2020年02月10日

ジャイアント馬場ロード

 鳥取県境港市のJR境港駅前は、かつては全国の他の商店街と同じく、空き店舗が目立つシャッター通りだったという。
 同市出身の漫画家水木しげるさんの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』などに登場する妖怪のブロンズ像を設置した「水木しげるロード」として再出発したのは平成5年。当初は鬼太郎やねずみ男など23体だった妖怪たちは、その後徐々に増えて現在は170体以上が並ぶまでになっている。
 それに伴って観光客も当初の2万人から100万人以上に増加。平成22年に水木しげる夫妻の人生を描いた『ゲゲゲの女房』がNHK連続テレビ小説で放送されると3百万人を超え、水木しげる記念館や妖怪神社には行列ができた。
 JRは「鬼太郎列車」を運行。シャッター通りだった商店街は日本でも有数の「観光対応型商店街」に生まれ変わった。

 「境港を参考に、三条も観光対応型の取り組みを進めてはどうか」という意見が産業界にある。
 水木さんが境港市で育ったのに対し、三条市で生まれ育った著名人にはプロレスラーで名誉市民のジャイアント馬場さんがいる。
 昨年12月に三条市が体育文化会館開館記念事業として行ったジャイアント馬場没後20年記念展には、全国各地から3日間で7000人が来場。渋滞が発生したほどで、没後20年となってなお衰えることのない馬場さん人気の根強さを示した。

 「馬場さんの巨大な像を建てるとともに、十六文サイズの馬場さんの足跡を各商店街に付け、それを追うといろいろな店を回れるようにできないものか」というアイデアもあれば、
 「ジャイアントサイズのラーメンや餃子などを提供する食堂があったら楽しい」
 「十六文サブレや十六文型のひこぜんなどがあれば、プロレスファンの土産になる」
 「弥彦線の高架柱にドリー・ファンク・ジュニアやスタン・ハンセン、タイガー・ジェット・シン、デストロイヤーなど馬場さんのライバルたちや十六文キック、河津落としなど馬場さんの得意技を描けないか」といったアイデアもある。
 なんとかして実現したいものだ。

2020年01月26日

地域の食堂を守ろう!

 コンビニエンスストアの駐車場が広くなってきた。
 新たに開店したコンビニの多くは、店舗面積の何倍もの駐車スペースを確保している。
 トラックなどの大型車も停めやすいように広くしたのだろう、大型車が入りやすければ普通乗用車はもっと入りやすい。
 入りやすく、停めやすい方が利用者も増えるから広くなったのだろうと思っていたが、理由はそれだけではないのかもしれない。

 あるコンビニは昼食時、広い駐車場がいつも満車に近い状態となっている。
 軽自動車に普通車、ライトバン、ワゴン車など色々な車が停まっている。
 車内で昼食を食べている運転者も多い。
 コンビニのレンジで温めてもらった弁当派もいれば、コンビニで熱湯を注いでもらったカップめん派もいる。パンにコーヒー派もいる。
 カーナビをテレビに切り替え、好きな番組を見ながら食べている人がいる。好きな音楽を聴きながら食べている若者もいる。
 最近は助手席や後部座席に簡易テーブルが備え付けてある車もある。
 満腹になったらシートを倒してまどろむこともできる。
 広い駐車場が混むわけだ。

 コンビニ駐車場で昼食を食べている人の多くは、以前は食堂に入っていた。
 日替わり定食やラーメン、かつ丼などを食べていた。食堂では作り立てのアツアツ料理を食べることができるが、注文してから調理するため、食べるまでにはある程度の時間がかかる。
 コンビニ弁当はレンジで数十秒、温めればOK、すぐに食べることができる。
 早さと安さの勝負であれば、コンビニが優勢だ。
 加えてハンバーガーや牛丼などのファーストフード店も増えた。そちらにも昼食客が流れた結果、長年、地域に愛されてきた食堂が減りつつある。

 財布を考えると毎日、食堂というわけにもいかないが、あの店のタンメン、こっちの店のチャーハン、あそこのラーメンが食べられなくなるのは困る。
 B級グルメがブームになる前から親しみ、堪能してきた味なのだ。
 佐渡のトキも、県央の食堂も守っていかなければならない。
 そのためにはみんなが定期的に食堂を利用することだ。
 家計を握っている奥様、地域の名店を守るために夫の昼食代を減らさないようお願い致します。

2019年12月20日

嗜好品 指向品 至高品

 50年前、たばこがこれほど世間から嫌われる存在になると予想していた人はどのくらいいただろう。
 昭和40年、日本では2人に1人がたばこを吸っていた。
男性に限れば喫煙率は80%を超えていた。
たばこを吸わない方が少数派で、映画やテレビドラマでは人気スターたちがカッコ良く煙をはき出していた。
健康への影響を気にする人は少なく、職場でも家庭でも飲食店でも電車内でも路上でも、多くの人がだれに遠慮することもなく、子どもや妊婦がいても、平然とたばこをふかしていた。

いま、たばこが健康に悪いことは常識となり、喫煙率は20%を割った。
日本たばこ産業(JT)は昨年、53年間続けてきた喫煙率調査をやめた。
来年の東京五輪は加熱式たばこを含めて各競技会場は敷地内全面禁煙となる。

 たばこと並ぶ嗜(し)好品が酒だ。
酒は、いまのところたばこほど嫌われてはいない。
大量に飲めば肝臓をはじめとする各臓器のがん、膵(すい)炎、心臓病、脳血管障害、認知症などのリスクを高めることは知られているが、「酒は百薬の長」という言葉もある。
適量であれば悪玉コレステロールを抑え、善玉コレステロールを増やすとか、脳梗塞や心筋梗塞などを防ぐ効果があると信じられている。

一方で「酒は少量でも健康に良い影響などない。がんになるリスクを高めるだけだ」と主張する研究者もいる。
いずれは酒もたばこ同様、「百害あって一利なし」と言われるようになるのかもしれない。

 喫煙していたころは「たばこのお陰でリラックスしたり、気分転換できる」と思い込んでいた。
禁煙したらコーヒーなど他の方法でも気分転換できることを実感した。
「酒を飲んでいるから胸襟を開いて話ができる」といまは思い込んでいるが、考えてみれば酒を飲まない人とだって、いくらでも腹を割って話すことはできる。

忘新年会シーズンが来た。
酒や酔っ払いに寛容な社会がいつまで続くのか分からない。
「いまのうちに」というさもしい根性で飲むから失敗してしまうのだろうか。

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2019年11月26日

産学連携のお手本

 地元に工学系大学があると、こういうこともできるという手本を長岡市、長岡技術科学大学が示してくれている。
 同大学には国際産学連携センターという部門がある。企業の
 「技術的な課題を解決したい」
 「新製品を開発したい」
 「現行製品を改良したい」といった要望に対し、
 同センターが適材の大学教員や研究者を紹介、専門家が課題解決に向けてアドバイスする仕組みだ。
 企業と大学教員が共通の課題を研究する制度もある。

 中越大震災翌年の平成17年、地元青年業界団体の長岡鉄工業青年研究会と、同大学の若手研究者が交流会を開いた。
 そこから生まれたのがレスキューロボット共同開発プロジェクト。
 レスキューロボットとは、災害時に倒壊した家屋内で逃げられなくなっている人を探すなど、危険な場所での救助作業を支援するロボットのこと。阪神淡路大震災を機に注目され、福島第一原発事故後は被曝リスクが高い場所での作業なども求められるようになった。

 中越大震災で被災した長岡の業界人と研究者が手を組み、被災地の頑張りと技術を世界に発信しようと立ち上げた共同開発プロジェクトはこの年、自作のレスキューロボットで自律移動型ロボットの競技会「ロボカップ」に出場。グッドデザイン賞は獲得したものの競技は予選で敗退した。
 これでメンバーたちのやる気に火が付き、同大学の研究者や学生たちは研究成果を、業界人たちは最新の加工技術を持ち寄り、ロボット開発に熱を上げた。
 その結果、19年には日本大会で優勝。20年には中国で開かれた世界大会で4位となった。
 その後も毎年のように日本大会や世界大会で入賞。昨年もカナダで開かれた世界大会で3位となり、長岡の高い技術力を世界に示した。メンバーはいまも毎週1回午後8時に同大学に集まって研究を続けている。

 三条市が再来年の開学を目指している三条技能創造大学も技術・経営工学科を持つ工学系だ。他に例のない中長期のインターンシップなどにより、より実践的な力を養成することが特色となっているが、教員は20人を超え、それぞれ研究成果を持っている。
 この人財を地域産業の発展に生かさない手はない。

2019年11月15日

県央のチカラ

 燕三条地域の産業力は新潟県経済の大黒柱のひとつだ。
 そのことを県などが13日に新潟市、朱鷺メッセで開いた地方創生フォーラムin新潟で改めて実感した。
 元総務相で東京大学公共政策大学院客員教授の増田寛也氏が基調講演で使った資料に「域外から稼いでいる産業~県際収支(平成23年)」があった。
 県外に売った輸移出額と、県外から買った輸移入額の差額のことだ。
 それによると新潟県の稼ぎ頭は「電力・ガス・熱供給」で県際収支黒字額は4000億円以上。
 以下「生産用機械」「電子部品」と続き、「金属製品」は4番手。
「対個人サービス」「農林業」までの6業種が1000億円以上の黒字だった。
 逆に「対事業所サービス」「石油・石炭製品」「情報通信」「輸送機械」「鉱業」「商業」は1000億円以上の赤字だった。

 県内の製造業で付加価値額がもっとも多く、特化係数がもっとも高いのは金属製品という。
 特化係数とは、地域と日本全体の付加価値構成比率のこと。これが高いと産業集積があり、競争力が強いことになる。
 金属製品の特化係数を高めているのは洋食器や作業工具、利工具など。つまり燕三条の産業だ。

 県内企業の昨年の売上高ランキングでもアークランドサカモトが9位、コロナが10位、オーシャンシステムが18位、ハーモニックが28位、ヴィームスタジアムが31位、パール金属が32位、高儀が36位。
 上位40社に三条市の企業が7社も入っている。県内トップの新潟市、コメリも三条出身企業だ。
 フォーラムでパネリストを務めた坂田匠サカタ製作所社長は新潟の魅力を問われ、
 「世界をあちこち見て回っているが、県央ほどのものづくりの集積地は見当たらない。東京・大田区や東大阪市と比べても県央は優れている。県央には金属加工だけでなく、木工も農業もある。すごい可能性に満ちた地域だ」と答えていた。

 フォーラムのテーマは人口減少や若者定住対策ではあったが、燕三条は新潟県を支える稼ぎ手であることが強く印象に残った。
 これだけ貢献しているのだ。
 県央に基幹病院を設置したってバチは当たらないだろう。

2019年11月08日

ホンコンバッタ

 「ある日、南の空に小さい雲が現れた。それは最初、地平線に、ささやかな霞のようにかかっていたが、風に吹きただよう雲とは違って、しばらく動かずにいた後、やがて扇形にひろがってきた。村人たちはそれを見守っては語りあい、恐怖に襲われた」
 パール・バックの小説『大地』(新居格訳・新潮文庫版)にある、中国・清朝時代の貧しい農村がトノサマバッタの大群に襲われる場面だ。
 農民たちは必死で戦い、何百万匹ものバッタを殺したが、数億匹規模で来襲した大群の前では微々たる抵抗でしかない。バッタたちは大切な農作物をすっかり食べ尽くしてしまった。
 バッタの大群の規模は想像を絶する。米国では幅160㎞、長さ500㎞という北海道の面積に匹敵するほどの大群が確認されている。

 バッタは普段はおとなしいが、干ばつなどが起き、少ないエサを求めて狭い範囲に密集すると、体つきや性格がガラリと変わる。
 体の色は濃くなり、ハネは長く、足は短くなる。
 性質は狂暴化し、イネや畑作物だけでなく紙や綿など植物由来のものはなんでも食べるようになる。
 これを群生相というそうだ。
 普段、バッタは一匹ずつ離れて生活している。群生相になると密集し、集団で行動する。もともと高い飛翔能力はさらにアップし、長距離を飛べるようになる。
 バッタの大群の被害はまさに災害レベル。これほど大きな被害をもたらす害虫は他にいない。

 香港で大規模デモが続いている。3月に始まり、すでに8か月間、続いている。
 最初は逃亡犯条例の改正に反対する抗議行動だった。
 それがデモ参加者の逮捕撤回、デモの暴動認定撤回、香港警察の過剰な暴力を調査する独立調査委員会の設置、さらには普通選挙の実施を求める政治運動に発展した。
 香港の若者たちは普段は青春を謳歌している。
 中国政府の露骨な干渉や介入によって民主主義の危機を感じ取り、デモ行進に参加した。
 バッタが密集することで群生相となるように、香港の若者たちは密着してデモ行進することによって急速に政治意識を高め、香港民主化のために戦う闘士となった。
 彼らが食べ尽くそうとしているのは農作物ではない。
 問答無用で住民の意思を踏みつぶそうとする独裁主義だ。

2019年10月27日

令和の人材確保法

 昭和47年7月に田中角栄内閣が発足して間もないころだ。
 田中首相が後藤田正晴官房副長官を呼び、
 「後藤田君、この頃の学校教員の資質が悪いよ。学校教員に少しいい人が来るようにしてくれ」
と指示した。
 後藤田氏が方法を問うと、田中氏は
 「待遇を良くしてやらなければいいものは来ないよ」
 待遇改善を大学からやるのかと聞くと
 「大学はどうでもいい。小学校と中学校だ。義務教育だけでいいよ」
 田中氏は最初、小中学校の教員給与を5割引き上げるよう命じたが、後藤田氏が
 「それは無理です。まあせいぜい3割です」
と述べると、田中氏はあっさり
 「ああ、よかろう」
と了承したという。
 後藤田氏が『情と理~後藤田正晴回顧録』(講談社)に記している。

 田中氏はこの後、当時、大蔵省主計局長で、後に経企庁長官となる相沢英之氏を首相官邸に呼び、
 「学校教育で一番大切なのは義務教育だよ。小中学校の教育をしっかりやればいい。それにはいい先生を集めなければならない。そのためには月給を高くしなければならない。一般公務員よりも先生の給料を3割高くしろ」
と命じた。
 こうして田中内閣は教員人材確保法を作った。
 これによって教員の給与は基本給が12%、諸手当を含めれば25%上昇した。
 それまでは給与が安いために
 「先生にデモなろうか」
 「先生にシカなれない」ため
 「デモシカ先生」などと呼ばれたこともあったが、給与が上がると優秀な人材が集まるようになった。

 人材確保法制定から45年。
 一時は一般行政職より教育職の方が給与は大幅に高かったが、最近はほとんど同じになった。
 教員には時間外勤務手当がない。
 新潟県でも教員の3割近くが毎月平均60時間を超える時間外勤務を行っているが、どれだけ残業しようと支給されるのは一律4%の教職調整額だけだ。
 この結果、県が行った今春採用の教員採用試験の競争倍率は中学校が2・3倍、小学校はわずか1・2倍にとどまった。
 保護者が異常な要求を突き付けてくるモンスターペアレンツ問題などもある。
 神戸市では教員間のいじめまで発覚した。
 角さんがいれば
 「令和の人材確保法を作れ」
 と命じているかもしれない。

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