民法772条 明治31年の施行時から109年間変わらない
離婚後300日以内に生まれた子の父親を前夫とする民法の規定が問題となった。法律の問題を国会が解決するのは立法府が機能している法治国家の話。日本は官僚の通達で片付けてしまった。
民法772条は、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定すると定めている。明治31年の民法施行時から変わっていない。
この間の109年で社会も科学も変わった。離婚や再婚が増え、早産でも元気に育つようになった。DNA鑑定も可能になった。厚労省によると平成17年に結婚した夫婦71万組のうち18万組、4組に1組以上は夫か妻、あるいは両方が再婚だ。法務省は離婚後300日以内に生まれる子は年間少なくとも2800人はいると推計している。
この子たちの父親を現夫とするには、前夫に嫡出否認の訴えを起こしてもらうなどの面倒な手続きが必要だ。前夫の協力がなければできない。その結果、戸籍のない子が増えているという。
こうした状況は国会でも取り上げられた。109年前に定めた民法の条文を変えるべきか、特例法を制定すべきかなどが議論された。
結論は、法改正も特例法制定もなし。立法府が法律に手をつけられないことを横目に、法務省は民事局長通達を出し、妊娠時期に関する医師の証明書を付ければ現夫の子として認めることにした。これによって1割程度の子は救われる。しかし他の離婚成立前の妊娠の扱いは従来通りのため、大半の戸籍のない子は依然、放置されたままだ。
国会が法律を変えないのに、行政府が官僚名の通達で法の運用を変えてしまう。おかしいと感じる方がおかしいのだろうか。官僚が作った法案を承認するだけで、議員立法のほとんどない国会は、立法府というより認法府と呼んだほうが実態に合っているのではないだろうか。
三条市では小学4年生だった少女を9年2か月にわたって監禁するという凄惨な事件が起きた。監禁致傷罪の最高刑は懲役十年。九年二か月にもわたる長期監禁に対して懲役がわずか十年では国民が納得しない。
検察は苦肉の策として被害額2500円の窃盗との併合罪を適用することとし、懲役15年を求刑した。裁判では併合罪の処理が争点となり一審の新潟地裁は懲役14年、東京高裁は懲役11年、最高裁は懲役14年の判決を下し、14年が確定した。
少女の青春を奪った代償は懲役14年でも軽すぎる。法の想定外の犯罪が起きたのなら、法の不備を正せばいい。その後も各地で長期監禁事件が起きている。三条市の事件発生から17年、発覚からでも7年が過ぎたが、刑法はいまだに改正されていない。(スキップビート48 5月31日付け三条新聞)