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2007年08月23日

熟年離婚が激増するはずが・・・ 鵜呑みにできない衝撃予測

 世の中が複雑になると専門家の予測や分析が重宝される。参考になるものもあるが、マスコミ受けを狙った衝撃的な予測は鵜呑みにできない。
 「離婚時の年金分割制度が始まる平成19年4月から熟年離婚が激増する」。16年の年金法改正後、熟年離婚をテーマにしたドラマのヒットなどもあり、ワイドショーなどで専門家たちが盛んに取り上げてきた。
 この制度は、厚生年金が対象。ことし4月以降に離婚する場合、過去の婚姻期間に支払った保険料に対応する受給権を最大5割まで分割できるようになった。「18年の離婚が少ないのは嵐の前の静けさ。基礎年金に厚生年金の半額が加われば、女性は一人で暮らしていける。あなたの奥さんも年金分割ができる時期を待っているかもしれない」などと、したり顔で解説する専門家もいれば、団塊世代の大量退職と合わせて「熟年離婚はもうひとつの2007年問題」などと決め付ける専門家もいた。
 ことし4月から7月までの4か月間、三条市役所が受理した離婚届は49件。前年同期より15件、23%も少ない。年金分割による熟年離婚の激増という予測は、少なくとも三条市では外れている。
 コンピューターの2001年問題もあった。コンピューターの誤作動によって電力供給をはじめとする都市機能が麻痺し、各国の軍事システムも狂い、大混乱が起きると予測、国民の不安をあおった専門家が多かった。三条市役所もこの年の年末年始には電算担当の職員が市役所に泊り込んでトラブルに備えた。結果的には何の障害も起きなかった。狼少年となった専門家の多くはしばらくテレビに出ず、無理やり引っ張り出された専門家は「万全の対策が功を奏した」とうそぶいた。
 鳥インフルエンザ騒ぎもあった。人間への感染が瞬く間に世界中に広がり、6億人が死ぬと脅す専門家もいれば、中世のペストよりひどい事態が生ずると警告する専門家もいた。大騒ぎにはなったものの、日本で鳥インフルエンザに感染して死んだ人はいない。あえて犠牲者の範囲を広げれば死者は2人。鶏の発病後の対応が不適切だったと世間から袋叩きにあって自殺に追い込まれた京都の養鶏業夫婦だ。
 ちなみ日本ではインフルエンザや肺炎で毎年10万人前後が死亡している。他のウイルス感染症でも多くの死者が出ているなか、鳥インフルエンザだけ取り上げて大騒ぎする専門家の狙いは、実は研究費の確保なのではないかとの見方もある。
 注目を集めたいがためにわざとセンセーショナルな表現を使う専門家がいる反面、本物の危険に目をつぶり、権力に都合の良い解釈を導く御用学者もいる。例えば柏崎刈羽原発。近くの活断層を見落としたのか、過小評価したのか、あるいは知っていながら知らぬふりをしたのか。「理想的な地盤とは言えないが、原発を造れないほどのものではない」と分析した専門家はいま、少しは良心の呵責を感じているのだろうか。(スキップビート59 8月22日付け三条新聞)

2007年08月09日

「良識の府」は今、「タレントの府」

 参院選が終わった。年金や「政治とカネ」などが争点だったと言われているが、それは政党や候補の視点だ。多くの国民が感じていながら、選挙戦ではまったくと言っていいほど触れられなかったことがある。「参議院って本当に必要なの?」という点だ。
 今回の参院選でも各マスコミが世論調査を行った。どうせ経費をかけるなら「あなたはいまの参議院を必要だと思いますか」との1問も追加すればよかったのにと思う。圧倒的多数が「不要」と答えたのではないだろうか。
 国会議員には年間約2200万円の歳費に加え、文書通信交通滞在費1200万円、立法調査費780万円が支給されている。このほか政党助成金が1人当たり約4400万円、3人の公設秘書給与が約2000万円。これだけで1億円を超す。JRや航空会社などの特殊乗車券なども提供されている。
 参議院議員242人に1人1億円以上。ほかに事務局職員の人件費や議員宿舎などの経費も膨大だ。
 参議院はホームページで二院制の利点を「国民の様々な意見をできるだけ広く反映させることができる」「慎重に審議できる」「一方の行き過ぎを抑えたり、足りないところを補ったりできる」と説明している。強行採決が繰り返されているのに「慎重に審議」もない。
 2年前、郵政民営化法案を衆議院は可決、参議院は否決した。小泉内閣は参議院の表決結果を無視して衆議院を解散した。総選挙後は衆議院のみならず、参議院でも法案反対から賛成に寝返る議員が続出し、法案は可決された。総選挙の結果だけで物事を決めるのなら、参議院は何のためにあるのか。
 衆議院は内閣を不信任でき、首相も衆議院を解散できる。しかし首相は参議院を解散できない。参議院議員には政局に左右されず、6年間じっくりと、長期的な視野に立って国政の重要問題を審議してもらうためだ。
 かつて参議院は不偏不党の緑風会などによって「良識の府」としての機能を発揮していた。いまは「衆議院のカーボンコピー」を通り越し、「タレントの府」といった批判まである。
 今回の選挙戦では「参議院はこうあるべき」といった参議院改革論がほとんど聞かれなかった。年金問題などの陰に隠れてしまったが、国民の間で参議院不要論が消えたわけではない。
 「いっそ国政に関する直接選挙は衆議院に限り、参議院は各都道府県知事と少数の学識経験者で構成してはどうか。予算や憲法以外の法案審議は衆議院が担い、参議院は憲法など国の根幹にかかわることだけを審議すればいい。そうすれば衆愚政治を避け、地方分権も進む」といった意見もある。
 参議院で与野党が逆転したいまこそ、参議院のあり方を真剣に考えるチャンスなのではないだろうか。(スキップビート58 8月7日付け三条新聞)