2021年03月05日

ペンギンは助け合い、日本人は押し付け合う

 冷蔵庫内の温度は2度から5度、氷を作る冷凍庫でも氷点下18度ほどだ。
 南極の冬の平均気温はそれより低い氷点下20度で、最低記録は氷点下97・8度。
 人間なら数回呼吸しただけで肺から出血して死んでしまうほどの寒さだ。

 この極寒の地で暮らしているコウテイペンギンたちは、ハドリングという独特の寒さ対策を講じている。
 ブリザード(地吹雪)が吹き荒れるなか、数百羽、数千羽がまるでおしくらまんじゅうをしているかのように身を寄せ合う行動だ。
 ハドルの内側では外側では体感温度が10度以上も違うという。
 どのペンギンも防風役の、寒さ厳しい外側にいるのは嫌だろう。
 内側に入りたいはずだが、ペンギンたちが場所を争ってケンカすることはない。
 一番つらい風上のペンギンは、寒さに耐えられなくなるとハドルの横を回って風下に移動する。
 これで風上となった次のペンギンも、耐えられなくなると風下に回る。
 みんながそれを繰り返すので、どのペンギンも外側と内側を交互に担うことになる。

 ペンギンは嫌な役割を順に担っているが、人間はどうだろう。
 日米安保条約で日本には米軍が駐留している。
 その大半が沖縄県にいる。日本の国土面積のわずか0・6%しかない沖縄県内に、在日米軍基地の70・3%がある。
 このために沖縄県では米国の軍人軍属による犯罪がこれまでに6029件発生も発生した。
 うち580件は殺人や強盗、強姦などの凶悪犯だ。
 3年前には米兵が沖縄の女性を殺害して自殺、5年前には米軍属の男が女性を強姦したうえで殺害した。
 過去には小学生の少女が米兵3人に暴行されたこともある。
 一昨年の米軍普天間飛行場の辺野古移転の賛否を問う県民投票では71・7%が反対。
 賛成は19・0%だけだったが、政府はこの結果を無視している。
 見かねた米国のカリフォルニア州バークレー市議会が先月、辺野古基地建設に反対し、工事の即時中止を求める決議を可決したほどだ。

 ペンギンと違って日本では
 「沖縄ばかり大変な目に遭っているから今度はうちが米軍基地を引き受けよう」
 と手を挙げる都道府県はない。

2021年03月01日

デジタル化 あなたが言う?

 花角英世知事は2月定例会の所信表明(提案説明)で「デジタル社会の実現に向けた取り組み」を推進する決意を示した。
 国がデジタル社会を目指すなか、知事は「本県においてもデジタルトランスフォーメーションを進め、直面する多くの課題の解決や経済成長を実現し、一人一人がデジタル化の恩恵を享受できる社会を築いていくことが必要」と説き、
 「産業構造をより付加価値の高い構造へと転換していくためには、県内企業のデジタルトランスフォーメーションが喫緊の課題となります。新年度はデジタル化の必要性に関する企業トップの意識改革を金融機関や商工団体等と連携して呼びかけるとともに、デジタル技術導入に向けた課題の解決を伴走型で支援します」と述べた。

 デジタル化を進めると言いながら、知事や議場のひな壇に並ぶ幹部職員たちの手元には、分厚い書類が積まれていた。
 A4判の令和3年度予算説明書が686ページ、2年度補正予算説明書が132ページ、議案審議資料が490ページなど、議案関係だけで1500ページを超えた。
 厚さは約6・5㎝、重さ約3・3㎏。
 これに説明資料などを加えた大量の紙の束を手提げ袋や風呂敷に入れ、重そうに持ち歩いている部長もいた。
 昭和のころとまったく変わっていないアナログ的な風景。
 これで「企業トップの意識改革」を呼びかけ、「伴走型で支援」するという。
 
 まるで体形維持に無関心で運動もせず、食べたいだけ食べて太った人が「肥満解消は喫緊の課題。私があなたの体系のスリム化を支援します」と言っているようなものだ。
 漫才なら「お前が言うか」と突っ込みが入るところだが、幹部たちは笑いもせずに真面目な顔で知事の説明に聞き入っていた。

 新潟県はいまだに手数料などを収入証紙で徴収している。
 知事はようやく「手数料等のキャッシュレス決済を含む県の行政手続オンラインシステムを新たに構築」する方針を示し、「先端技術を活用して地域課題の解決に取り組む市町村を支援」すると述べた。
 支援する立場の県のデジタル化は、支援される市町村より進んでいるのだろうか。

2021年02月15日

同調圧力に屈しない青年

 「世間をお騒がせして申し訳ありません」と謝罪する人がいる。
 不祥事を詫びる政治家や経済人、芸能人、スポーツ選手などだ。
 違法行為やモラル違反を犯した場合だけではない。
 離婚や親子げんかといった家庭内のトラブルや、企業内の派閥争い、合併問題などが報じられたときも「世間にご迷惑をおかけしました」と詫びる。
 その人たちが世間に「騒いでくれ」と求めたわけではない。
 世間が勝手に騒いだだけなのに、騒いだ世間が悪いのではなく、騒がせた自分が悪かったと謝る。
 そうしなければ世間から非難を浴びる。
 いわゆる「世間体が悪い」ことになってしまうからだ。

 日本では、子どものころから世間と歩調を合わせるように求められる。
 小中学校では集団行動の和を乱してはならないと教えられる。
 遠足などで勝手な行動をしてはならない、お菓子ですら人と違ったものを持ってきてはならない。
 任意参加の部活動だけでなく、全員参加の運動会や学園祭でも「ワンチーム」が求められ、それに同調しないと「KY(空気が読めない)」「変人」と言われ、仲間外れにされる。

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長を辞任した森喜朗元首相(83)の問題発言の底流にあるのは、女性蔑視だけではない。
 メンバーの上下関係や会議の雰囲気、提案者に対する忖度などをわきまえずに発言してはならないという同調圧力がある。

 将棋の藤井聡太二冠(18)が地元の愛知県瀬戸市を走る予定だった東京五輪の聖火ランナーを辞退した。
 一昨年に依頼を引き受けたが、その後、東京五輪が一年延期となり、自身は将棋界八大タイトルのうち棋聖と王位の二冠を獲得した。
 ことしはタイトル防衛戦がある。
 「これまで以上に将棋に向き合う必要がある」と考え、昨年11月に瀬戸市に辞退することを伝えた。
 「日本人が一致結束し、みんなで東京五輪を成功させよう。協力しないのは非国民だ」といった同調圧力にもめげることなく、「自分はいま一心不乱に将棋に取り組むべき」と決意し、瀬戸市の慰留工作にも屈せず、辞退の方針を変えなかった藤井二段。
 改めてすごい青年と思う。

2021年01月30日

ティラミス アラミス うっかりミス

 政府が「世界一厳しい」と豪語する原子力発電所の新規制基準。
 いくら審査を厳しくし、最新の技術で安全対策を強化しても、運転に携わる人間がうっかりミスしてしまえば事故は防げない。
 昭和53年に東京電力福島第一原発で起きた日本で最初の臨界事故も、職員が戻り弁の操作をミスしたために制御棒が抜け落ち、発生した。
平成11年に茨城県東海村のJOCで発生、2人が死亡した臨界事故も、職員がマニュアルを守っていなかったために起きた。

国外でも、昭和54年の米国スリーマイル島原発炉心溶融事故は、運転員の判断ミスによって手動で非常用炉心冷却装置を停止させたことが過酷事故発生の一因となった。
昭和61年にソ連チェルノブイリ原発で発生した、福島第一原発事故と並ぶもっとも深刻なレベル7事故も、運転員が無許可で緊急停止ボタンを押したことや、実験のため故意に安全装置を解除していたことなどが原因とされている。

東京電力が再稼働を目指している柏崎刈羽原発で昨年9月、所員が他人のIDカードを使って中央制御室に不正入室していたことが明らかになった。
 安全管理の基本が守られていなかったわけだが、同社がこの事実を公表したのは4か月後の今月23日。
 報道されるまで地元の新潟県にも報告しなかった。
 同社は「核物質防護上の脆弱性が公になる恐れがあること、また、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律により」、なぜこのようなことが起きたのか詳細の公表を控えてきた。

 同社は柏崎刈羽原発7号機の安全対策工事は今月12日に完了したと発表、25日から住民説明会も開いているが、27日になって「7号機の安全対策工事の一部である、6、7号機中央制御室用の陽圧化空調機が保管されている区域のダンパーの設置工事について完了していない」と発表した。
6号機の工事として管理していたため見落としていたのだという。

原発事故は周辺住民の命や健康を危うくし、それまでとはまったく違う生活を強いる。
 「うっかりミス」で家族や地域、仕事や暮らしを奪われたらたまらない。

2021年01月25日

アウトドアブランドの聖地 県央

 新潟県は観光立県を目指している。
 観光立県推進条例なども作って国内外の誘客拡大を目指してきたが、新型コロナウイルスのために県内観光業は大打撃を受けている。
 昨シーズンは暖冬少雪に苦しんだスキー場。
 ことしは大雪でゲレンデは万全なのに、ウイルス禍で臨時休業に追い込まれたところももある。
 逆境下、県は観光客のリピート率向上施策を検討している。

 県央の出番だ。
 県央はアウトドアマニアにとって「聖地」となっている。
 有名メーカーがいくつもあり、カリスマもいるからだ。

 その代表がアウトドア用品の世界的人気ブランド、スノーピーク。
 「人生に、野遊びを」の提案と、製品の信頼性、魅力的なデザインなどによって各国で熱烈なファンを増やしてきた。
 三条市中野原の本社併設キャンプ場や直営店は季節を問わずスノーピークファンでにぎわっているが、近年はキャンプ用品に加え、アパレル、アーバンアウトドア、キャンピングオフィス、地方創生、グランピングなどにも事業分野を拡大している。

 キャプテンスタッグはハウスウエアなどを製造販売している三条市のパール金属が、使いやすさと購入しやすさを第一に考えて育て上げたアウトドア用品ブランド。
 バーベキューコンロから食器、テント、シュラフ、テーブル、チェア、自転車、カヌーなどまで、あらゆるアウトドア関連用品がそろっている。

 一方、ユニフレームは燕市の新越ワークスによる人気ブランド。バーベキューグリルやツーバーナー、焚き火台、調理器具セットなど、シンプルなデザインと高い耐久性、使いやすさがキャンパーから登山者まで幅広い層のアウトドア派に支持されている。

 三条市にはさらに日本で初めてハーケンを作り、いまも唯一の日本製ハーケンを作り続けているモチヅキ、アウトドア用品などのインターネットショップ「村の鍛冶屋」が好評の山谷産業、釣り具用品とアウトドア用品を製造販売するベルモントがある。

 アウトドアの聖地県央を巡礼し、そこで買った商品を県内のキャンプ場で使う。
 これこそ三密のない、ウイルス禍でも楽しめるレジャーではないだろうか。

2020年12月25日

知っているのに、知らんふり

 かつて結婚式では仲人や来賓が、どんな新郎新婦もほめちぎった。
 新郎は「仕事熱心で成績優秀」ということにされ、「明るく朗らかな性格で、いつも場を盛り上げてくれるので同僚や後輩からも大変好かれている」ことになった。
 営業職などの場合は「お客様からも絶大な信頼を寄せられており、わが社にはなくてはならない存在」ということにもなった。
 新婦は「愛嬌があってだれからも好かれる」か「控えめだが、さりげなく気配りができる」、もしくは「気品とやさしさに満ち溢れている」、あるいは「清楚さと教養をあわせ持っている」ことにされた。
 もちろん式に出席した新郎の友人たちは「さぼり癖があってネクラで、いつも上司に怒られ、部下から嫌われている」ことは知っているが口には出さなかった。
 新婦の家族も「無愛想で欲張りで気が利かない女」であることは承知しているが、黙って祝辞を聞いていた。
 式に出席している大半の人たちが、来賓あいさつを「そんなことはない」と思いながら、訂正しようとまではしなかった。

 似たようなことが全国レベルで起きている。
 吉川貴盛元農水相が22日、衆院議員を辞職した。
 「体調不良」を理由としているが、多くの国民が「そんなことはない」と思っている。
 農水相在任中に鶏卵業界に便宜を図った見返りに、鶏卵業者から大臣室などで500万円を受け取っていた疑いが強まり、東京地検特捜部が捜査に乗り出したため、議員を辞めざるを得なくなったことを知っている。
 甘利明元経済財政担当相が「睡眠障害」を理由に半年間にわたって国会を欠席したときも、多くの国民は都市再生機構(UR)に対する口利きで建設会社から金品を受け取っていたことが暴露されたために大臣を辞め、雲隠れしたことを知っていた。
 丸山穂高代議士が「適応障害」を理由に国会を長期欠席したときも、本当の原因は北方領土で酔っ払って失態をさらしたことだと知っていた。

 最近、結婚式では実態とかけ離れたあいさつが減り、無理にほめない自然体のスピーチが増えてきた。
 国会も早くそうなってほしいと思う。

2020年11月27日

スローライフ スロー待合室

 医療機関の待合室は、そこにいるだけで眠くなる。
 大きな病院と比べると小さな医院はより眠くなる。
 風邪などで体調を崩しているからだろうか。
 いや、インフルエンザの予防接種を受けに行ったときも眠くなった。体調とは関係がないようだ。
 待合室には人を眠くさせるような独特な仕掛けがあるのだろうか。

 待合室の雰囲気は医院によってかなり違う。
 ゆったりとした空間に、リラックスできる色調のソファーが置いてある待合室もあれば、パイプいすが並べてあるだけの待合室もある。
 絵画など芸術作品が飾られている待合室もあれば、食事などに関する注意が書いてある製薬会社提供のくたびれたポスターが何年も前から張られたままの待合室もある。

 雑誌が置いてある待合室もある。
 『文芸春秋』(文芸春秋)や『Pen』(CCCメディアハウス)などが一般的だが、『ビッグコミックオリジナル』(小学館)などがあると「先生もマンガを読むのだろうか」と想像し、『女性自身』(光文社)があれば「看護師さんもゴシップネタが好きなのかな」などと思う。
 『週刊実話』(日本ジャーナル出版)や『アサヒ芸能』(徳間書店)が置いてあったら面白そうだが、これまでその手の雑誌を待合室で見かけたことはない。

 いまは感染症予防のため、どの医院も雑誌を撤去、待合室も患者が間隔を開けて座るよう、ソファーやいすに×印などをつけている。
 そこに座らないでという意味だが、気付かず座るお年寄りもいる。
 受付時にはカウンターに並んで順番を待つ。
 自分の番が来てからバッグの中の財布を探し、財布の中にあるはずの受診カードと保険証を探し始める。
 なかなか見つからない。
 しばらくして「アッ、こっちの方らったて」と別の財布から保険証を出す。
 財布をふたつ持つのも個人の自由だ。
 受診後、ソファーで待っている間に財布を出しておいてもいいのに、呼ばれてカウンターに行ってから財布を探し始める。
 まあ、待合室で急ぐ必要はない。
 ゆっくりとした時間が流れているから、眠くなるのかもしれない。

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