2018年07月08日

心の「強靭化」

 全国各地で記録的な大雨が続き、甚大な被害が出ている。ニュースで決壊した河川や自宅の2階や屋根の上で救助を待つ人々のニュース映像を見ると、嫌でも五十嵐川の堤防が決壊した平成16年の7・13水害や23年の7・29水害を思い出す。
 災害は忘れないうちにやってくる。
 水害だけではない。先月は最大震度6弱を観測した大阪府北部地震が発生した。2年前は熊本地震が起き、4年前は御嶽山が噴火、7年前には東日本大震災が発生した。
 忘れる間もない。
 世界で発生した大地震の約1割は太平洋、ユーラシア、北米、フィリピン海という4つの巨大プレートの合流地点にある日本列島で起きているという。世界の活火山の約1割も日本にある。

 日本は自然災害も多いが、自然の恵みも多い。何年か前に放送されたNHK『日本列島~奇跡の大自然』によると、ヒマラヤ山脈やチベット高原によって起きる大気の大循環や、日本列島を囲む暖流と寒流などさまざまな条件が奇跡的に重なった結果、日本は世界一豊かで美しい森林、多様な動植物、世界一多い固有種が育まれたのだという。
 「ハイリスク、ハイリターン」は損失の危険が大きいほど、得られる収益も高いといった投資用語だが、日本列島も危険ではあるが恩恵も多いハイリスク、ハイリターンな自然環境となる。

 自然の猛威に対して、被害を最小限に抑えようと努力することは必要だが、科学技術によって災害をなくす、あるいは防ぐこともできるといった考え方は人間の幻想であり、思い上がりなのだろう。
 海や山、川は人間に大きな恵みを与えてくれるが、時に荒ぶる。防波堤や堤防で抑えられる程度の暴れ方のときもあれば、それでは収まらないときもある。
 最新技術と莫大な予算で国土の「強靭化」を進めても、東日本大震災のときのような暴れ方をされたら、人間は逃げるしかない。

 いざというときは何もかも捨てて逃げる、そのための覚悟と準備をしておく。
 災害が落ち着いたら、失った財産を少しでも奪い返すべく、自然の恵みを享受する。
 そういった気持ちの強靭化も必要なのではないだろうか。

2018年07月05日

発達障害を助長するもの

 自閉症スペクトラムやADHD(注意欠陥・多動性)などの発達障害をはじめ、知的や身体などの障害を持つ児童が増えている。
 特別な支援が必要と思われる児童の割合は全国的には6%程度だが、三条市はそれを大幅に上回る9
%に達している。
 教員が判断した数値であって専門医の診断結果ではないとはいえ、なぜ特別な支援が必要と思われる児童が多いのか。三条市教育委員会は見落としによって対応が遅れることがないよう、可能性のある児童も含めているからだとしている。

 先日、三条市が開いた発達応援講演会には教員や保育士、発達障害児の保護者など約200人が参加。新潟市江南区、発達クリニックぱすてるの東條恵院長から自閉症スペクトラム障害やADHDの症状や対策を聴いた。
 印象的だったのが発達障害を助長するものが「四角い窓などの電子デバイス(メディア)」と「虐待手法の子育て」という指摘だ。

 「四角い窓」はテレビやパソコン、スマートフォン、ゲーム機などのことだ。
 テレビやスマホに夢中になった子どもは「親よりも面白いのは画面なり」になってしまう。
 そうなってからテレビやスマホを取り上げようとすると「四角い窓切って切られる親子の絆」になる。
 東條院長は「ノーテレビ日週月のお試しを!」と、まずは1日、それができたら次は1週間、さらには1か月と徐々にテレビ離れを進めるよう呼び掛けた。

 「虐待手法の子育て」とは、ほめずに怒ってばかりいて、ときには手も出る子育て方法のこと。
 包丁を手に「殺す!」と叫んでいたADHDの五歳児の親が虐待手法の子育てを止めたところ、3か月後には反抗的態度がなくなり、症状も改善されたという。
 自閉症の子がテレビ漬けと虐待手法で育てられると症状が悪化し、愛着障害にもなるという。
 大家族のなかで育てば母親だけでなく祖父や叔母、年齢の離れた姉などからも愛情を注がれる。核家族のいまは愛情障害が起きやすい環境になっているのだという。
 発達障害の保護者だけでなく、すべての親に聴いてほしい講演だった。

2018年07月01日

さらば、スポ根部活

 先日、三条市中学校体育連盟主催、三条市中学校体育大会の記事が三条新聞に載っていた。
 軟式野球の戦績欄を見て驚いた。「三条第二・大崎学園」とある。合同チームという意味だ。
 これまでにも大島中が他校と合同チームで出場したことはある。大島中は1学年1学級の小規模校だ。野球部員が少ないのも分かる。
 三条第二中や大崎学園は1学年3学級以上あり、生徒数も300人近い。そのほぼ半数が男子なのだから、最少9人の野球チームぐらい簡単に組めそうなものだが、それができなかったことになる。

 昨年9月の新人戦には三条第一中と大島中、第二中と第三中、第四中と大崎中、下田中と田上中が合同チームを作って出場した。単独で出場できたのは本成寺中と栄中だけだった。新人戦は3年生が引退した後に1、2年生だけでチームを編成するためだ。
ことしも1、2年生の野球部員が9人以上いるのは三条市内9つの中学校のうち第一中、本成寺中、栄中の3校だけだ。
第二中、第三中、第四中、大島中、大崎学園、下田中の6校は単独ではチームを組めないため、新人戦は合同チームで出場することになりそうだ。
合同チームが集まって練習するのは容易ではない。平日は単独練習、週末に合同練習となる。市教育委員会は平日も合同練習ができるようスクールバスの活用なども検討している。

 かつて男の子が好きなスポーツと言えば野球だった。多くの男の子が巨人や阪神などのスター選手に憧れた。
いま大谷翔平選手がいくら大リーグで活躍しても、スポーツ少年団の野球チームに入る子は増えない。中学校の野球部員はこの先、さらに減る可能性もある。
文科省はことし3月に策定した運動部活動のガイドラインで「週2日以上の休養日を設ける」「活動時間は平日は2時間、休業日は3時間程度とする」と定めた。「現在の運動部活動が、女子や障害のある生徒等も含めて生徒の潜在的なニーズに必ずしも応えられていないことを踏まえ、生徒の多様なニーズに応じた活動を行うことができる運動部を設置する」ことも求めている。季節ごとに異なるスポーツを行う活動、競技志向ではなく、レクレーションや体力づくりを目的とした活動などのことだ。
高校野球の甲子園大会に象徴される熱血スポ根ドラマ型部活動は変わりつつある。

2018年06月19日

減反マインドコントロール

 「マインド」は心や意識、「コントロール」は統制や制御。「マインドコントロール」を直訳すると、心や意識を統制するという意味になる。
 試合前のスポーツ選手が平静を保ち、かつ集中力を高めるために自分自身の心理状態を調整するのもマインドコントロールなら、監禁事件などの犯人やカルト宗教などが恐怖心などを利用して他人を支配することもマインドコントロールと呼ばれている。
 オウム真理教が信者たちを地下鉄サリン事件や弁護士一家殺害事件などの冷酷で悪質な犯罪に駆り立てたことで有名になった。

 農家もマインドコントロールされているのではないだろうか。
 コメの生産調整のことだ。昭和45年の本格実施から昨年まで47年間にわたり、いわゆる減反政策が行われてきた。
 この間、「3、4割もの田んぼを休耕にさせられたら我々は食べていけない。なぜ自由にコメを作らせないのか」と怒る農家に対し、政府は「自由に作れば米価は暴落する」と言い続けてきた。
 減反しても米価は下がった。
 「話が違うではないか」と迫る農家に、政府は「減反をしなければ、もっと下がった。この程度の下落で済んでいるのは減反のお陰だ」と説明してきた。
 補助金と「米価暴落」の脅し。
 いわばアメとムチで農家を減反政策に従わせてきた。

 政府はことしから減反政策を止めた。
 生産数量目標の配分はせず、目標に従った主食用米の作付けに対する助成も廃止、コメの直接支払い交付金をなくした。
 残したのは大豆やそばなど転作作物への助成だけだ。
 50年近く「減反しなければ米価は暴落」と言われ続けてきた影響もあるのか、農業関係団体などは全国農業再生推進機構を設立し、国に代わって需給調整に努めることにした。
 各自治体も生産調整の「目標」ではなく、「目安」を作った。三条市は2年前と同じく田の59%でコメを生産、41%は減反するという「目安」を示した。
 守る、守らないは農家の自由。守らなくてもペナルティーはない。
 守らない農家もいるが、「米価が気になる」「売り先を見つける自信がない」といった理由で守っている農家も多い。47年間の歳月の重みだ。

2018年06月08日

私はこれで、、、仕事を辞めました

  たばこがやめられずに仕事を辞めた男性がいる。大阪府の職員だったAさん(49)だ。
 Aさんは勤務時間中でも1日に2、3回は無性にたばこが吸いたくなるため、席を離れた。
 府庁舎の敷地内は全面禁煙。府庁舎周辺の路上などでの喫煙も禁止されているため、Aさんは庁舎から150㍍ほど離れた民間ビルの喫煙室まで行ってたばこを吸っていた。
 この間、自席を離れるのは約15分。ことし3月、府庁に「勤務時間中に席を離れてたばこを吸いに行っている職員がいる」との通報が入った。Aさんのことだった。

 人事担当の聞き取り調査に対し、Aさんは「ストレスで吸いたくなったときに我慢できなかった」と話した。
 府はAさんがこの2年間でおよそ440回、合わせて100時間以上にわたり勤務時間中にたばこを吸うため職場を離れたと認定。地方公務員法の職務専念義務に違反したとし、4月16日付けで訓告処分とした。
 Aさんの職場はよりによって府民の健康増進を担う「健康医療部」だった。
 Aさんはこの日をもって依願退職した。

 2年で100時間以上というといかにも悪質な職場放棄のようだが、府が認定した事実は勤務日に1日1回およそ15分間、喫煙のために席を離れたにすぎない。
 大阪府は橋下徹知事時代の平成20年に庁舎や出先機関の敷地内を全面禁煙とし、職員の執務時間中の喫煙も禁止した。
 その結果、休憩時間になると庁舎周辺の路上でたばこを吸う職員が増えたため、通行人や近隣住民から苦情が続出。府は2年後の22年に庁舎周辺などの路上での喫煙も禁止した。
 職員の禁煙についても保健師が個別にサポートするなど、積極的に支援している。

 三条市役所は本庁舎の敷地内に3か所、喫煙所を設けている。
 たばこを吸うのは昼休みなどの休憩時間に限っている職員が多いが、我慢できずに執務時間中に吸っている職員もいる。
 同じ地方公務員でありながら執務中の喫煙が大阪府は職務専念義務に違反し、他は違反しないという判断でいいのかどうか。
 愛煙家は今後、ますます肩身が狭くなりそうだ。

2018年05月31日

公選法を変えない限り、投票率は上がらない

 新潟県知事選の投票率はどうなるだろう。
 候補者はそれぞれ来月10日の投開票に向けて県内を走り回っているが、投票率が大幅にアップする気配は、いまのところない。
告示から一週間が過ぎても「何の選挙?」という人が多い。
 知事選は平成になって今回が9回目。平成でもっとも投票率が高かったのは金子清、志苫裕、長崎明各氏が出馬した元年の79・07%で、70%を超えたのはこのときだけ。60%台も2回しかなく、16年以降は4、50%台が続いている。
2年前の前回は53・05%。今回も60%の壁は高い。

 県選挙管理委員会は「明日へ生かそう この一票」の看板を県庁などに掲げ、チラシやティッシュペーパーを配りながら県民に投票するよう呼び掛けているが、投票率アップに必要なのはキャンペーンより公職選挙法の改正だ。
 公選法は候補者を有権者から遠ざける、時代錯誤の規制だらけとなっている。
 まず運動期間。告示日前に「この候補者に投票を」などと呼びかける事前運動を禁じている。違反者は1年以下の禁錮または30万円以下の罰金に処せられ、選挙権も停止される。
 知名度のない新人が立候補を決意し、事前に自分がやりたいと思っている政策を訴え、支援を求めることも選挙違反。「ごく短い選挙期間にすべての有権者に自分の主張を伝えなさい」という現実離れした法律になっている。

 告示後のごく短い期間に主張を伝えるにしても、戸別訪問は禁止されている。
 各家庭を訪問して候補者を宣伝し、投票を依頼した者は、事前運動と同じく1年以下の禁錮または30万円以下の罰金となる。
 せめてビラを配って主張を伝えようとしても、候補者の名前や顔写真を載せた候補者ビラは枚数が制限されているうえ、個人演説会場内や候補者が街頭演説を行っている周辺での配布などに限られえる。ローラー作戦などによる全戸配布は認められていない。
 確認団体ビラは、枚数制限はないが、候補者の名前や写真を載せることができない。
 こんな規制があるから候補者の主張も人物像も有権者に伝わらず、伝わらないから投票率も上がらない。
 
 公選法を変えずに投票率が上がらないと嘆くのは、店の前の道路を通行止めにしておきながら「客がこない」とぼやいているようなものだ。

2018年05月16日

ごみの戸別収集

 所用で東京都八王子市に行って驚いた。朝、各家庭の玄関先にごみ袋が置いてあるのだ。
 町内を回ってみてもごみ集積所、いわゆるごみステーションがない。
 戸建て住宅に住んでいる人は、自宅前の道路に面した敷地内にごみ袋を置いている。
 マンションやアパートなど集合住宅に住んでいる人たちは、それぞれ集合住宅の管理者が敷地内に設置したごみ置き場にごみを出している。
 それを市が戸別に収集する。可燃ごみは毎週2回、容器包装プラスチックは毎週1回、不燃ごみや新聞、雑誌、ペットボトル、空き缶などの資源ごみは2週間に1回、午前8時半までに出すルールになっているという。
 八王子市や武蔵野市がごみステーションを廃止し、戸別収集に切り替えたのは平成16年。いまでは立川市、三鷹市、青梅市、府中市、調布市、町田市、日野市、品川区、台東区なども戸別収集を導入している。


 戸別収集の目的はごみの減量化だ。
 ごみステーションだと、町内のだれが出したごみか分からないため分別が徹底せず、マナーも悪くなりがちだ。
 自分のごみを自宅玄関先に出す戸別収集だと、可燃ごみの袋に不燃物を入れるようなルール違反をするわけにはいかなくなる。違反が分かれば収集されず、玄関先に置きっぱなしとなるためだ。
 生ごみの水分を絞ってから袋に入れる人、買い物をするときにごみが増えないよう不要な包装を断る人も増えるという。ごみステーションへのごみの出し方をめぐる住民トラブル、大量のごみの山を狙うカラスやネコの被害もなくなる。


 デメリットはコスト。業者が住宅を一軒ずつ回ってごみ袋を集めるため、ごみステーション方式より時間も費用もかかる。それを負担するのは住民となる。八王子市の有料ごみ袋は可燃ごみ、不燃ごみともに10ℓが18円、20ℓが37円、40ℓが75円。三条市の約1・8倍だ。安さとごみの減量化のどちらを選ぶか。ただ戸別収集には減量化だけでなく、住民サービス、とくにごみステーションまでごみを持ち運ぶのが大変な高齢者に対するサービス向上になる面もある。新潟には、雪のなかでの真冬のごみ出しという都内にはない試練もある。県央でも戸別収集の是非を検討すべきではないだろうか。