お役所仕事が遅いわけ
お役所仕事の欠点のひとつに「仕事が遅い」ことがある。慎重だからという理由だけではない。仕組みを変えなければ正せない面もある。
行政は、首長が「これをやる」と決めても、すぐにはできない。何をやるにも予算議決や条例改正などの議会手続きが必要になる。
三条市議会は3月、6月、9月、12月の年4回、定例会を開いている。3月定例会では市が1年間に行う業務を盛り込んだ当初予算を決める。年度途中で変更することになったり、新規に追加する事業、一定規模以上の工事の契約などは6月、9月、12月各定例会で予算の補正などを行う。
当初予算への計上が間に合わなかった事業は、6月に補正予算の議決を得るまで取り組めない。6月に間に合わなければ9月、それも間に合わなければ12月の補正となる。3か月に1度しか、事業を変更したり追加する機会がない。
民間では考えられないことだ。2月に新規受注した顧客に対し、3月は間に合わなかったので6月まで待ってくれと言うようなものだ。ジャストインタイムどころではない。企業なら、まず生き残れない。
市役所の職員も、この3か月サイクルで仕事のペース配分を行っている。次の定例会への提案が間に合わないと分かれば「どうせ決定は次の次になるのだから」と仕事を急ごうとしない。政策的な新規事業などは「補正に馴染まないから来年度の当初予算に回そう」と、3か月どころか1年サイクルで行動する。ノロウイルスならぬ、ノロいウイルスに犯されたようになっている。
例えば三条市は今年度、希望する児童が放課後も一定時間、小学校で過ごせるようにと児童クラブと放課後子ども教室を合体させた「三条版放課後子どもプラン」を7つの小学校で始めることにしている。地元ボランティアの協力が得られた三条小は6月1日から始めるが、井栗、南、西鱈田、須頃、大島、旭の6小学校は現在、地元と協議中。ボランティア協力が得られ次第、始めるとしている。
実際には地元の了解を得ても、すぐには始められない。6月あるいは9月定例会で予算の補正や条例改正を行ってからとなる。
小学校低学年生を持つ共働きの親は、1日も早い児童クラブなどの新設や拡充を願っている。こうした市民サービスの提供が定例会のサイクルのために遅れるようなことになれば、誰のための市政なのかと問われることになる。
議会の招集権は市長にある。三条版放課後子どもプランに限らず、準備が整った事業は次の定例会など待たず、4月でも5月でも臨時会を開いてさっさと進めなければ変化の激しい時代についていけなくなる。
市議選では全候補が「市民のために頑張る」と約束したのだ。市民サービス推進のための臨時会開催を嫌がる議員がいるわけがない。
と、本会議の一般質問で訴えたら、先輩議員からやじを浴びせられた。壇上ではやじの中身まではよく聞こえなかったが、臨時会開催に否定的なやじだったのだそうだ。現状の役所仕事のペースに慣れきった市職員は内心、やじに拍手喝采だったのだろう。(スキップビート41 3月19日付け三条新聞)