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2007年07月29日

私立保育園と市立保育所

 三条市は現在24ある市立保育所・児童館のうち、9施設は市立のまま残し、他の15施設は年次計画を立てて民営化、あるいは統廃合することにしている。
 保育施設は大まかに言って2割弱の保護者負担と8割強の公費、つまり税金で運営している。18年度決算見込みでは幼児1人当たり101万円の経費がかかっているのに対し、保護者からの保育料は19万円。残りは国、県、市が負担している。
 市の負担は1人当たり平均53万円。これを市立保育所と私立保育園に分けてみると、市立の66万円に対して私立はわずか29万円。市立の市費負担は私立の2・2倍余に達している。
 原因の第一は人件費。保育士、調理師の正職員の給料、手当、共済費は1人当たり平均690万円。給与ベースが私立より高いうえに平均年齢も高いため、私立の2倍前後となっている。
 第二は定員割れ。私立の7施設はすべて定員を超過しており、充足率は平均114%となっている。市立は14施設が定員に満たず、平均充足率は87%。当然、効率も悪くなる。
 充足率は人気のバロメーターでもある。三竹保育所は比較的、保護者の評価の高い市立保育所だった。それ故に保護者間では民営化に慎重な意見も多かった。そうした施設でも近年、定員の90人を超えることはなく、昨年3月時点の幼児数も72二人だった。
 三竹保育所は昨年4月に民営化し、私立ひまわり保育園となった。保護者の評判が良いことから現在、幼児数は定員を超える91人となっている。四日町、新保両保育所を統合、民営化したきらきら保育園も人気が高く、定員100人に対して現在の幼児数は125人となっている。
 市費負担が半分以下で、保護者にも好評なのだから民営化を拒む理由はない。市では来年度は嘉坪川、21年度には三条、荻堀、22年度には西四日町、あいあい各保育所を民営化することにした。田島、一ノ門、川通、飯田、荒沢の五つの保育所も23年度以降、順次、民営化する。
 裏館、名下、中浦各保育所と大島児童館は、いずれも認可基準の幼児数60人を下回っているため、今後、統廃合を検討することにした。
 すべての施設を民営化するのではなく市立保育所も残す。行政との連携、地域の子育て支援拠点としての機能、障がい児保育への対応などのためで、地区のバランスも考慮して旭、保内、嵐南、鱈田、須頃、月岡、塚野目、千代が丘の各保育所と、福多、大和両保育所を統合する仮称中央保育所の計9施設は将来も市立のままとする。
 もっとも民営化を計画しても、受け皿となる社会福祉法人や財団法人、学校法人がいなければ絵に描いたモチで終わる。少子化が進むなか、どのくらいの法人が保育施設運営に名乗り出てくれるのか。名乗り出てもらうためにどのような条件を整備するかが今後の課題となる。(スキップビート57 7月27日付け三条新聞)

2007年07月23日

揺れる再開発ビル パルム④  華やかなオープンからわずか20年

 パルムでもっとも微妙な問題が、パルム1の地元権利者42人への対応だ。法的責任といった理屈だけでは割り切れないだけに、市も慎重に検討している。
 再開発事業施行時、対象区域の権利者は192人だった。代替地を求めて移転した人もいれば、権利を売却し、一時金を得て転出した人もいる。
 一時金の平均は1坪(3・3平方㍍)当たり約64万円だった。昭栄通り商店街に面した土地だけではない。奥まった土地も含めての平均だ。バブル期に加え、拒否者が一人でもいれば事業全体がストップするだけに、全員の理解を得られる金額算定となった。
 権利者は一時金を受け取るのか、権利を持ち続けるのか選択できた。パルム1に権利を持ち続けたのが42人。市が示した家賃収入予想額を考慮して判断した。
 当初の家賃単価は1坪当たり月額6400円。ところが早くも2年後には落ち始め、平成12年には3571円まで下がった。翌13年のイオン撤退後は固定資産税に回すのが精一杯となり、以後、地権者の手取りはゼロとなっている。
 これまでの家賃収入を合計すれば、一時金は上回る。しかしイオンの特例期間が終わる来年3月以降は固定資産税の負担が重くのしかかってくる。家賃収入が固定資産税を下回る状況だけに処分するのも難しい。地元権利者の大多数は市への権利譲渡を求めている。市が持ちかけた再開発事業に協力してくれた人たちだけに、対応が難しい。
 パルム問題は、イオンの権利、地元地権者の権利、立体駐車場整備への貸付金など様々な要素が絡み合っている。根幹は中心市街地の核施設がどうあるべきなのかという点だ。パルム1を商業ビルとして残すのか、オフィスや住居など他の用途の施設に転用するのか、あるいは解体してまったく別の土地利用を考えるのか。
 國定市長は6月定例会で「パルムは市街地再開発事業で建設した施設だが、法律に基づく権利変換は適法に処理されていることから、事業の実施、権利変換手続き自体に市には法的責任はないと考えている。また権利変換後における資産価値の保証、権利者の生活面の保証まで市が全面的に責任を負うものだはないというのが基本的スタンス」と答弁した。
 だからといって市は知らぬ顔はできない。市長は「しかしながら市街地再開発事業の継続性など都市政策の観点や、中心市街地の活性化を考えたときに、行政としてどういった対応をなすべきなのか検討しなければならない」とも答えている。
 華やかなオープンからわずか20年でこのような事態を迎えるとは、当時の関係者も想像していなかっただろう。市はパルム1をどう位置付けるのか、そのうえでイオン、地元地権者、テナント、立体駐車場整備㈱にどう対応するのかをできるだけ早く、遅くともことし九月までに決めることにしている。(スキップビート56 7月20日付け三条新聞)

2007年07月20日

揺れる再開発ビル パルム③  急きょ追加建設の立体駐車場

 三条市のパルムは、イオン(ジャスコ)や地元権利者との問題がある一方、パルム3を運営している立体駐車場整備㈱との問題も抱えている。
 イオンの出店条件を受け入れて当初計画を変更、急きょ追加建設した立体駐車場のパルム3。採算性の低い施設だけに市営や第三セクターも含めて運営形態を検討したが、売却しなければ事業費を捻出できない。最終的に立体駐車場整備㈱に売却、同社に経営を託す形を選んだ。
 立体駐車場整備㈱は建設省(現国土交通省)と日本開発銀行(現日本政策投資銀行)が主導し、全国各地の立体駐車場に対する融資窓口とするために昭和40年に設立された。建設省OBなども天下っているが、国は出資まではしていない。国策に乗ってスタートした民間企業という位置付けだ。
 同社はパルム3の立体駐車場部分を16億5868万2000円で取得した。大半は国の財政融資。不足の4億2300万円は三条市が貸し付けた。同社は自己資金なしで436台収容の立体駐車場を取得したわけだ。
 市からの貸付金は平成12年には4億300万円に、13年には3億9500万円に減額した。年度当初の4月に貸し付け、年度末の3月に返してもらうパターンを毎年繰り返しているため、貸付金額自体は13年以降は現在まで変わっていない。
 市は当初、抵当権を設定せずに貸し付けていた。設定したのは平成10年4月になってから。その時点では、すでに財政融資を保証していた金融機関が一番抵当を設定済みで、三条市は二番抵当に甘んじた。現在、一番抵当は破綻した金融機関の債権を受け継いだ整理回収機構(RCC)が有している。
 同社の経営が健全であれば二番抵当でも心配ないが、同社は子会社によるゴルフ場開発に失敗、巨額の負債を抱え込んでいる。仮にいま、同社が破綻すれば、パルム3の立体駐車場は一番抵当を有するRCCのものとなり、三条市が貸し付けている3億9500万円の回収は難しくなる。
 幸い、パルム3単体の経営は黒字を維持している。ことし3月期決算では売上高7100万円、償却前利益3977万円を確保した。RCCへの債務は1億数千万円。パルム3の利益をRCCへの返済に充てれば、何年後かはわからないにしろ、いずれは完済できる。完済後は三条市が一番抵当権者となる。
 とはいえパルム3の黒字もパルム1、2が営業していればこそ。パルム1が閉鎖されるようなことになれば、駐車場の利用客も減り、経営が成り立たなくなる。パルム3が共倒れとなれば、市は貸付金も失いかねない。(スキップビート55 7月18日付け三条新聞)

揺れる再開発ビル パルム②  難航の末キーテナントにジャスコ

 三条市昭栄地区市街地再開発事業の発端は、新保裏館線(南北道路)だった。
 新保裏館線は昭和38年に都市計画決定した市街地の南北軸。昭和45年の市役所移転時には、この路線の早期造成が反対派説得の条件にもなった。
 昭和51年7月、新保裏館線を含む五大事業の促進を公約に掲げた故滝沢賢太郎氏が市長に就任、事業が本格化する。とはいえ新保裏館線を造るだけでは昭栄通り商店街や住宅地を東西に分断することになる。線的な開発の街路事業でも、面的開発の区画整理事業でも、地元の理解は得られない。そこで浮上したのが立体的な開発を行う再開発事業だった。
 対象区域の地権者は192人に達した。売却や代替地を希望する人、再開発ビルへの権利変換を求める人など対応は様々だった。
 キーテナントの誘致も難航した。市が選定した候補は9社。うち説明会出席は4社。市が「床の買い取り、百貨店並みの店格、公共施設の提供、駐車場の応分の負担」などの条件を提示したのに対し、3社は辞退。残ったのはジャスコ1社だけだった。
 ジャスコは「立体駐車場の同時完成、店舗と駐車場の一体化、新保裏館線の早期完成」を出店の条件とした。
 市は当初、立体駐車場は2期以降の事業と考えていたが、ジャスコの条件を満たすため同時施行に切り替えた。
 予想外の問題も持ち上がった。当時、強い規制力を持っていた大規模小売店舗法の商業調整によりパルム1の店舗面積が当初計画の1万2250平方㍍から1万1000平方㍍に、キーテナント面積も9000平方㍍から8000平方㍍に縮小されたのだ。こうしたこともあって、市が狙っていた「百貨店並みの店格」、いわゆるジュニアデパート路線は開店後、間もなく変更、低価格路線に改められた。
 ジャスコの3点目の条件だった新保裏館線はなかなか進まない。13年後の撤退時、ジャスコは営業不振の主因のひとつに「店舗への交通アクセスが悪く、予定していた商圏からの客数拡大が図れない」と新保裏館線不通を挙げることになる。
 当時でも再開発事業は駅前など集客力の強い交通の要所で施行される例が多く、昭栄地区のような場所での施行は珍しかった。キーテナントも床は賃貸形式が多く、買い取りは異例。そのうえ床の権利を持ち分あん分共有方式としたことも異例だった。
 市はキーテナントに床を買い取ってもらわなければ事業資金を捻出できなかった。店舗はオープンフロア方式の方が使い勝手が良かったことに加え、地元権利者の権利を、ある人は価値の高い1階に、ある人は5階になどと区分することも難しかったため、共有方式にした。
 ジャスコも他の地域なら買い取りや共有方式は拒否した可能性が高い。三条は地元政治家との縁もあり、トップレベルの判断で共有方式での買い取りに応じたと見られている。結果的には、この特別な措置がジャスコ撤退後のパルム存続につながった。共有方式による買い取りでなければ、ジャスコは平成13年の撤退時点で権利を処分していただろう。(スキップビート54 7月16日付け三条新聞)

2007年07月13日

揺れる再開発ビル パルム①  開業20年にして大きな転機

 三条市の中心市街地にそびえるパルムが、来年3月の開業20年を前にして大きな転機を迎えている。最大手の所有権者であるイオン(ジャスコ)が認めてきた特例措置の協定期間終了に向け、イオン、地元権利者、立体駐車場経営者、三条市の四者それぞれの事情や思惑が絡み合っており、現時点では来年3月以降のパルム1の姿が予測できない状況となっている。
 昭和63年3月竣工の昭栄地区市街地再開発事業によって造られたパルム。6階建ての商業ビルであるパルム1、1、2階が店舗、3階から14階までがマンションのパルム2、5階建て立体駐車場と店舗のパルム3の3棟からなる。
 パルム1はイオンと地元権利者42人が共有している。持ち分比率は土地、建物ともにイオンが58・5%、地元権利者が41・5%。どの階のどの区画がだれの持ち分と区切ってある「区分所有方式」ではない。各所有者がどの部分も比率に応じた権利を持っている「持ち分あん分共有方式」となっている。
 パルム2、3はマンション、店舗、駐車場ともに区分所有方式。各区画の所有者ははっきりしている。
 パルム1の共有方式は、イオンがキーテナントとしてジャスコを出店していた当時はそれほど大きな問題にならなかった。イオンの持ち分を超える店舗面積分については、イオンが地元権利者に家賃を払ってきた。
 平成13年1月、ジャスコが撤退。開店から一度も黒字化できず、累損は60億円を超えた。残ったのは開店時に21億2700万円で三条市から取得したパルム1の58・5%の権利。これを売却しようにも、共有方式のために買い手はなかなか見つからない。結局、イオンは退店しても所有者ではあり続けた。
 後継店探しは難航した。パワーズフジミや三喜が出店した時期もあったが、ともに4年ほどで退店した。現在は1階にスーパーのマルイなど、2階にスポーツ用品のカムイ、3階に日用雑貨のセリアなど、5階にフィットネスクラブのヴァーテックスなど合計21店・機関が入居している。入居率は78・7%だが、当初と比べると家賃はかなり安くなっている。
 家賃収入は減っても管理費や固定資産税はかかる。通常なら家賃収入も所有権の比率に応じてイオンと地元権利者間で分配するところだが、それでは地元権利者は固定資産税すら払えなくなる。
 イオンは家賃収入について、まず共益費に、次いで地元権利者が負担すべき固定資産税や維持管理費に充てること、家賃収入がそれらを上回り、地元地権者の一定以上の利益が出た場合に限り、自社負担分の固定資産税に回すことを了承した。
 この結果、イオンは平成13年以降、所有権を持ちながら家賃収入は受け取っていない。年間1597万5000円(18年度)にのぼるイオン分の固定資産税はすべて自社で負担している。
 三条市の強い要請に応えての特例措置だ。三条市を立会人にイオンと、管理会社の三条昭栄開発が協定書を締結した。その協定期間が来年3月で満了する。更新の見込みは薄い。(スキップビート53 7月12日付け三条新聞)