2020年08月24日

サメザメと思うこと

 オーストラリア南東部の海岸でサーフィンをしていた35歳の女性がサメに襲われた。
 右足をかまれた女性は一度、海中に引きずり込まれたが、なんとか自力で浮上、サーフボードにつかまった。
 近くでサーフィンをしていた夫は妻の異変に気付くとすぐに妻のサーフボードに飛び移り、妻の足をかんでいるサメを素手で殴った。
 サメは体長3mほどのホホジロザメだったという。
 夫がサメの目を狙って殴り続けると、サメが妻の足を離したため、二人はその場から逃げた。
 サメはサーフボードをかみながら沖に向かったという。
 女性はヘリコプターで病院に運ばれ、手術を受けた。大けがだったが、命に別状はなかった。
 夫は「彼女は子どもにとっては母であり、私にとってすべてだ。だから体が勝手に動いた。『あっちに行け』と怒鳴りながら目を狙って殴り続けた。だれもがやることをやっただけです」と話している。

 このニュースを聞いた妻が「この男性、すごいね~!勇気もあるし、力も強い。言うこともカッコいい」とほめるのは分かる。
 体長3mのサメに立ち向かって妻を助け出したのは確かにすごい。
 でも、なんでほめるだけでやめず、「うちの夫には絶対に無理。もし私がサメに襲われたら夫は自分だけ先に逃げ出すか、怖すぎてその場に固まってしまい、ボーとしているうちに二人とも食べられてしまうかだなぁ」などと言うのだろう。どうしてそんな経験、したこともないのに「こうなる!」と決めつけるのだろう。
 自分の夫だって、いざとなれば、体を張って妻を守るかもしれないではないか。
 というか、いざとなれば妻がサメを殴り、蹴り、かみついて追い払うことになるかもしれないではないか。
 サメだって、かみたくなる足と、そうでない足があるかもしれないではないか。

 オーストラリアや米国では毎年何人ものサーファーがサメに襲われている。
 犠牲者が出てもビーチが閉鎖されるのはその直後だけで、すぐに再開される。
 同じ場所でサメに襲われても、それは自己責任。
 日本のように海水浴場の管理責任が問われることはないようだ。

2020年08月12日

盆 煩 Born

 徳の高い僧侶は新型コロナウイルスに感染しない、ウイルスの方が逃げていく、などということはない。
 偉いお坊さんだって檀家と同じように感染予防に努めている。
 盆参りで檀家宅を訪ねた奈良県の僧侶は、檀家が用意してくれたアルコールジェルで手を消毒した。その後、すぐにライターでロウソクに火を点けようとしたところ、手に残っていたアルコールに引火。手が炎に包まれ、必殺パンチを繰り出すアニメの主人公のようになってしまった。幸い、すぐに火を消せたので火傷はせず、手がヒリヒリする程度で済んだ。
 僧侶も檀家も、墓や仏壇にお参りするときはジェルタイプのアルコール消毒に気を付けた方がいい。

 盆に僧侶は多くの檀家宅を回る。
 昨年は僧衣姿で車を運転していた僧侶が福井県警に安全運転義務違反の青切符を切られたことが話題になった。反発した僧侶が僧衣姿で縄跳びをして見せたりした。
 ことしはウイルス禍のため、盆参りを辞退する檀家もいる。
 マスクをしたまま読経し、酸欠になりかけた僧侶もいる。
 本来なら、いまごろは東京五輪も終わり、「やっぱりマラソンが札幌だったのはねぇ」などと話しているものと思っていた。
 世の中、何が起こるか分からない。
 諸行無常の響きありだ。

 昨年と変わらないのは猛暑。
 下着姿でも暑いのだから、僧衣はもっと暑いだろう。
 最近、工事現場などで電動ファン付きの空調服を着ている人を見る。ファンが空気を送るので涼しいらしい。
 あれの僧衣版があればお坊さんも助かるのにと思っていたら、売っていた。
 大阪の和装品店で「空調ファン用略式白衣」が上下で約15000円、「空調ファン用白羽織」は約9000円、他にファンの充電器やバッテリーセットが約15000円。
 心頭滅却したって暑いものは暑い。

 政府は「三密」を避けるよう呼び掛けているが、「三密」はもともと仏教の言葉だ。
 真言宗や天台宗などの密教は、体や行動の修行を「身密」、言動の修行を「口密」、心や理念の修行を「意密」という。
 身密、口密、意密の三密は仏さまに近付き、密閉、密集、密接の三密はウイルス禍に近付く。

2020年08月11日

人間50年、いや80年、いや100年

 日本人の平均寿命がどんどん長くなっている。
 男は81歳、女は87歳。
 終戦直後の男50歳、女53歳からそれぞれ30年以上も長くなった。
 明治以前の平均寿命は30代から40年代だったらしい。
 70歳まで生きる人は「古来、稀(まれ)」だったから「古希」。
 織田信長が桶狭間の戦いに向かう際に吟じた幸若舞『敦盛』の一節は
 「人間50年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。ひとたび生を得て滅せぬ者のあるべきか」。
 人の一生は50年に過ぎない。天上世界と比べたら夢や幻のようなもの。命あるものはすべて滅びる。
 本成寺の変で信長が亡くなったのも49歳だった。

 とはいえ、これは平均値。
 短命もいれば長寿もいる。
 1000年前の平安時代、関白として藤原氏全盛時代を築いた藤原頼通は83歳まで生きた。
 10円玉の表に刻まれている平等院鳳凰堂を建立した人で、76歳まで関白を務めた。
 頼通の姉で一条天皇の皇后、紫式部が女房として仕えた藤原彰子も87歳、頼通の妻の隆姫女王は93歳まで生きた。
 幼いころ頼通に冷遇されたものの、即位後は藤原氏から権力を奪い返したのが白河法皇。平清盛の本当の父親という説もある法皇が崩御したのも77歳。
 平安時代であっても、権力者たちは現代と変わりなく長く生きた。

 自民党の二階俊博幹事長は昭和14年生まれの81歳。
 ちょうど日本人男性の平均寿命だが、まだ現役バリバリ。
 平安時代同様、権力中枢の人々は長生きする。
 二階氏は衆院初当選時から田中角栄元首相に師事し、田中派、竹下派、羽田派を経て平成5年に自民党を離党。新生党、新進党、自由党、保守党を渡り歩き、約10年ぶりに自民党に復党。経産相などを経て28年8月に幹事長に就任した。
 幹事長就任時の年齢は自民党史上最高齢の77歳。
 最年少記録は田中元首相の47歳。
 最長通算在職日数は田中元首相の1497日だが、二階氏が来月8日まで幹事長を務めると、この記録を塗り替える。

 日本という国も、田中幹事長のころは青年期だったが、いまは老年期のようになっている。

2020年07月10日

レジ袋と包丁

 レジ袋と包丁には共通点がある。
 レジ袋は今月から有料になった。政府が省令を改正して義務化した。
 資源の節約と海洋プラスチックごみ、地球温暖化などの問題に対応するためという。
 レジ袋を減らすと本当に海洋プラスチックごみが減り、地球温暖化に効果があるのだろうか。
 包装資材メーカーの清水化学工業は、ポリ袋こそエコなのだと主張している。
 ポリエチレンは石油精製時に必然的にできる。石油をガソリン、重油などに精製した後の残りもので作っている。捨てるよりも無駄なく使う方がエコだ。紙袋より少ないエネルギーで作ることができるうえ、軽くてかさばらないために輸送エネルギーも少なくて済む。
 ポリ袋は市町村が処理しているごみのわずか0・4%でしかなく、レジ袋をなくしてもごみ減量化や地球温暖化の効果は微々たるものという。

 海洋プラスチックごみも、主な原因となっているのは漁網やロープ、ブイ、ペットボトル、発泡スチロールなどだ。
 ポリ袋は海洋プラごみのわずか0・4%でしかない。
 レジ袋はごみ袋などとして再利用もできる。その後、燃えるごみとして処理すれば、焼却を助ける燃料になることはあっても、海洋に流れ出ることはない。
 海洋プラごみになるのは、レジ袋をごみとして処理せず、ポイ捨てしたものだけだ。
 路上などに捨てられたレジ袋が側溝から川や海に流れ出る。

 包丁を凶器とする殺人事件や傷害事件が多発した時代があった。切れ味の良さで選ばれたのかどうか分からないが、三条産の包丁を使う犯人も多かった。
 三条商工会議所には全国各地の警察からよく「○○という包丁はそちらの産地で作られているものか」といった問い合わせがあった。
 「包丁は危険だから子どもには持たせるな」などという馬鹿げた意見もあった。
 包丁が悪いのではなく、包丁を悪いことに使う人間が悪いのだ。
 包丁を目の敵にして隠してみたところで、悪人は別の凶器を使うだけだ。
 海洋プラごみの問題も同じ。
 レジ袋が悪いのではなく、レジ袋をポイ捨てする人間が悪いのだ。
 世の中からなくすべきはレジ袋ではなく、ポイ捨てだ。
 レジ袋を有料化したところで、ペットボトルや古いエコバックなどのポイ捨てが続けば海洋プラごみは減らない。

2020年05月02日

ネコの室内 ヒトも室内

 ACジャパンが「にゃんぱく宣言」というテレビCMを流している。
 さだまさしさんの『関白宣言』が新郎から新婦へのメッセージだったのに対し
 「にゃんぱく宣言」はネコから飼い主に対するメッセージとなっている。
 ネコの画像が流れるなか、
 「お前、俺の飼い主ならば
  俺の体、俺より管理しろ
  家の外に出してはいけない
  飼えない数を、飼ってはいけない
  忘れてくれるな、俺の頼れる飼い主は
  生涯、お前ただ一人ラーラーラー」
 という詞を、さださん本人が歌い、
 「正しく飼って、ずっと一緒に。日本動物愛護協会。ACジャパンはこの活動を支援しています」
 というナレーションで終わる。

 ネコの健康を飼い主が管理するのは分かる。
 飼えない数を飼ってはいけないのも当然だが、
 「家の外に出してはいけない」ものなのか。
 以前、飼いネコは家の外にも出歩いていた。深夜には、ネコたちがあちこちを歩き回っていた。
 発情期を迎えた、いわゆる盛りのついたネコの鳴き声は不気味でうるさかった。
 そういえば最近、あの声を聞かなくなった。

 なぜ家の外に出してはいけないのか。日本動物愛護協会は
 「世の中にはネコが好きな人だけではありません。外に出せば、虐待や誘惑、交通事故の危険があります。交通事故で命を落とすネコの数が殺処分数を超えている地域もあります。また、他のネコとのけんかや接触でケガや伝染病、ネコエイズなど不治の病に感染することもあります」と説いている。
 不必要な繁殖が増えれば、野良ネコや殺処分を増やすことにもつながる。
 最近は野良ネコも見なくなった。
 野良ネコがいたからエドガー・アラン・ポーの『黒猫』や萩原朔太郎の『猫町』といった小説が生まれたのに。

 ネコは家の外に出なければ病気や事故のリスクは減るが、運動不足になりやすい。
 そこは飼い主が気配りしてやらなければならない。
 我々人間も外に出なければ感染のリスクは減るが、運動不足どころか収入が減って生活を維持していけなくなる。
 ネコの場合は飼い主に面倒を見る責任がある。
 人間の場合、政府は外出するなと言っておきながら、補償などについては知らん顔をしている。

2020年04月21日

ウイルスにも負けず

ウイルスにも負けず
不景気にも負けず
退屈にもネオンサインの誘惑にも負けぬ
丈夫な心と体を持ち
マスクが売り切れていても
決して怒らず
いつも静かに笑っている
一日にインスタント食品と
持ち帰り弁当とスーパーで値引きされていた売れ残りの惣菜を食べ
あらゆる仕事を
インターネットのやり取りで済ませられるようにし
星野源とのコラボ動画にあった首相の部屋のような高級家具は
ひとつもない小さな部屋にいて
東に感染者の情報あれば
行って「悪者扱いしたり差別してはいけません」と近所の人たちに頼み
西に疲れた医療関係者あれば
行って「頑張ってください、みんながみなさんのことを頼りにし、感謝し、応援しています」と激励し
南に資金繰りに困っている事業者がいれば
行って「怖がらなくてもいいです。融資制度などの支援策もあるし、騒ぎが収まったら大勢のお客が必ず来て売れますから」と言い
北に言うことがコロコロ変わる評論家がいれば
「つまらないからやめろ」と言う
日照りのときは紫外線を浴び
寒さがゆるめばウロウロ歩いて運動不足を解消する
皆にイケノボーを勧め
ウイルス禍に滅入ることなく
油断もせず
そういう者に
私はなりたい

2020年04月07日

「いじめ、ダメ、絶対」「職業差別もダメ、絶対」

 「いじめや差別をなくそう」と言っている政府が、特定の職業に就いている人たちを差別している。
 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための休校に伴う支援金のことだ。
 政府は臨時休校によって仕事を休まざるを得なくなった保育所や幼稚園、小学校、特別支援学校などの保護者に対して、雇われて働く人には勤め先に日額最大8330円、フリーランスには日額4100円を支給する。
 ただし「風俗営業等関係者」や「暴力団員」、「暴力主義的破壊活動を行った団体に所属する人」は対象外としている。
 具体的には「キャバレー、待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」を行っている事業所で、接待業務を行っている人などは、いくら休校となった子どもの世話のために仕事を休んでいても支援金は支給しない。

 風俗業で働く人たちの支援団体は「職業差別だ。国が風俗で働く人たちへの差別や偏見を助長している」と批判、風俗業関係者も支給対象とするよう求めているが、加藤勝信厚労相は「雇用関係の助成金全般で風俗業関連は支給しないことになっており、休業対応の支援金も同様の扱いとなっている。現在、その取り扱いを変える考えはない」と話している。

 臨時休校に伴う支援金は、雇用の維持などを目的とする平時の施策ではない。
 新型コロナウイルスの感染が拡大している非常時に、これ以上の拡大を防ぎ、国民の命や健康、生活を守るために打ち出した施策だ。
 職業で対象を選別すべき性質の施策ではない。
 まして風俗営業は感染を広げやすい職種でもある。支給対象外として仕事を休む人を減らすより、休んでもらった方が感染拡大防止のためにも好ましい。
 なにより子育て中に風俗業に従事しなければならない人たちの背後には、様々な事情があることを国会議員や官僚たちは想像できないのだろうか。

 憲法14条には「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とある。国家は国民を差別してはいけないのだ。

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