2018年09月28日

感動のスピーチ

 県央ことしの最優秀スピーチという賞があるとしたら、ぜひ候補にしてほしいスピーチがある。首長や議員の演説でも、社長の訓示でもない。県内初の義務教育学校としてことし4月に開校した三条市立大崎学園(渋谷徹也校長)が、今月1日に行った体育祭でのことだ。
 1年生から9年生まで814人が赤、青、黄の3軍に分かれ、応援合戦を含めて16種目を行った。
 児童生徒が一堂に会すると、7歳の1年生の小ささや可愛らしさ、15歳の9年生のりりしさ、たくましさが際立つ。
 前期児童は玉入れや綱引き、後期生徒は騎馬戦やタイヤ取りなどで力を競い、全校による大玉送りで結束力を示した。

 競技の部は青軍、パネルの部と応援の部は赤軍が優勝。初代の総合優勝は赤軍が勝ち取った。
 午後3時過ぎからの閉会式では表彰のあと、各軍団長があいさつした。
 黄軍の団長はマイクの前に立ったものの無言。涙をぬぐうようなしぐさも見せた。その状態が30秒ほど続くと保護者席などから「頑張れ!」の声援が次々と飛び、拍手も起きた。
 それでも団長は無言。
 1分が過ぎ、2分が過ぎた。
 全校の児童生徒、教職員、応援の保護者はじっと待っている。
 2分半が経ってようやく
 「何も賞を取ることができなくて、本当に申し訳ないけれど…。最初で最後の体育祭を、最高のメンバーとともにできたことが本当に良かったです。ありがとうございました」。
 7、8、9年生は共感の拍手、5、6年生は感動の、3、4年生は尊敬の拍手を送り、1、2年生もそれにならった。

 無言のまま待つ2分はかなり長い。それでも後期の教師たちは余計な助け舟を出したりせず、じっと見守っていてくれることを前期の児童や保護者、また小学校の指導方法に慣れた前期の教師たちにも教えてくれたスピーチだった。
 みんなに賞を与えればだれも傷付かないという間違った平等意識が教育なのではなく、負けた悔しさをかみしめ、それを乗り越えていく力を育てることこそが本当の教育であることも示したスピーチだった。

 大崎学園の体育祭は黄軍団長の名スピーチもあって、思い出深い初の全校規模イベントとなった。

2018年09月20日

遠くのうどんより近くのラーメン

 春、弥彦神社に参拝してお願いしたことがかなったので、遅ればせながらお礼参りに行った。神体山の弥彦山を背にした越後国一宮は美しい。周辺の森も含めた厳かな雰囲気と、清々しい空気が参拝者を俗世とは別の世界に連れて行ってくれる。
 弥彦村民はじめ県央の住民は近くに弥彦神社があるために、旧社格の高い他の有名神社に参拝しても、宗教的雰囲気に圧倒され、感動するということがあまりない。「建物は大きいけど、全体の雰囲気はこんなものか」で終わってしまうことが多い。野鳥の鳴き声なども含めて、弥彦神社の方が神秘的だからだ。

 JR弥彦駅から弥彦神社まで1キロ足らずの散策路も風情があって魅力的だ。
 まず5年前にリニューアルした駅舎が素晴らしい。『千と千尋の神隠し』に出てきそうな建物だ。
 通りには趣きのある食堂や菓子屋もあれば、洒落たガラス工芸品店などもある。小料理店の軒先などあちこちに樹齢数百年の古木が立っているかと思えば、その隣には「大人とび出し注意」という交通安全看板もある。
「子ども」の飛び出しを警告する看板はあちこちにあるが、「大人」の飛び出しに注意しろと呼び掛ける看板は初めて見た。浮かれて飛び出す観光客が多いのだろうか。

 今春、駅前通りにオープンしたおもてなし広場にも寄った。ソフトクリームは、味が濃いのに後味はさっぱりしていて美味しかった。満腹だったので酒粕うま味噌の豚串は食べることができなかった。次は腹を減らして行かなくてはならない。うどんの店もあった。弥彦村と、讃岐うどんのまち香川県琴平町が姉妹都市だからという。「遠くの親せきより近くの他人」というが、弥彦村は「近くの背油ラーメンより遠くのうどん」を選んだようだ。

 道路向かい側には16haに及ぶ弥彦公園もある。春のサクラ、秋のもみじ谷は絶景だ。これらは他の有名観光地に負けない観光資源だが、十分に整備されているとはいえない。電信柱は散策の邪魔になるし、電線は通りの美観を損ねている。観光客目線で言えば東京・浅草寺や長野・善行寺の門前のようにもっとさまざまな店があった方が楽しい。
 燕三条地場産業振興センターが出店するなど県央全体で弥彦の観光開発に協力できないものだろうか。弥彦がよりにぎわえば新幹線駅や高速道インター周辺もにぎわうのだから。

2018年08月20日

新たな吉田病院像を!

 県立吉田病院の基本計画づくりが進んでいる。県は今月22日に第3回整備基本計画策定委員会を開き、もっとも重要な診療機能と規模について検討する。
 財政当局にとって吉田病院は「慢性赤字のお荷物病院」だが、地域にとっては大切な「命と健康を守る砦」だ。昨年3月に検討会議がまとめた報告書は「病院機能・規模のスリム化を図ったうえで、持続可能な病院運営に取り組む必要がある」としている。吉田病院には以前、18の診療科があったが、脳神経外科と神経内科は休止、産婦人科は分娩休止となっている。存続させるにはさらにスリム化しなければならないという。

 報告書は「特色ある医療の提供」も求めている。
 同病院の特色といえば消化器系と人工透析治療、そして心身症、発達障害、不登校などの子どもの心の診療と、アレルギー外来も含めた小児慢性疾患診療だ。報告書はこれら小児科診療について「現行機能の維持」を求めているが、維持するだけで強化はしないのだろうか。

 日本全体がそうであるように、県央でも発達障害の疑いがある幼児や小中学生が増えている。三条市の小学校で教師が「発達障害の疑いがある」と申告した児童は全体の9%に達している。
 適切に対応するためには専門医が診断し、症状に応じて言語聴覚士や作業療法士などが指導していくことが必要だが、新潟市や長岡市の専門医には県内各地から受診希望者が集まっており、初診を申し込んでも3、4か月待たなければならなくなっている。
 吉田病院の小児科医は常勤医2人と、県立病院などを定年退職したエルダー医2人の計4人。
 小児科医を新たに確保するのは難しいが、たとえば吉田病院の小児科医の診察と指導のもと、言語聴覚士や作業療法士、看護師、保健師、保育士などのチームが発達障害児をフォローしていく「療育センター」を地元市町村が協力して併設すれば、吉田病院の存在意義も若い医師たちの注目度も変わってくるのではないだろうか。
 整備基本計画策定委員会には南波瑞夫燕市副市長や小林豊彦弥彦村長も委員として参加している。地元はもちろん、県央全体が待ち望む新しい吉田病院像を提案してくれることを期待したい。

2018年08月01日

終わった人  終わった映画

 「これ、見たい」と思う映画が年に何本かある。 思っているうちに上映が終わってしまっていることが多い。
 『終わった人』もそのひとつ。内館牧子氏が著した原作は読んだ。内館氏は横綱朝青龍の言動を厳しく批判した横綱審議委員として有名だが、本職は脚本家。代表作にNHK朝の連続テレビ小説『ひらり』や大河ドラマ『毛利元就』などがある。脚本出身の作家は小説でも読者を飽きさせない。講談社文庫の『終わった人』はあとがきを含めて532ページと厚いが、一晩で一気に読んでしまった。
 小説は「定年って生前葬だな」で始まる。主人公は昭和24年、岩手県盛岡市生まれ。東京大学法学部を卒業し、メガバンクに入行したエリートだ。40代で本部の部長職まで出世するが、役員を目前にライバルとの競争に敗れて子会社に出向。63歳で定年退職する。
 仕事一筋だったので趣味もなければ友人もいない。子育てを終えて美容師になった妻は、まだ仕事が忙しくて相手になってくれない。スポーツジムやカルチャースクールに通っても、元エリートのプライドが邪魔をして他のジジババとの他愛のない会話に馴染めない。自分は「終わった人」なのだと頭では分かっていても、仕事をすることへの思いを捨てきれずに「成仏」できない、何かで自分の存在意義を確認したいと切望している。そこにスポーツジムで出会った若いIT企業経営者から「顧問になってほしい」との誘いがあり・・・。
 人生の着地点や、そこに軟着陸することについて考えさせられる小説だ。
 映画化したと知って「見たい」と思った。ただ主人公を舘ひろしさんが演じ、「第二の人生と向き合っていく高齢者の実態とリアルな夫婦・家族の在り方を、心地よいユーモアと味わい深い人間ドラマが交差する、心温まるコメディ」として描いたという点にひっかかった。
 うーん、コメディか。原作は軟着陸に失敗してあがく男の心理を丹念に描いている。
 どうして日本の映画はテーマがシリアスになればなるほどコメディタッチにしようとするのだろう。山田洋次監督の影響だろうか。
 いつ行くか迷っているうちに上映期間が終わっていた。DVDで見るしかなくなってしまった。

2018年07月08日

心の「強靭化」

 全国各地で記録的な大雨が続き、甚大な被害が出ている。ニュースで決壊した河川や自宅の2階や屋根の上で救助を待つ人々のニュース映像を見ると、嫌でも五十嵐川の堤防が決壊した平成16年の7・13水害や23年の7・29水害を思い出す。
 災害は忘れないうちにやってくる。
 水害だけではない。先月は最大震度6弱を観測した大阪府北部地震が発生した。2年前は熊本地震が起き、4年前は御嶽山が噴火、7年前には東日本大震災が発生した。
 忘れる間もない。
 世界で発生した大地震の約1割は太平洋、ユーラシア、北米、フィリピン海という4つの巨大プレートの合流地点にある日本列島で起きているという。世界の活火山の約1割も日本にある。

 日本は自然災害も多いが、自然の恵みも多い。何年か前に放送されたNHK『日本列島~奇跡の大自然』によると、ヒマラヤ山脈やチベット高原によって起きる大気の大循環や、日本列島を囲む暖流と寒流などさまざまな条件が奇跡的に重なった結果、日本は世界一豊かで美しい森林、多様な動植物、世界一多い固有種が育まれたのだという。
 「ハイリスク、ハイリターン」は損失の危険が大きいほど、得られる収益も高いといった投資用語だが、日本列島も危険ではあるが恩恵も多いハイリスク、ハイリターンな自然環境となる。

 自然の猛威に対して、被害を最小限に抑えようと努力することは必要だが、科学技術によって災害をなくす、あるいは防ぐこともできるといった考え方は人間の幻想であり、思い上がりなのだろう。
 海や山、川は人間に大きな恵みを与えてくれるが、時に荒ぶる。防波堤や堤防で抑えられる程度の暴れ方のときもあれば、それでは収まらないときもある。
 最新技術と莫大な予算で国土の「強靭化」を進めても、東日本大震災のときのような暴れ方をされたら、人間は逃げるしかない。

 いざというときは何もかも捨てて逃げる、そのための覚悟と準備をしておく。
 災害が落ち着いたら、失った財産を少しでも奪い返すべく、自然の恵みを享受する。
 そういった気持ちの強靭化も必要なのではないだろうか。

2018年07月05日

発達障害を助長するもの

 自閉症スペクトラムやADHD(注意欠陥・多動性)などの発達障害をはじめ、知的や身体などの障害を持つ児童が増えている。
 特別な支援が必要と思われる児童の割合は全国的には6%程度だが、三条市はそれを大幅に上回る9
%に達している。
 教員が判断した数値であって専門医の診断結果ではないとはいえ、なぜ特別な支援が必要と思われる児童が多いのか。三条市教育委員会は見落としによって対応が遅れることがないよう、可能性のある児童も含めているからだとしている。

 先日、三条市が開いた発達応援講演会には教員や保育士、発達障害児の保護者など約200人が参加。新潟市江南区、発達クリニックぱすてるの東條恵院長から自閉症スペクトラム障害やADHDの症状や対策を聴いた。
 印象的だったのが発達障害を助長するものが「四角い窓などの電子デバイス(メディア)」と「虐待手法の子育て」という指摘だ。

 「四角い窓」はテレビやパソコン、スマートフォン、ゲーム機などのことだ。
 テレビやスマホに夢中になった子どもは「親よりも面白いのは画面なり」になってしまう。
 そうなってからテレビやスマホを取り上げようとすると「四角い窓切って切られる親子の絆」になる。
 東條院長は「ノーテレビ日週月のお試しを!」と、まずは1日、それができたら次は1週間、さらには1か月と徐々にテレビ離れを進めるよう呼び掛けた。

 「虐待手法の子育て」とは、ほめずに怒ってばかりいて、ときには手も出る子育て方法のこと。
 包丁を手に「殺す!」と叫んでいたADHDの五歳児の親が虐待手法の子育てを止めたところ、3か月後には反抗的態度がなくなり、症状も改善されたという。
 自閉症の子がテレビ漬けと虐待手法で育てられると症状が悪化し、愛着障害にもなるという。
 大家族のなかで育てば母親だけでなく祖父や叔母、年齢の離れた姉などからも愛情を注がれる。核家族のいまは愛情障害が起きやすい環境になっているのだという。
 発達障害の保護者だけでなく、すべての親に聴いてほしい講演だった。

2018年07月01日

さらば、スポ根部活

 先日、三条市中学校体育連盟主催、三条市中学校体育大会の記事が三条新聞に載っていた。
 軟式野球の戦績欄を見て驚いた。「三条第二・大崎学園」とある。合同チームという意味だ。
 これまでにも大島中が他校と合同チームで出場したことはある。大島中は1学年1学級の小規模校だ。野球部員が少ないのも分かる。
 三条第二中や大崎学園は1学年3学級以上あり、生徒数も300人近い。そのほぼ半数が男子なのだから、最少9人の野球チームぐらい簡単に組めそうなものだが、それができなかったことになる。

 昨年9月の新人戦には三条第一中と大島中、第二中と第三中、第四中と大崎中、下田中と田上中が合同チームを作って出場した。単独で出場できたのは本成寺中と栄中だけだった。新人戦は3年生が引退した後に1、2年生だけでチームを編成するためだ。
ことしも1、2年生の野球部員が9人以上いるのは三条市内9つの中学校のうち第一中、本成寺中、栄中の3校だけだ。
第二中、第三中、第四中、大島中、大崎学園、下田中の6校は単独ではチームを組めないため、新人戦は合同チームで出場することになりそうだ。
合同チームが集まって練習するのは容易ではない。平日は単独練習、週末に合同練習となる。市教育委員会は平日も合同練習ができるようスクールバスの活用なども検討している。

 かつて男の子が好きなスポーツと言えば野球だった。多くの男の子が巨人や阪神などのスター選手に憧れた。
いま大谷翔平選手がいくら大リーグで活躍しても、スポーツ少年団の野球チームに入る子は増えない。中学校の野球部員はこの先、さらに減る可能性もある。
文科省はことし3月に策定した運動部活動のガイドラインで「週2日以上の休養日を設ける」「活動時間は平日は2時間、休業日は3時間程度とする」と定めた。「現在の運動部活動が、女子や障害のある生徒等も含めて生徒の潜在的なニーズに必ずしも応えられていないことを踏まえ、生徒の多様なニーズに応じた活動を行うことができる運動部を設置する」ことも求めている。季節ごとに異なるスポーツを行う活動、競技志向ではなく、レクレーションや体力づくりを目的とした活動などのことだ。
高校野球の甲子園大会に象徴される熱血スポ根ドラマ型部活動は変わりつつある。