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2007年03月19日

お役所仕事が遅いわけ

 お役所仕事の欠点のひとつに「仕事が遅い」ことがある。慎重だからという理由だけではない。仕組みを変えなければ正せない面もある。
 行政は、首長が「これをやる」と決めても、すぐにはできない。何をやるにも予算議決や条例改正などの議会手続きが必要になる。
 三条市議会は3月、6月、9月、12月の年4回、定例会を開いている。3月定例会では市が1年間に行う業務を盛り込んだ当初予算を決める。年度途中で変更することになったり、新規に追加する事業、一定規模以上の工事の契約などは6月、9月、12月各定例会で予算の補正などを行う。
 当初予算への計上が間に合わなかった事業は、6月に補正予算の議決を得るまで取り組めない。6月に間に合わなければ9月、それも間に合わなければ12月の補正となる。3か月に1度しか、事業を変更したり追加する機会がない。
 民間では考えられないことだ。2月に新規受注した顧客に対し、3月は間に合わなかったので6月まで待ってくれと言うようなものだ。ジャストインタイムどころではない。企業なら、まず生き残れない。
 市役所の職員も、この3か月サイクルで仕事のペース配分を行っている。次の定例会への提案が間に合わないと分かれば「どうせ決定は次の次になるのだから」と仕事を急ごうとしない。政策的な新規事業などは「補正に馴染まないから来年度の当初予算に回そう」と、3か月どころか1年サイクルで行動する。ノロウイルスならぬ、ノロいウイルスに犯されたようになっている。
 例えば三条市は今年度、希望する児童が放課後も一定時間、小学校で過ごせるようにと児童クラブと放課後子ども教室を合体させた「三条版放課後子どもプラン」を7つの小学校で始めることにしている。地元ボランティアの協力が得られた三条小は6月1日から始めるが、井栗、南、西鱈田、須頃、大島、旭の6小学校は現在、地元と協議中。ボランティア協力が得られ次第、始めるとしている。
 実際には地元の了解を得ても、すぐには始められない。6月あるいは9月定例会で予算の補正や条例改正を行ってからとなる。
 小学校低学年生を持つ共働きの親は、1日も早い児童クラブなどの新設や拡充を願っている。こうした市民サービスの提供が定例会のサイクルのために遅れるようなことになれば、誰のための市政なのかと問われることになる。
 議会の招集権は市長にある。三条版放課後子どもプランに限らず、準備が整った事業は次の定例会など待たず、4月でも5月でも臨時会を開いてさっさと進めなければ変化の激しい時代についていけなくなる。
 市議選では全候補が「市民のために頑張る」と約束したのだ。市民サービス推進のための臨時会開催を嫌がる議員がいるわけがない。
 と、本会議の一般質問で訴えたら、先輩議員からやじを浴びせられた。壇上ではやじの中身まではよく聞こえなかったが、臨時会開催に否定的なやじだったのだそうだ。現状の役所仕事のペースに慣れきった市職員は内心、やじに拍手喝采だったのだろう。(スキップビート41 3月19日付け三条新聞)

2007年03月10日

キーワードは芽だしの年

 三条市3月定例会が2日から始まった。会期は22日までの21日間。国定市政が軌道に乗れるかどうかの試金石となる。
 国定市長にとっては昨年12月定例会、ことし1月臨時会に続き、今回が3回目の議会。過去2回は高橋前市長が編成した予算の補正、原案を作った総合計画の審議が中心で、いわば高橋市政の余勢を駆って乗り切ってきた。
 今回は国定市長が作成した19年度当初予算が中心議題。名実ともに国定市政のスタートとなる。
 初日の2日、市長は51分間にわたる施政方針演説を行った。キーワードは「芽だしの年」。芽だしとは①草木が芽を出すこと。また、その芽②物事の始まり。物事のきざし、萌芽(大辞泉)。合併から約2年。新しい三条市としての足場固めの時期を過ぎ、いよいよ成長に向けて芽を出していくとの決意を示している。
 芽にあたる具体的事業としては情報通信基盤整備、栄スマートインターチェンジ調査、新商品・新ビジネス展開支援、救急医療体制整備、教育制度等検討事業などがある。
 予算は「選択と集中」が編成方針の基本。経常経費はじめ公共下水道事業や農林土木、商工会議所補助金などを削る一方、市民要望の強い緊急内水対策や子育て支援施策、幹線道路整備費などを伸ばした。
 その結果、市債、つまり市の借金は前年度より17・8%も伸びた。通常なら「ばら撒き」の批判を浴びかねないが、そこは元総務官僚。地方財政のプロだけに合併特例債など有利な制度を使い、後年の負担が重くなりすぎないように計算している。
 元官僚といえども、あるいは元官僚だからこそか、市職員に対しては厳しい。高橋前市長も職員数削減など行革に力を入れてきたが、国定市長は現在、課長級から行っている昇任試験を係長級まで引き下げることにした。入庁して20年、可もなく不可もなく勤めれば係長になれる人事は終わり、公平公正な試験を経なければ係長や課長、部長になれないようにする。
 県に先駆けて職員を総合職と一般職に区分する複線型人事制度の導入も検討する。
 7日には大綱質疑、8日から12日にかけて一般質問を行った後、13日から16日まで常任委員会審査、最終日の22日に採決を行う。
 国定市長が初めて編成した予算を無傷で通せるかどうか。市長選挙のしこりが表面化すれば政局化し、芽だしどころか市民サービスにも影響が出かねない。逆に乗り切ることができれば改革路線を突き進むことができる。国定市政1期目で、今定例会がもっとも重要な議会と言っても過言ではない。(スキップビート40 3月7日付け三条新聞)

2007年03月05日

救急車ならぬ救鈍車

 「県央地域の救急医療体制のあり方に関する検討会」が発足する。救急診療所の拡充に向けて県央地域の全医師会と、加茂市を除く各市町村が4月から具体的な協議を始める。
 県央の救急医療体制の整備が緊急の課題であることは、本欄でも繰り返し取り上げてきた。患者を乗せた救急車が、搬送先の病院を探して立ち往生している現状、新潟市や長岡市なら助かるレベルの救急患者が県央では助からない現状をできるだけ早く改善しなければならない。
 課題のひとつが救命救急センターの設置。新潟市民病院や長岡日赤病院頼みの状態を解消しなければならないのだが、設置には莫大な費用がかかる。巨額の赤字を抱える県立加茂病院、吉田病院などとの調整も必要になる。実現までには時間がかかる。
 その間、救急車の立ち往生状態を放置していては救鈍車になってしまう。当面の対策として急がなければならないのが平日夜間や休日の救急診療所の拡充強化だ。
 当番医が救急患者を診察したうえで、在宅で間に合う患者はその場で治療、入院治療が必要な患者は地元の病院に、重篤患者は市民病院や日赤病院に搬送する仕組みを整えられれば、救急が救鈍にならずに済む。「軽度の患者まで連れてくる県央の救急車は断る」などと新潟、長岡のセンターに受け入れを拒絶されることもなくなる。
 県央地域の救急医療体制のあり方に関する検討会には三条、燕、加茂、見附南蒲、西蒲の5つの医師会が委員として参加する。行政側は三条、燕、見附、田上、弥彦の五市町村と県三条地域振興局がオブザーバーとして参加する。
 加茂市は現時点では参加を見合わせている。小池加茂市長は加茂病院の移転新築と同病院への救命救急センター併設を主張している。診療所拡充への取り組み参加は加茂病院の移転新築にマイナスと考えているようだ。ただ県央の他市町村や加茂市医師会が検討会を設置することを阻止しようとまではしていない。他市町村は住民の命にかかわる緊急課題でもあり、加茂市抜きでスタートすることにした。
 診療所に関して検討しなければならない事項は多い。診療科目、開設時間、医師をはじめとするスタッフの確保、診療所の位置、必要な施設設備、行政の支援策など。遅くとも19年度内に今後の方向を打ち出さないと、県央の救急医療体制整備はますます遅れることになる。
 ちなみに県内7つの二次医療圏域のうち、新潟、中越、上越、下越の四圏域にはすでに救命救急センターがある。魚沼でも協議が始まっており、計画すらないのは県央と佐渡だけだ。
 県は24四時間小児救急医療体制についても現在の長岡だけでなく、上越、柏崎地域も整備するため、19年度予算に4700万円を計上した。この件でも県央はおいてけぼりだ。知事がどこの地域の出身だったのか、忘れてしまいそうだ。(スキップビート39 3月2日付け三条新聞)