熟年離婚が激増するはずが・・・ 鵜呑みにできない衝撃予測
世の中が複雑になると専門家の予測や分析が重宝される。参考になるものもあるが、マスコミ受けを狙った衝撃的な予測は鵜呑みにできない。
「離婚時の年金分割制度が始まる平成19年4月から熟年離婚が激増する」。16年の年金法改正後、熟年離婚をテーマにしたドラマのヒットなどもあり、ワイドショーなどで専門家たちが盛んに取り上げてきた。
この制度は、厚生年金が対象。ことし4月以降に離婚する場合、過去の婚姻期間に支払った保険料に対応する受給権を最大5割まで分割できるようになった。「18年の離婚が少ないのは嵐の前の静けさ。基礎年金に厚生年金の半額が加われば、女性は一人で暮らしていける。あなたの奥さんも年金分割ができる時期を待っているかもしれない」などと、したり顔で解説する専門家もいれば、団塊世代の大量退職と合わせて「熟年離婚はもうひとつの2007年問題」などと決め付ける専門家もいた。
ことし4月から7月までの4か月間、三条市役所が受理した離婚届は49件。前年同期より15件、23%も少ない。年金分割による熟年離婚の激増という予測は、少なくとも三条市では外れている。
コンピューターの2001年問題もあった。コンピューターの誤作動によって電力供給をはじめとする都市機能が麻痺し、各国の軍事システムも狂い、大混乱が起きると予測、国民の不安をあおった専門家が多かった。三条市役所もこの年の年末年始には電算担当の職員が市役所に泊り込んでトラブルに備えた。結果的には何の障害も起きなかった。狼少年となった専門家の多くはしばらくテレビに出ず、無理やり引っ張り出された専門家は「万全の対策が功を奏した」とうそぶいた。
鳥インフルエンザ騒ぎもあった。人間への感染が瞬く間に世界中に広がり、6億人が死ぬと脅す専門家もいれば、中世のペストよりひどい事態が生ずると警告する専門家もいた。大騒ぎにはなったものの、日本で鳥インフルエンザに感染して死んだ人はいない。あえて犠牲者の範囲を広げれば死者は2人。鶏の発病後の対応が不適切だったと世間から袋叩きにあって自殺に追い込まれた京都の養鶏業夫婦だ。
ちなみ日本ではインフルエンザや肺炎で毎年10万人前後が死亡している。他のウイルス感染症でも多くの死者が出ているなか、鳥インフルエンザだけ取り上げて大騒ぎする専門家の狙いは、実は研究費の確保なのではないかとの見方もある。
注目を集めたいがためにわざとセンセーショナルな表現を使う専門家がいる反面、本物の危険に目をつぶり、権力に都合の良い解釈を導く御用学者もいる。例えば柏崎刈羽原発。近くの活断層を見落としたのか、過小評価したのか、あるいは知っていながら知らぬふりをしたのか。「理想的な地盤とは言えないが、原発を造れないほどのものではない」と分析した専門家はいま、少しは良心の呵責を感じているのだろうか。(スキップビート59 8月22日付け三条新聞)