科婦人科医会によると、同県内8つの基幹病院が受け付けた飛び込み出産は平成15年の20件から年々増加。昨年は44件、ことしは4月までの4か月間ですでに30件を超えたという。
飛び込み出産の場合、医師は妊婦や胎児の健康状態を把握しにくい。リスクが高いこともあって受け入れを断る産婦人科も多い。昨年8月、19の病院に受け入れを断られて死亡した奈良県の妊婦も、かかりつけ医のいない飛び込み出産だった。
三条市消防本部によると、いまのところ三条市民から飛び込み出産の搬送依頼はない。ただ昨年10月、見附市の30代の女性が三条市内の駐車場の車中から携帯電話で「産婦人科に連れて行ってほしい」と119番通報、隊員が到着するとすでに出産後だったため、その場で応急処置をしたうえで母子を産婦人科に搬送した。この女性は妊婦検診を一度も受けていなかった。
妊婦検診は、妊娠判定後から妊娠23週までは4週間に1回、35週までは2週間に1回、分娩までは1週間に1回ぐらいの頻度で検診を受けるのが一般的。受診総数は13回から14回ほどとなる。
1回当たりの自己負担額は、検査の内容にもよるが6000円前後。飛び込み出産が増えつつあるのは、これら費用の問題がある。また妊娠を家族などに隠している場合もある。なかには出産を軽く考え、勝手に検診不要と判断しているケースもあるという。
飛び込み出産を防ぐためには適切な広報とともに、環境整備も必要だ。
厚労省は妊婦検診を5回程度、無料とするよう各自治体に求めている。その費用は地方交付税のなかで国が負担しているというが、交付税に色は付いていない。交付税のなかのいくらが妊婦検診分なのかは分からないようになっている。
三条市の無料妊婦検診は2回。胎内市、田上町などとともに県内35市町村で最低ランクだ。最多は糸魚川市の15回。妊婦検診のほぼ全部を公費負担していることになる。新潟市や長岡市、燕市、加茂市などは5回、魚沼市などは4回、見附市などは3回だ。
三条市の公費負担額は、現在の無料2回だと年間1100万円ほど。これを5回に増やすと約1500万円増の2600万円ほどとなる。
国定市長が掲げる6つの重点政策のひとつが「子育て環境の充実」。妊婦の経済負担を軽くすることも子育て環境の充実のひとつにはなる。いくら財政が厳しいからといって「県内最低ランク」のままでいいのかどうか。これから始まる来年度予算編成で注視しなければならない。(スキップビート64 10月26日付け三条新聞)