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2007年02月24日

ハード日程続く国定市長

 宮城県の東国原(そのまんま東)知事の多忙ぶりがワイドショーで強調されている。激務は東国原知事だけではない。他の首長も似たようなもので、三条市の国定勇人市長もハードな日々が続いている。
 国定市長の休日は、選挙直後はほとんどなく、ことしに入ってからも1月は正月休みを含めて3日間、2月も3日間にとどまっている。ほぼ10日に1日しか休めていない。
 休日が少ないのは歴代市長と同じだが、国定市長の場合、夜の会がやたらと多い。1月は18日間、2月は21日間、夜の会合が入っている。平日に限ればほぼ連日、朝から夜までスケジュールが詰まっている。
 夜の会合はふれあいトークや各種団体の新年会など。ふれあいトークは市民と市長が直接、市政や地域の課題などを話し合う場。選挙公約に各小学校区で年1回以上開くことを掲げた。三条市の小学校区は24。平均して月2回の開催で公約達成となるが、実際は1、2月だけで13回も開いている。市長自身ができるだけ早く、より多くの市民に市政の課題を理解してもらうとともに、市民の声を聞きたいと開催を急いでいるためだ。市が設定する小学校区単位の開催以外にも、団体申し込みがあれば出かけている。
 市側の一部には当初、ふれあいトークが地域への予算配分を求める陳情中心の会になりはしないかとの不安もあったようだが、市長は「しっかりした意見交換ができており、手応えを感じている」と喜んでいる。
 各種団体の新年会などは、招く側にとっては年1回だが、市長は1人。いくら若くても酒席が毎晩ではこたえるだろうが、選挙後間もないこともあって市長は断りきれないようだ。
 過密スケジュールにあっても、そこは行政のプロ。情報分析や意思決定が早いだけに、新年度予算編成などは順調に進めている。ただ、これから先は国定市政本来の業務に力点を移してもらわなければならない。
 過去の市長や他市町村長と、国定市長の最大の違いは何か。個人の能力だけなら、過去にもりっぱな市長はいた。他市にもいる。そのほとんどは、地元で生まれ育った人だ。国定市長はそうではない。「来たり者」などと言われて選挙戦は大変だったが、当選後は市長自身が「東京から人材を引き抜き、受け入れる、開かれたパワフルなまち三条市」の象徴となった。
 泉田知事によると、新潟県では子ども1人に対し、18歳となるまでに約1400万円の公費をつぎ込んでいるという。そうして育てた人材の多くが首都圏に移り住み、向こうで住民税を納めている。国定市長はその逆。東京が育てた人材を三条市が活用している。
 これから先、よそからどれだけ人や資本、技術、情報を呼び込めるかが地域の発展を左右する。国定市長には中央省庁の情報や支援策はもとより、国内外からの民間投資も呼び込んでもらわなければならない。地元に縛り付けておくわけにはいかない。時間を作り出しては県外を飛び回る市長であってほしい。(スキップビート38 2月22日付け三条新聞)

2007年02月19日

手口も巧妙、複雑になって

 「小学生のお子さんのお母さん、いらっしゃいますか?」といった電話が最近、やたらとかかってくる。
 「以前は文科省や県教委が各学校で行っていた進級にあたってのテストを、いまは私どもの会社が担っています。我が社は学校で行っているカラー印刷のテストも作っています。今回の進級テストはお子さんが1年間に学んだことが、どれだけ身についているかを確認する大事なものです。内容については地域ごとに説明に回りますので、ご都合の良い日を教えてください」という。
 強制なのかと聞くと「強制ではありませんが、この電話を差し上げた方は全員、受けられます」。本人や同じ学校の友だちに聞いてから連絡すると伝えると「いま申し込んで頂かないと受けられません」。
 断ると「あなたはお子さんの教育について興味がないんですか」などと説教じみたことまで言い出す。余計なお世話だ。
 学習教材のセールス電話もよく来る。無償で試供品を送るという。こちらの電話番号だけでなく、子どもの名前から学年、住所まで知っている。個人情報保護法が施行されて4年。事態は何も変わっていない。
 詐欺や詐欺まがい商法の手口は年々、巧妙になっている。ことし一1には三条市役所職員を名乗る男が電話で「税金を還付する」と偽り、金融機関のATMを言われた通りに操作するよう求め、金を騙し取ろうとする詐欺未遂事件が相次いだ。
 「料金未納訴訟最終通達書」なるはがきを送りつけ、「未納の消費料金」を支払うよう求める架空請求詐欺も後を絶たない。
 三条市商工課・消費相談窓口への相談件数は年々増えている。平成13年度は40件だったものが翌年から70件、78件、134件と急増。17年度も132件あった。
 相談内容は振り込め詐欺や架空請求詐欺に関するものがもっとも多く、訪問販売や通信販売、マルチ商法、電話勧誘、商品を一方的に送りつけて代金を請求するネガティブ・オプションなどの相談もあった。
 対応するのは市職員。研修は受けているものの専門家ではないため、手に負えない相談は県消費生活センターなどを紹介し、事件性の高いものは警察への相談を勧めている。
 県内では県のほか、新潟、長岡、上越、村上、佐渡の5市が独自の消費生活センターを設置し、専門相談員を配置している。そのためか相談件数は新潟市が6000件、長岡市が4000件、上越市が2000件を超えており、三条市とは桁が違っている。ちなみに県のセンターへの相談件数は1万1000件余となっている。
 三条市も独自のセンターを設置すべきとの意見もある。地元にあれば相談に行きやすいなどの理由からだが、実際の相談は大半が電話だ。県にあるのに、あえて金をかけて市に作る必要があるのかどうか。相談業務は現状の体制を維持し、むしろ最新の詐欺手口、被害状況などに関する広報を強化した方が効果的なのではないだろうか。(スキップビート37 2月18日付け三条新聞)

2007年02月10日

ネーミングライツ

 新潟スタジアム(ビッグスワン)の名前が来月から3年間、東北電力スタジアム、または東北電力ビッグスワンになる。
 施設などの名前に企業や商品などのブランド名を付ける権利をネーミングライツ(命名権)というのだそうだ。権利を獲得したスポンサーが施設管理者に命名権料を払って名前を付ける。
 新潟スタジアムの場合、県と東北電力が契約した。期間はことし3月11日から三年間、契約金額は年間1億2000万円。この間、スタジアムはこれまで通りアルビレックス新潟の本拠地として使われるほか、平成21年のトキめき新潟国体ではメーン会場となる。
 スポーツ大会などにスポンサー名を冠する形は以前から行われていたが、命名権ビジネスが盛んになったのは10年ほど前から。米大リーグ、シアトル・マリナーズの本拠地はキングドームから保険会社セーフコの名を冠したセーフコフィールドに変わった。米プロバスケットリーグ、ヒューストン・ロケッツの本拠地はトヨタセンターとなった。
 日本でも東京スタジアムが「味の素スタジアム」に、大阪ドームが「京セラドーム大阪」に変わるなど、ネーミングライツが盛んになってきた。福岡ドームは「ヤフードーム」、グリーンスタジアム神戸は「ヤフーBBスタジアム」。ヤフー流行りでどっちがどっちか分かりにくい。
 映画館のルーブル丸の内は「サロンパスルーブル丸の内」。難解な映画を観ても肩がこりにくいような気になる。
 かつて「8時だョ!全員集合」の生放送が行われていた渋谷公会堂は「渋谷CCレモンホール」。カトちゃんが「ちょっとだけよ、あなたも好きねー」とCCレモンを注ぐ姿をイメージするのは、スポンサーのサントリーにとって迷惑だろうか。
 大分県立総合文化センターは「イイチコ総合文化センター」。行く度に焼酎が飲みたくなるかもしれない。
 さて三条市。いまのところ、ネーミングライツの活用は検討していない。しかし、どの施設を見ても毎年、赤字を出すのが当たり前になっている。平成17年度決算によると、三条市民球場は支出から収入を差し引いた赤字が4191万5000円だった。総合体育館は3172万5000円、市民プールは2523万3000円、グリーンスポーツセンターは1283万9000円の赤字。この4施設だけでも17年度の赤字額は1億1171万2000円に達した。
 これらの施設は指定管理者制度を導入し、民間の知恵と活力でより効率的な運営をしてもらう計画になっている。かといって安易に使用料を高くして市民サービスを低下させることもできない。赤字額を減らすために、ネーミングライツの活用も検討してはどうだろう。公共施設にスポンサー名を冠することに抵抗を感じる市民が多ければ無理だが、市民の税を有効に使うためと割り切れないものだろうか。
 もっとも「あの施設ではわが社のイメージダウンになる」とスポンサーのなり手がなければ元も子もないが。(スキップビート36 2月9日付け三条新聞)


2007年02月05日

図書館は官? 民?

 風呂やトイレに本を持ち込む習慣がやめられず、家族にあきれられている。国際政治や経済原論、純文学評論といったりっぱな本なら、まだ格好も付くのだが、大衆娯楽小説のようなものばかり読んでいるので一層、馬鹿にされる。
 その結果、本を買う小遣いをどんどん減らされてしまった。いまや買うのは風呂、トイレ用の文庫本のみ。単行本などは図書館から借りるよう厳命された。
 借りてみると図書館も結構、おもしろい。20巻前後の続き物を先に借りている人がいることもある。先行者も3冊、こちらも3冊ずつ借りている。こちらが追いつくと、先行者も開架コーナーの本の並び方で追われていることに気付いたようで、早めに返してくれたりする。返すペースで先行者について「この巻は夢中で読んだらしい」「この巻はだれてるな、頑張れオヤジ」などと想像することもできる。オヤジじゃないかもしれないけれど。
 予約しておけば「ご希望の本が返ってきましたよ」と連絡もくれるし、蔵書にない本ならリクエストも受け付ける。
 三条市立図書館は築23年とあって施設は古く、開架スペースや読書コーナーも狭い。ただ読書会の設置数19サークルは県内1位。蔵書数25万5000冊は県内3位だ。蔵書のなかには三条の図書館にしかない郷土資料も含まれている。
 栄、下田、嵐南、漢学の里各分館も含めた蔵書数は29万冊。市の人口10万7000人の約2・7倍の本がある。だからといって市民1人分、2・7冊を俺にくれと言ったり、10万7000字が掲載されている本のうち、1字は俺の分だから切り取らせてくれということはできない。あたり前だが。
 三条市は経営戦略プログラムで平成20年度、図書館の運営を指定管理者、つまり民間委託の方針を打ち出している。民間の方が開館時間の延長といったサービス向上を図りやすいからという。全国的にも運営を民間に委託した図書館が増えつつあるようだ。
 イギリスは自由主義、市場経済主義の本家だからといって大英博物館の運営を民間に委託したりはしない。人類の英知を集めた施設は、民によって効率を追及するよりも、公の責任において資料の収集管理に努めるべきだからだ。
 大英博物館と三条市立図書館ではだいぶ規模が違うが、図書館にもなくしてはならない郷土の文化や知恵が保存されている。
 図書館を民間委託しても、再販制度に守られている本の仕入れ価格が安くなることはない。図書貸し出しが増えても、もともと無料とあって受託業者の利益には結びつかない。官と民の違いは人件費くらいのもの。だとすれば、委託でなくとも管理職や正職員を減らしたり、臨時職員による対応を増やすことなどで人件費を抑えることもできる。
 経営戦略プログラム全体は理に適った計画なのだが、図書館についてはより慎重な検討が必要ではないだろうか。(スキップビート35 2月4日付け三条新聞)

2007年02月02日

教員獲得競争

 ことし4月、三条市の隣に政令指定都市が出現する。消費者、労働力、企業、人口。これらの吸引力をますます強める新潟市に対し、県央合併に失敗した三条市は防戦を強いられることになる。すでに小中学校の教員人事でも新潟市志向が強まっている。
 県内公立小中学校の教員人事はこれまですべて県教委が担ってきた。4月以降、政令市内の教員人事権は新潟市教委に移る。県内の教員が、県採用と新潟市採用に分かれる。
県と新潟市のどちらを希望するか。教員の人気は新潟市に偏りそうだ。
 理由は勤務地。県の場合、採用後6年の間に自宅から通勤困難なひら場とへき地に各1回、その後も49歳までの間に通勤困難地域に1回は勤務しなければならない。魚沼や岩船、佐渡などへの異動もある。
 新潟市採用なら異動先は原則、新潟市内に限られる。県との交流人事による研修目的のへき地勤務を受け入れたとしても、行くのは1回。本人が希望しない限り、2度も3度も単身赴任することはなくなる。
 現職教員に関しては、すでに新潟市の買い手市場といった様相を呈している。新潟市内の教員定数は3200人。これに対して自宅が新潟市内にある教員は3800人。新潟市在住者が希望するだけでも定数を600人超える。この先、新潟市内に住もうと考えている教員も含めれば、新潟市は選り取り見取り。現職のなかから優秀な教員を選んで採用できる。
 新規採用試験も、県と新潟市は別々に行うことになる。新潟市がその気になれば、給与も含めた教員の待遇を向上させ、県より優秀な人材を確保することも容易だ。
 新潟市は社会人の教員採用や、独自の評価シートを使った教員評価制度の導入なども検討している。優秀な教員を確保する競争において、県内で新潟市が突出した成果を挙げ、新潟市と県内他地域の教育レベルの差が開くような事態になったら大変だ。「子育てするなら新潟市」となり、県央から新潟市への人口流出に拍車がかかってしまう。企業進出も、社員の家族のことを考えれば新潟市が選ばれる。人口の一極集中がさらに加速することになる。
 政府の教育再生会議は、教員人事権を都道府県から市町村の教育委員会に委譲することを提言した。実現すれば、三条市も人材確保に向けた独自策を打ち出すことができる。現時点では、教員間の三条市の人気は低い。三条市への異動を希望する教員が少ないことは、関係者ならだれでも知っている。改善するのは簡単ではないが、新潟市の独り勝ちを指をくわえて見ているよりは、市民と知恵を出し合い、努力する方がいい。
 それまでは県教委に、優秀な人材を新潟市に採られすぎないよう頑張ってもらわなければならない。(スキップビート34 1月31日付け三条新聞)