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箱のない文化会館

 財政再建団体の指定を受けた北海道夕張市が悲惨な状態に陥っている。福祉や教育など市民サービスの低下に伴い、人口も減っている。三条市も昭和30年代に再建団体を経験した。同じ轍を踏んではならない。
 夕張市の財政破綻の一因は観光施設などの箱もの行政だ。三条市でも文化会館をはじめ、箱もの建設の要望は根強い。いす席500の中央公民館を1日2回、ほぼ満席にする三条市吹奏楽団のファミリーコンサートなどを見ると、三条市にも1000席クラスのホールが欲しいと思うが、市の財政状況も考えなくてはならない。
 昭和56年5月に開館した燕市文化会館の建設費は約9億6800万円。翌57年2月に開館した加茂文化会館の建設費は約19億円。箱ものが大変なのは建設費にとどまらず、開館後、毎年ランニングコストが必要になる点だ。今年度当初予算で見ると、文化会館運営費から使用料収入などを差し引いた一般財源の持ち出しは、燕が1271万8000円、加茂は6385万円。施設を造るには建設費にとどまらず、人件費を含めて毎年、このくらいの経費が必要になることも覚悟しなければならない。
 いっそ文化会館がないことを逆手にとった事業展開ができないものだろうか。文化会館には、地元団体が公演などに使う場合と、プロの公演を見る場合の二通りの使い方がある。地元用なら規模が大きすぎると使用料負担が重くなる。新潟県民会館大ホールのように1日30万円前後、他にマイク1本につき1150円などと備品費も必要になると、気軽には使えなくなる。地元用は新規に造るより、既存施設の使い勝手を改善することを考えた方が現実的だ。
 プロ用の場合、いくら素晴らしい施設を三条市に造ったとしても、ウィーンフィルやドミンゴ、カレーラス、パヴァロッティといった超一流はまず来ない。建設費に何十億円、さらに運営費に毎年何千万円もの市民の税金を使って年に数回、演歌歌手のコンサートを開くくらいなら、その何百分の一の費用で超一流を見る方法がある。こちらから見に出かければいいのだ。
 官民で実行委員会を組織し、市民要望を踏まえてことしの春はサントリーホールでオーケストラ、秋は国立劇場で歌舞伎、来年は東京オペラシティでジャズコンサートなどとスケジュールを決め、チケットを入手する。新幹線やバスなどの交通機関も確保する。交通費を全額公費で負担しても、文化会館の建設費や運営費と比べればはるかに安い。
 市民はチケット代だけで超一流を楽しめる。道中、クラシックや歌舞伎、ジャズなど各分野に詳しい実行委員がきょうの見所、聞き所を解説すれば楽しさは何倍にもなる。文化会館がなくても地域の文化レベルを引き上げることは可能だ。文化会館がないからこそ、できる事業もある。
 三条市では長岡市、県立近代美術館などまで市民を市のマイクロバスで送迎する「美術館めぐり」を行っている。これを市民参加で発展させれば「箱のない文化会館」も実現可能だ。
 財政が豊かになれば箱ものもいいが、それまではあの手この手の工夫が必要だ。(スキップビート27 12月8日付け三条新聞)

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