2018年05月16日

ごみの戸別収集

 所用で東京都八王子市に行って驚いた。朝、各家庭の玄関先にごみ袋が置いてあるのだ。
 町内を回ってみてもごみ集積所、いわゆるごみステーションがない。
 戸建て住宅に住んでいる人は、自宅前の道路に面した敷地内にごみ袋を置いている。
 マンションやアパートなど集合住宅に住んでいる人たちは、それぞれ集合住宅の管理者が敷地内に設置したごみ置き場にごみを出している。
 それを市が戸別に収集する。可燃ごみは毎週2回、容器包装プラスチックは毎週1回、不燃ごみや新聞、雑誌、ペットボトル、空き缶などの資源ごみは2週間に1回、午前8時半までに出すルールになっているという。
 八王子市や武蔵野市がごみステーションを廃止し、戸別収集に切り替えたのは平成16年。いまでは立川市、三鷹市、青梅市、府中市、調布市、町田市、日野市、品川区、台東区なども戸別収集を導入している。


 戸別収集の目的はごみの減量化だ。
 ごみステーションだと、町内のだれが出したごみか分からないため分別が徹底せず、マナーも悪くなりがちだ。
 自分のごみを自宅玄関先に出す戸別収集だと、可燃ごみの袋に不燃物を入れるようなルール違反をするわけにはいかなくなる。違反が分かれば収集されず、玄関先に置きっぱなしとなるためだ。
 生ごみの水分を絞ってから袋に入れる人、買い物をするときにごみが増えないよう不要な包装を断る人も増えるという。ごみステーションへのごみの出し方をめぐる住民トラブル、大量のごみの山を狙うカラスやネコの被害もなくなる。


 デメリットはコスト。業者が住宅を一軒ずつ回ってごみ袋を集めるため、ごみステーション方式より時間も費用もかかる。それを負担するのは住民となる。八王子市の有料ごみ袋は可燃ごみ、不燃ごみともに10ℓが18円、20ℓが37円、40ℓが75円。三条市の約1・8倍だ。安さとごみの減量化のどちらを選ぶか。ただ戸別収集には減量化だけでなく、住民サービス、とくにごみステーションまでごみを持ち運ぶのが大変な高齢者に対するサービス向上になる面もある。新潟には、雪のなかでの真冬のごみ出しという都内にはない試練もある。県央でも戸別収集の是非を検討すべきではないだろうか。

2018年03月17日

何のため、誰のための検査?

 三条や燕には金属製品を取り扱う中小企業が多い。重い荷物をトラックに積むときや、倉庫内に高く積み上げるときに使う機械がフォークリフトだ。数百人規模の企業はもちろん、社員数人の個人事業所でも使っている。地場産業には欠かせない、頼りになる機械だが、自動車車検と似たような制度がフォークリフトやブルドーザーなどにもある。特定自主検査という。

 「自主」という名前が付いているが、使用者が自主的にやるわけではない。年に一度、厚労省の登録を受けた検査業者の検査を受けることが労働安全衛生法で義務付けられている。車検のような価格競争は行われておらず、どの業者に頼んでも検査料は大差ない。機械によって10万円を超えるものもあり、中小零細には重い負担となっている。

 安全確保のための点検は必要だが、常にメンテナンスを行っている使用者も、年に一度の特定自主検査のときしか点検しない使用者も、検査料は同じ。となると安全のための検査なのか、検査のための検査なのか。
 この制度はメーカーや検査・整備業者などで作る公益社団法人建設荷役車両安全技術協会が実質的に担っている。検査員の研修を一手に引き受けているだけでなく、検査済みの機械に張る検査標章や記録表なども販売している。同協会には厚労省OBが天下っている。安全のための検査なのか、天下り先確保のための検査なのか。

 先日、衆院予算委員会分科会で新潟4区選出の菊田真紀子代議士(無所属)がこの問題を取り上げた。「特定自主検査は厚労省の天下りを受け入れている協会がなくては機能しない仕組みになっている」「価格競争を阻害し、事業者に過大な負担を強いているのではないか」と追及すると、加藤勝信厚労相は「事業者や各検査業者において適切な価格を設定しているものと考えている。厚労省として検査料金をこの水準にといった指導は行っていない」とカルテルを否定した。

 特定自主検査制度だけが安全確保の方法とは思えない。検査業者が価格競争に挑みやすい環境を三条や燕の業界が作り出せないものだろうか。官僚の天下り先と産業界の国際競争力、どちらの確保が大切であるかは言うまでもない。

2018年02月10日

フラップって何?

 「フラップ、出ているよ」。
 先日、通夜に出席していたときにある人が注意してくれた。何を言われているのか分からなかった。
 フラップ? 飛行機の主翼の縁に付いている小翼のこと? 
 戸惑っていたら「スーツのポケットのフタのこと」と教えてくれた。
 「ポケットに付いているヒラヒラをフラップ、日本語では雨蓋(あまぶた)と呼ぶんだよ。もともとは屋外にいるときにポケットの中に雨や砂ぼこりが入らないように付けられたものらしい。だからフラップを出してポケットの中が濡れたり、汚れたりしないようにフタをしておくのは屋外にいるときだけなんだね。屋内ではフラップはポケットの中に入れておくのが基本的なマナーなんだよ。ビジネススーツのときはそれほど気にしなくてもいいけど、礼服を着て部屋の中にいるのにフラップを出しているのはマナー違反だから」。

 知らなかった。これまで何百回もスーツを着てきた。
 礼服だって親せきの葬式から友人の結婚式まで何十回も着ているのに、フラップを意識したことはなかった。わざわざ付けてあるんだから外に出しておけばいいのだろうぐらいに思っていた。室内にいるときも常に出しっぱなしにしていたと思う。
 自分の結婚式のときはどうだっただろう。式場スタッフから「出さないように」と教えてもらった記憶がないのは、フラップが付いていないタイプの貸衣装を着たからかもしれない。
 通夜だったので周囲の人たちも礼服を着ている。見回したらフラップを出したままの人も多かった。
 知ったかぶって「室内ではフラップを中に入れるのが紳士のマナーなのだよ、君たち」と教えたくなったが、読経が始まったので我慢した。

 次の日、得意になって知り合いの若者に教えたら「当たり前でしょ。フラップは出さないし、スーツのボタンは二つボタンなら一番上、三つボタンなら真ん中だけを留めて、座るときは外す。それぐらいは就職試験の面接を受けるときの基本ですからね。常識ですよ」と言われた。
 悪かったね、非常識なおじさんで。
 でも、そんなことで人を評価し、採用するかどうかを決めるような会社はつまらないと思うよ。

2018年01月27日

身勝手な意見書

 埼玉県議会が原子力発電所の再稼働を求める意見書を可決し、国に提出した。
 埼玉県内に原発はない。
 東京電力が世界最大級の柏崎刈羽原発や、チェルノブイリと並ぶ史上最悪の事故を起こした福島第一原発などで作った電気を使ってきた県だ。他県の原発で作った電力を消費するだけの埼玉県が、新潟県や福島県にある原発の再稼働を求める意見書を国に提出したわけだ。

 なんとも身勝手な意見書だ。新潟県議会はこれを黙って見ているつもりなのだろうか。埼玉に手も足も出ないのは、サッカーJリーグの浦和レッズに勝てないアルビレックス新潟だけにしてほしい。

 正式名は「世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた原子力発電所の再稼働を求める意見書」。
 エネルギーの安定供給や経済効率性の向上、環境への適合のために原発の再稼働は「欠かせない」とし、原子力規制委員会が規制基準に適合すると認めた原発の再稼働を国に「強く要望する」ものだ。

 関係団体から要望を受けた自民党埼玉県議団などが昨年12月定例会に提案、賛成多数で可決した。同県議会では県議86人のうち6割余の52人を自民党が占めているという。意見書は衆参両院議長、首相、経産相、原子力防災担当相に提出した。

 原発立地県が意見書を提出するならともかく、埼玉県のように自分たちの地域への立地は認めず、他地域の原発で作った電力を消費するだけ、いわばリスクは負わずに便宜だけを受けてきた県が、国に再稼働を求めるのはいかがなものだろう。
 原発立地県民が「いい加減にしろ、再稼働を求めるなら自分たちの地域に原発を造れ」と思うのは当然のことではないだろうか。

 意見書では「将来の世代に負担を先送りしないよう高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取り組みを強化すること」も求めている。
 原発から出る、いわゆる「核のごみ」は処分場受け入れ地域がないため、原発敷地内と青森県六ケ所村にため込まれている。再稼働すれば「核のごみ」はさらに増える。「将来の世代に負担を先送りしない」というなら、埼玉県が最終処分場を受け入れればいい。
 それもせずに「再稼働しろ、核のごみは原発内にためておけ」はあまりに勝手だ。

 意見書には法的拘束力も大きな政治的効果もない。だからといって新潟県が言われっぱなしでは腹の虫がおさまらないという県民も多い。県議会はきちんと反論すべきではないだろうか。

2018年01月23日

強気を助け、弱きをくじく農政

 野菜が高い。
 白菜、キャベツ、レタス、大根いずれも例年の2倍以上の高値が続いている。
 昨年秋の天候不順の影響という。本当にそれだけが原因なのだろうか。
 日本は食料自給率が低いだけではない。国内で作っている野菜の種子も大半が外国産だ。
 白菜やトウモロコシはアメリカ、キュウリは中国、タマネギはフランス、ニンジンはチリ、カブはニュージーランドなどから種子を輸入している。
 ほとんどがF1種と呼ばれる交配種で、第一世代だけ成長が早くて収穫量が多く、形や大きさもそろっている。第二世代以降、そうした特性は消える。生産者がF1種で育てた実から種子を取っても良い野菜は育たない。毎回、種子を買わなければ作れないようになっている。

 日本の野菜は、以前は地域の気候や風土に根付いた固定種(在来種)から作られていた。
 自然の種子から育った野菜は形も大きさもさまざまだ。
 F1種なら同じものが効率よく大量にできる。日本もいつの間にか大量生産向きのF1種に入れ替わった。
 世界ではモンサントやデュポンなど巨大化学企業が種子の市場を牛耳っている。
 上位5社の世界の種子市場占有率は7割。種子と肥料、農薬をセットで売っている。
 モンサントなどは強力除草剤のラウンドアップで儲け、同時にラウンドアップをまいても育つトウモロコシなどの種子でも儲けている。
 巨大企業が市場占有率をさらに高めたら、企業が世界の野菜市場まで思い通り動かすことになる。
 種子と肥料と農薬の生産や流通をコントロールできたら人類の生殺与奪権を握ったようなものだ。
 日本の野菜の高騰ぶりを見て、巨大企業はいまごろ種子の値上げを考えているかもしれない。

 日本はこれまで稲と麦、大豆だけは巨大企業の支配下に置かれることを免れてきた。
 昭和27年に制定した主要農作物種子法によって稲、麦、大豆の種子の品質管理と安定供給を都道府県に義務付けたからだ。
 その種子法がことし3月末で廃止となる。
 政府は農業競争力強化支援法で「都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること」まで定め、巨大企業の参入に便宜を図っている。
 まさに「強きを助け、弱きをくじく」。こんな農政でいいわけがない。

2018年01月19日

自己責任

 自己責任とは「自分の行動の責任は自分にある」ことだ。
 自由意思に基づいて自ら選択した結果は、本人が責任を負うという意味だ。
 先日、弥彦山を登った新潟市の女性が下山途中、雪の重みで倒れたスギや落雪に巻き込まれ、出血性ショックで死亡した。
 弥彦山を所有する弥彦神社と、登山道を管理している弥彦村は昨年12月、今回の事故とは別の場所で登山道の崩壊や倒木を確認したため、「通行禁止」の立て看板を設置した。その後も登山する人がいたため、看板に「登山は自己責任で‼」を加えて警告してきた。
 にもかかわらず犠牲者が出た。弥彦村と弥彦神社は事故の翌、登山道を全面通行禁止とし、登り口を立入禁止テープなどで封鎖した。

 全面通行禁止には賛否両論がある。弥彦山登山愛好者の間には「登山は自己責任なのだから、一律に禁ずるべきではない」といった意見もある。
 自己責任といっても、実際に事故が起きれば個人では責任の取りようがないことも起こる。消防や警察からも捜索や救助、実況見分などに多数が出動する。今回はヘリコプターまで出動した。
 自己責任と言いつつ、人の命にかかわることが起きれば
 「樹木の手入れは十分だったのか、倒木の危険を予知できなかったのか」
 「登山道の崩壊部分をなぜ放置していたのか」などと管理責任が問われることにもなる。
 登山者の「自分の命は自分で責任を取ります」だけでは済まなくなる。無人島で一人きりならともかく、社会に生きている以上、「死んだら遺体は放置しておいて」というわけにはいかないのだ。

 遊んでばかりいて勉強せずに受験に失敗したことや、運動せずに食べてばかりいて太ったこと、放漫経営のため会社が傾いたことなどは他人のせいにできない。自己責任だ。
 だからといって「自由競争に敗れた負け組が貧困にあえぎ、生活保護費を削られるのは当然」「所得や雇用の格差が拡大するのは競争の結果であって、負けた方が悪い」といった市場原理最優先の自己責任論がまかり通ったら強者はより強大に、弱者はますます弱くなる。治安は悪化し、社会は混乱する。
 なんでもかんでも「自己責任」という世の中は危ないのではないだろうか。

2017年12月28日

米の米による米のためのコメのタネの話

 主要農作物種子法という法律がある。
 戦後間もない昭和27年にコメや麦、大豆の増産や安定供給のために制定された。
 都道府県はこの法律に基づいて地域に適した優良なコメや麦、大豆の品種を開発し、その種子を安く安定的に農家に供給してきた。国もそれを予算面で支援してきた。国民に安全な主食を安定的に提供し、安心して食べてもらうためだ。コシヒカリや新之助も、この法律によって生まれた品種だ。
 政府はことし2月にこの種子法の廃止を閣議決定し、4月には与党の賛成多数で廃止法を可決。来年4月に廃止と決まった。

 廃止理由を政府は「技術水準の向上によって種子の品質は安定している。民間企業の参入を促進し、開発を促進する」と説明している。
 そのために都道府県には「官民の総力を挙げた種子の供給体制の構築のため、民間事業者による稲、麦類及び大豆の趣旨生産への参入が進むまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の趣旨の生産に係る知見を維持し、それを民間事業者に対して提供する役割を担う」ことを求めている。
 都道府県が長年、積み上げてきた研究成果を民間に提供しろというのだ。

 民間企業のなかには除草剤「ラウンドアップ」を開発し、この除草剤に耐性を持つ遺伝子組み換え作物とセットで販売している米国のモンサントなどもある。
 モンサントはアスピリンを開発したドイツのバイエルに近く買収される予定で、バイオ化学メーカーは今後ますます巨大化、多国籍化する。こうした巨大企業が日本の種子市場に参入すると何が起きるだろう。
 「将来的に市場原理によって都道府県が開発した品種が淘汰され、外国の巨大企業が種子の市場を独占することもあり得る。そうなった後に種子が高騰しても、農家はどうすることもできない」
 「都道府県が管理しているうちはいいが、民間企業の種子となると、どこにどんな遺伝子組み換え作物が紛れ込んでくるか分からなくなる」
 と心配する声もある。
 政府が唐突に種子法廃止を閣議決定したのは安倍首相とトランプ大統領による日米首脳会談から3か月後のことだった。
 種子法廃止は米国の要求だったということはないだろうか。