2018年02月10日

フラップって何?

 「フラップ、出ているよ」。
 先日、通夜に出席していたときにある人が注意してくれた。何を言われているのか分からなかった。
 フラップ? 飛行機の主翼の縁に付いている小翼のこと? 
 戸惑っていたら「スーツのポケットのフタのこと」と教えてくれた。
 「ポケットに付いているヒラヒラをフラップ、日本語では雨蓋(あまぶた)と呼ぶんだよ。もともとは屋外にいるときにポケットの中に雨や砂ぼこりが入らないように付けられたものらしい。だからフラップを出してポケットの中が濡れたり、汚れたりしないようにフタをしておくのは屋外にいるときだけなんだね。屋内ではフラップはポケットの中に入れておくのが基本的なマナーなんだよ。ビジネススーツのときはそれほど気にしなくてもいいけど、礼服を着て部屋の中にいるのにフラップを出しているのはマナー違反だから」。

 知らなかった。これまで何百回もスーツを着てきた。
 礼服だって親せきの葬式から友人の結婚式まで何十回も着ているのに、フラップを意識したことはなかった。わざわざ付けてあるんだから外に出しておけばいいのだろうぐらいに思っていた。室内にいるときも常に出しっぱなしにしていたと思う。
 自分の結婚式のときはどうだっただろう。式場スタッフから「出さないように」と教えてもらった記憶がないのは、フラップが付いていないタイプの貸衣装を着たからかもしれない。
 通夜だったので周囲の人たちも礼服を着ている。見回したらフラップを出したままの人も多かった。
 知ったかぶって「室内ではフラップを中に入れるのが紳士のマナーなのだよ、君たち」と教えたくなったが、読経が始まったので我慢した。

 次の日、得意になって知り合いの若者に教えたら「当たり前でしょ。フラップは出さないし、スーツのボタンは二つボタンなら一番上、三つボタンなら真ん中だけを留めて、座るときは外す。それぐらいは就職試験の面接を受けるときの基本ですからね。常識ですよ」と言われた。
 悪かったね、非常識なおじさんで。
 でも、そんなことで人を評価し、採用するかどうかを決めるような会社はつまらないと思うよ。

2018年01月27日

身勝手な意見書

 埼玉県議会が原子力発電所の再稼働を求める意見書を可決し、国に提出した。
 埼玉県内に原発はない。
 東京電力が世界最大級の柏崎刈羽原発や、チェルノブイリと並ぶ史上最悪の事故を起こした福島第一原発などで作った電気を使ってきた県だ。他県の原発で作った電力を消費するだけの埼玉県が、新潟県や福島県にある原発の再稼働を求める意見書を国に提出したわけだ。

 なんとも身勝手な意見書だ。新潟県議会はこれを黙って見ているつもりなのだろうか。埼玉に手も足も出ないのは、サッカーJリーグの浦和レッズに勝てないアルビレックス新潟だけにしてほしい。

 正式名は「世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた原子力発電所の再稼働を求める意見書」。
 エネルギーの安定供給や経済効率性の向上、環境への適合のために原発の再稼働は「欠かせない」とし、原子力規制委員会が規制基準に適合すると認めた原発の再稼働を国に「強く要望する」ものだ。

 関係団体から要望を受けた自民党埼玉県議団などが昨年12月定例会に提案、賛成多数で可決した。同県議会では県議86人のうち6割余の52人を自民党が占めているという。意見書は衆参両院議長、首相、経産相、原子力防災担当相に提出した。

 原発立地県が意見書を提出するならともかく、埼玉県のように自分たちの地域への立地は認めず、他地域の原発で作った電力を消費するだけ、いわばリスクは負わずに便宜だけを受けてきた県が、国に再稼働を求めるのはいかがなものだろう。
 原発立地県民が「いい加減にしろ、再稼働を求めるなら自分たちの地域に原発を造れ」と思うのは当然のことではないだろうか。

 意見書では「将来の世代に負担を先送りしないよう高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取り組みを強化すること」も求めている。
 原発から出る、いわゆる「核のごみ」は処分場受け入れ地域がないため、原発敷地内と青森県六ケ所村にため込まれている。再稼働すれば「核のごみ」はさらに増える。「将来の世代に負担を先送りしない」というなら、埼玉県が最終処分場を受け入れればいい。
 それもせずに「再稼働しろ、核のごみは原発内にためておけ」はあまりに勝手だ。

 意見書には法的拘束力も大きな政治的効果もない。だからといって新潟県が言われっぱなしでは腹の虫がおさまらないという県民も多い。県議会はきちんと反論すべきではないだろうか。

2018年01月23日

強気を助け、弱きをくじく農政

 野菜が高い。
 白菜、キャベツ、レタス、大根いずれも例年の2倍以上の高値が続いている。
 昨年秋の天候不順の影響という。本当にそれだけが原因なのだろうか。
 日本は食料自給率が低いだけではない。国内で作っている野菜の種子も大半が外国産だ。
 白菜やトウモロコシはアメリカ、キュウリは中国、タマネギはフランス、ニンジンはチリ、カブはニュージーランドなどから種子を輸入している。
 ほとんどがF1種と呼ばれる交配種で、第一世代だけ成長が早くて収穫量が多く、形や大きさもそろっている。第二世代以降、そうした特性は消える。生産者がF1種で育てた実から種子を取っても良い野菜は育たない。毎回、種子を買わなければ作れないようになっている。

 日本の野菜は、以前は地域の気候や風土に根付いた固定種(在来種)から作られていた。
 自然の種子から育った野菜は形も大きさもさまざまだ。
 F1種なら同じものが効率よく大量にできる。日本もいつの間にか大量生産向きのF1種に入れ替わった。
 世界ではモンサントやデュポンなど巨大化学企業が種子の市場を牛耳っている。
 上位5社の世界の種子市場占有率は7割。種子と肥料、農薬をセットで売っている。
 モンサントなどは強力除草剤のラウンドアップで儲け、同時にラウンドアップをまいても育つトウモロコシなどの種子でも儲けている。
 巨大企業が市場占有率をさらに高めたら、企業が世界の野菜市場まで思い通り動かすことになる。
 種子と肥料と農薬の生産や流通をコントロールできたら人類の生殺与奪権を握ったようなものだ。
 日本の野菜の高騰ぶりを見て、巨大企業はいまごろ種子の値上げを考えているかもしれない。

 日本はこれまで稲と麦、大豆だけは巨大企業の支配下に置かれることを免れてきた。
 昭和27年に制定した主要農作物種子法によって稲、麦、大豆の種子の品質管理と安定供給を都道府県に義務付けたからだ。
 その種子法がことし3月末で廃止となる。
 政府は農業競争力強化支援法で「都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること」まで定め、巨大企業の参入に便宜を図っている。
 まさに「強きを助け、弱きをくじく」。こんな農政でいいわけがない。

2018年01月19日

自己責任

 自己責任とは「自分の行動の責任は自分にある」ことだ。
 自由意思に基づいて自ら選択した結果は、本人が責任を負うという意味だ。
 先日、弥彦山を登った新潟市の女性が下山途中、雪の重みで倒れたスギや落雪に巻き込まれ、出血性ショックで死亡した。
 弥彦山を所有する弥彦神社と、登山道を管理している弥彦村は昨年12月、今回の事故とは別の場所で登山道の崩壊や倒木を確認したため、「通行禁止」の立て看板を設置した。その後も登山する人がいたため、看板に「登山は自己責任で‼」を加えて警告してきた。
 にもかかわらず犠牲者が出た。弥彦村と弥彦神社は事故の翌、登山道を全面通行禁止とし、登り口を立入禁止テープなどで封鎖した。

 全面通行禁止には賛否両論がある。弥彦山登山愛好者の間には「登山は自己責任なのだから、一律に禁ずるべきではない」といった意見もある。
 自己責任といっても、実際に事故が起きれば個人では責任の取りようがないことも起こる。消防や警察からも捜索や救助、実況見分などに多数が出動する。今回はヘリコプターまで出動した。
 自己責任と言いつつ、人の命にかかわることが起きれば
 「樹木の手入れは十分だったのか、倒木の危険を予知できなかったのか」
 「登山道の崩壊部分をなぜ放置していたのか」などと管理責任が問われることにもなる。
 登山者の「自分の命は自分で責任を取ります」だけでは済まなくなる。無人島で一人きりならともかく、社会に生きている以上、「死んだら遺体は放置しておいて」というわけにはいかないのだ。

 遊んでばかりいて勉強せずに受験に失敗したことや、運動せずに食べてばかりいて太ったこと、放漫経営のため会社が傾いたことなどは他人のせいにできない。自己責任だ。
 だからといって「自由競争に敗れた負け組が貧困にあえぎ、生活保護費を削られるのは当然」「所得や雇用の格差が拡大するのは競争の結果であって、負けた方が悪い」といった市場原理最優先の自己責任論がまかり通ったら強者はより強大に、弱者はますます弱くなる。治安は悪化し、社会は混乱する。
 なんでもかんでも「自己責任」という世の中は危ないのではないだろうか。

2017年12月28日

米の米による米のためのコメのタネの話

 主要農作物種子法という法律がある。
 戦後間もない昭和27年にコメや麦、大豆の増産や安定供給のために制定された。
 都道府県はこの法律に基づいて地域に適した優良なコメや麦、大豆の品種を開発し、その種子を安く安定的に農家に供給してきた。国もそれを予算面で支援してきた。国民に安全な主食を安定的に提供し、安心して食べてもらうためだ。コシヒカリや新之助も、この法律によって生まれた品種だ。
 政府はことし2月にこの種子法の廃止を閣議決定し、4月には与党の賛成多数で廃止法を可決。来年4月に廃止と決まった。

 廃止理由を政府は「技術水準の向上によって種子の品質は安定している。民間企業の参入を促進し、開発を促進する」と説明している。
 そのために都道府県には「官民の総力を挙げた種子の供給体制の構築のため、民間事業者による稲、麦類及び大豆の趣旨生産への参入が進むまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の趣旨の生産に係る知見を維持し、それを民間事業者に対して提供する役割を担う」ことを求めている。
 都道府県が長年、積み上げてきた研究成果を民間に提供しろというのだ。

 民間企業のなかには除草剤「ラウンドアップ」を開発し、この除草剤に耐性を持つ遺伝子組み換え作物とセットで販売している米国のモンサントなどもある。
 モンサントはアスピリンを開発したドイツのバイエルに近く買収される予定で、バイオ化学メーカーは今後ますます巨大化、多国籍化する。こうした巨大企業が日本の種子市場に参入すると何が起きるだろう。
 「将来的に市場原理によって都道府県が開発した品種が淘汰され、外国の巨大企業が種子の市場を独占することもあり得る。そうなった後に種子が高騰しても、農家はどうすることもできない」
 「都道府県が管理しているうちはいいが、民間企業の種子となると、どこにどんな遺伝子組み換え作物が紛れ込んでくるか分からなくなる」
 と心配する声もある。
 政府が唐突に種子法廃止を閣議決定したのは安倍首相とトランプ大統領による日米首脳会談から3か月後のことだった。
 種子法廃止は米国の要求だったということはないだろうか。

2017年12月22日

鎖国か開国か

 開発途上国などの外国人を日本に受け入れ、職場実習で技能の習得を支援するのが技能実習制度。期間はこれまでは3年以内だったが、ことし11月から最長5年に延びた。現在、全国で約21万人が実習している。
 三条市でも平成4年から三条商工会議所が中国人を技能実習生として受け入れた。7年からは三条経営労務センターがフィリピン人を受け入れている。今月には三条市とベトナムのバリア・ブンタウ省が覚書を締結、ベトナム人の技能実習生受け入れに向けた準備を始めた。

 技能実習制度の目的は「国際貢献」。人材育成に協力し、開発途上国の発展に寄与しようというものだ。この制度で育てた技能実習生を中国の武漢や上海事務所の幹部に登用しているパール金属、三条本社で研修を積んだベトナム人中堅幹部がベトナム工場で活躍しているサンカなどは理想的なモデルだ。
 一方で、「国際貢献」は建て前で、本音は「安い労働力が欲しい」という場合、トラブルが起きることもある。受け入れ側が「手間がかかるうえに思ったほど安くない」と不満を抱けば、実習生側も「待遇が悪い」と反発。双方が感情的になることもある。
 技能実習生として日本に入国したのに行方が分からなくなった外国人が年間5000人を超えているという。三条でも中国人実習生が受け入れ企業を抜け出し、県外の中国人の知人宅で見つかったことがある。
 ことしは行方不明が半年で3200人に達しており、年間では6000人を超えそうなペースとなっている。
 失踪者はベトナム人、中国人、ミャンマー人、カンボジア人など。見つかって強制送還された元実習生は「期待していた賃金がもらえなかった」「友だちからもっと給料が高いところがあると聞いた」などと話しているという。

 日本の少子高齢化が進み、人手不足が深刻になっているのに、「国際貢献」が目的の技能実習制度でお茶を濁すようなことを続けているから、こういった問題が起きるのではないだろうか。現実に即してきちんと「外国人労働力」として受け入れ、関連する法律やチェック体制などを整備した方が、労使双方にとって好ましい結果になると思う。「鎖国」か「開国」か、真剣に考えるべき時期ではないだろうか。

2017年12月03日

新潟空港と上越新幹線

 新潟空港への上越新幹線乗り入れは金子清知事時代に浮上した構想だ。
 新潟空港は市街地に近い好立地にありながら公共交通の便が悪く、バスかタクシーを利用しなければ鉄道に乗り継ぐことができない。バスだと新潟駅まで通常なら直行便で30分、路線バスで40分前後だが、新潟市内ではたびたび渋滞が発生する。新潟空港に降りた乗客が新幹線に乗ろうとしても、新潟駅までの所要時間が読めない。
 新幹線を新潟空港まで延ばせば、こうした不便さを解消できる。県内だけでなく、群馬、埼玉など新幹線沿線地域からの空港利用も増える。新潟空港を成田、羽田に次ぐ首都圏第三の空港とすることによって、新潟を日本海側最大の交通拠点として発展させようといった発想だった。

 自治省出身で関係省庁とのパイプも太かった金子知事だが、この構想を具現化する前に東京佐川急便事件によって、在職わずか3年で辞職した。平山征夫、泉田裕彦両知事時代も構想の検討だけは続けたが、実際に変わったのは空港と新潟駅を結ぶバスの乗降場所程度。新幹線は1㍉も延びないまま、25年が過ぎた。
 この間に新潟空港の国際線はソウル、ハルビン、上海、台北合わせて週10便だけなのに、富山空港はソウル、上海、大連、台北の週11便、小松空港はソウル、上海、台北の週12便に増加。利用者数も新潟の99万人に対し、小松は170万人と大きく水を開けられた。

 県内の行政、経済界、交通事業者などによる新潟空港アクセス改善協議会(会長・米山隆一知事)は、空港への新幹線乗り入れについて「不確実な要素や採算性の課題も多く、現時点で整備着手を判断できる状況にない」とし、検討を中断することにした。
 当面は空港駐車場の割引やタクシーの定額運行、バス専用レーンの整備などによって空港利用者を増やす努力を続け、9年後、もしくは空港利用者が現在の1・13倍の135万人に達したら、検討を再開する。
 空港まで新幹線を延ばすには422億円必要で、現状の利用状況ではそれだけの投資をしても採算が合わないという。
 利用が少ないから投資できないというが、投資をしなければ利用が増えないのが公共交通ではないのだろうか。鶏が先か、卵が先かと悩んでいるうちに日本海側の交通拠点の地位を石川県に奪われてしまうのではないだろうか。