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設計ミス

 日本の官僚は優秀だと言われている。優秀だからか、官僚が机上で作る施策には複雑なものが多い。もっと単純な、我々にも分かりやすいものにしてくれればありがたいのだが、官僚はそれでは満足できないらしい。福祉にしろ農政にしろ、年々、複雑になる。複雑になればなるほど、矛盾も生じやすくなる。
 昨年10月から老人保健制度が変わった。75歳以上の医療費の自己負担が1割、または3割となった。
 同一世帯に、市民税の課税所得が145万円以上の70歳以上がいる人は3割負担、いない人は1割負担だ。例えば90歳のA子さんとB子さんの場合。A子さんは70歳の息子夫婦と同居している。息子は年金などの課税所得が145万円以上のため、A子さんは医療費の3割を負担しなければならない。
 一方、孫夫婦と暮らしているB子さんは1割負担となる。A子さんとB子さんの受け取る年金が同じであっても、医療費負担は3倍も違う仕組みになっている。
 ここまでは表の話。実はA子さんも医療費負担を1割に減らす方法がある。息子夫婦と世帯を分離するのだ。同居であっても世帯分離すれば、「同一世帯に課税所得145万円以上の70歳以上」という対象から外れるため、医療費負担は1割に落ちる。
 1割、3割の負担割合だけでなく、1か月に支払う医療費の限度額や、入院時の食事代なども大幅に変わる。A子さんが月に何度も通院していたり、入院している場合、世帯分離した場合としない場合では自己負担額が何万円も違ってくる。
 介護保険の場合はさらにひどく、世帯構成の対象者は70歳以上に限らない。同一世帯に市民税を課税されている人がいるかどうかで65歳以上の保険料が変わる。本人が非課税の場合、現在、年額5万7700円の保険料が、世帯分離によって3万7500円や2万3100円に減ることもある。介護サービスを利用した場合の自己負担限度額なども変わってくる。
 世帯分離の手続きは簡単だ。三条市の場合、市役所市民課窓口に住民異動届を出せば済む。分離後もそれまでと同じように家族と同居していても分離は認められる。行政がいちいち各家族の生活実態まで調べることはできない。
 世帯分離は好ましいことではない。分離すれば国民健康保険の均等割り課税額が2倍になることもあり、すべてのケースで得になるとも言えない。みんながこれをやり始めれば介護保険料をまた値上げしなければならなくなる。
 ただ、こうした制度設計はいかがなものかと思う。まるで国が世帯分離を奨励しているようなものだ。
制度は単純が一番。「上手の手から水が漏れる」ということわざもある。優秀すぎる官僚が机上で制度をいじくり回すことが国民のためになるとは限らない。(スキップビート33 1月22日付け三条新聞)

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