2020年10月18日

滅菌 殺菌 除菌 抗菌

 石けんや洗剤、除菌スプレーなどのCMは、ウイルスや菌を分かりやすい姿に描いている。
 多くは憎たらしく、汚らしい悪魔のような形をしている。
 CMは、菌を放置しておけば自宅の居間やトイレなどで増殖してしまうと警告し、それを防ぐには除菌能力の高い洗剤や抗菌スプレーなどが有効だと訴えている。
 こうした複数のCMを繰り返し見せられていると、いつの間にか世の中はウイルスや雑菌だらけといったイメージを植えつけられる。
 外出先から戻った手は雑菌まみれ、抗菌グッズを使っていないトイレの床は飛び散った菌だらけと思い込むようになる。

 スーパーコンピューターを使って飛沫の広がり方を予測した映像もかなり気持ちが悪い。
 事務所や飲食店などの狭い空間でマスクをせずにせきをした人の飛沫は、机やテーブルの正面に座っている人を直撃するそうだ。人間の感覚では風圧も湿気も感じられない距離なのに、小さな粒の飛沫は相手の体全体を完全に覆っている。
 こちらは商品を宣伝するために大げさに表現しているわけではなく、新型コロナウイルス感染拡大防止のための科学的なシミュレーションとあって、余計に気色が悪い。

 以前は床に落ちた食べ物も、3秒以内に拾えば汚くはないという「3秒ルール」を信じ込んで平気で食べていた。それで腹を壊すこともなかった。
 酒席では、酒を注いだ相手から、その酒を飲み干したお猪口を受け取り、それで酒を飲むのが礼儀だった。
 新型コロナウイルス感染拡大後のいま、そんなことをしたら「非常識」と言われかねない。
 除菌CMや飛沫拡散シミュレーション映像を見て育った世代は不潔なことを嫌う。
 外出先ではドアノブや電車の吊り革をつかむことを嫌がり、他人が握ったおにぎりを食べることもためらう。
 家に帰ると丹念に手を洗い、コートなどに除菌スプレーを吹きかける。
 こうしたことが行き過ぎると強迫性障害や潔癖症になってしまうこともある。
 照れているのではなく、潔癖症のために異性の手を握ることも、キスすることもできないという人もいるらしい。清潔もほどほどでいい。

2020年09月19日

三条っぱらい

 子どものころ、部屋を散らかしたままにしていると、親から「コラッ、またサンジョッパライにして!」としかられた。サンジョッパライの意味を直接聞いたことはなかったが、おそらく部屋を片付けず、だらしなくしていることなのだろうと思っていた。
 なぜ、だらしないことがサンジョッパライなのか分からない。
 ヨッパライの頭に「惨事」を付けるとサンジッパライ。酔っ払いが暴れたあとのような惨状が語源というのはなんか変だ。
 長女は厳しく、次女は優しく、三女は酔っ払いだったからサンジョッパライというのはもっとおかしい。下戸の三女だっている。

 「三条の商人は『生き馬の目を抜く』と言われるほど商売に厳しい。価格交渉で値切りに値切り、ようやく価格が決まって納品と思ったら、支払いの段階で改めてさらに値切りにかかる。
 断っても勝手に端数を切り捨ててしまう。それが三条商人のやり方だったから、そういう支払いを『三条払い』と呼ぶようになったんだ」と卸商にいじめられた職人が愚痴れば、「三条もんは値切るくせに支払いに関してだらしなかったから、支払いにルーズなことをサンジョッパライと呼ぶようになったんだ」と言う他地域の人もいる。

 どうも「三条もんはケチだ」とか、「三条は支払いが汚い」と悪口ばかり言われているようで気分が悪い。
 村上市の知人が「それは誤解だ。少なくとも村上では違った意味で使われていた」と教えてくれた。
 江戸時代後期、武家階級の経済状態が悪くなって村上藩の財政も悪化し、様々な支払いが滞るようになった。藩の主な収入は領地内の農家から徴収する年貢と、商業都市三条の商人などから徴収する税の一種の運上金と冥加金。
 藩主が「三条の運上金や冥加金で払う」と言ったことが「三条払い」の始まりという。
 そのうち「払う、払う」と言うばかりでなかなか払ってくれなくなったため、支払いに関していい加減なことを「三条払い」と呼ぶようになった。
 「三条払いは三条ではなく、村上藩の支払いの悪さのことなんだよ」。
 こちらの説が真実であってほしい。根拠はないけど。

2020年08月24日

サメザメと思うこと

 オーストラリア南東部の海岸でサーフィンをしていた35歳の女性がサメに襲われた。
 右足をかまれた女性は一度、海中に引きずり込まれたが、なんとか自力で浮上、サーフボードにつかまった。
 近くでサーフィンをしていた夫は妻の異変に気付くとすぐに妻のサーフボードに飛び移り、妻の足をかんでいるサメを素手で殴った。
 サメは体長3mほどのホホジロザメだったという。
 夫がサメの目を狙って殴り続けると、サメが妻の足を離したため、二人はその場から逃げた。
 サメはサーフボードをかみながら沖に向かったという。
 女性はヘリコプターで病院に運ばれ、手術を受けた。大けがだったが、命に別状はなかった。
 夫は「彼女は子どもにとっては母であり、私にとってすべてだ。だから体が勝手に動いた。『あっちに行け』と怒鳴りながら目を狙って殴り続けた。だれもがやることをやっただけです」と話している。

 このニュースを聞いた妻が「この男性、すごいね~!勇気もあるし、力も強い。言うこともカッコいい」とほめるのは分かる。
 体長3mのサメに立ち向かって妻を助け出したのは確かにすごい。
 でも、なんでほめるだけでやめず、「うちの夫には絶対に無理。もし私がサメに襲われたら夫は自分だけ先に逃げ出すか、怖すぎてその場に固まってしまい、ボーとしているうちに二人とも食べられてしまうかだなぁ」などと言うのだろう。どうしてそんな経験、したこともないのに「こうなる!」と決めつけるのだろう。
 自分の夫だって、いざとなれば、体を張って妻を守るかもしれないではないか。
 というか、いざとなれば妻がサメを殴り、蹴り、かみついて追い払うことになるかもしれないではないか。
 サメだって、かみたくなる足と、そうでない足があるかもしれないではないか。

 オーストラリアや米国では毎年何人ものサーファーがサメに襲われている。
 犠牲者が出てもビーチが閉鎖されるのはその直後だけで、すぐに再開される。
 同じ場所でサメに襲われても、それは自己責任。
 日本のように海水浴場の管理責任が問われることはないようだ。

2020年08月12日

盆 煩 Born

 徳の高い僧侶は新型コロナウイルスに感染しない、ウイルスの方が逃げていく、などということはない。
 偉いお坊さんだって檀家と同じように感染予防に努めている。
 盆参りで檀家宅を訪ねた奈良県の僧侶は、檀家が用意してくれたアルコールジェルで手を消毒した。その後、すぐにライターでロウソクに火を点けようとしたところ、手に残っていたアルコールに引火。手が炎に包まれ、必殺パンチを繰り出すアニメの主人公のようになってしまった。幸い、すぐに火を消せたので火傷はせず、手がヒリヒリする程度で済んだ。
 僧侶も檀家も、墓や仏壇にお参りするときはジェルタイプのアルコール消毒に気を付けた方がいい。

 盆に僧侶は多くの檀家宅を回る。
 昨年は僧衣姿で車を運転していた僧侶が福井県警に安全運転義務違反の青切符を切られたことが話題になった。反発した僧侶が僧衣姿で縄跳びをして見せたりした。
 ことしはウイルス禍のため、盆参りを辞退する檀家もいる。
 マスクをしたまま読経し、酸欠になりかけた僧侶もいる。
 本来なら、いまごろは東京五輪も終わり、「やっぱりマラソンが札幌だったのはねぇ」などと話しているものと思っていた。
 世の中、何が起こるか分からない。
 諸行無常の響きありだ。

 昨年と変わらないのは猛暑。
 下着姿でも暑いのだから、僧衣はもっと暑いだろう。
 最近、工事現場などで電動ファン付きの空調服を着ている人を見る。ファンが空気を送るので涼しいらしい。
 あれの僧衣版があればお坊さんも助かるのにと思っていたら、売っていた。
 大阪の和装品店で「空調ファン用略式白衣」が上下で約15000円、「空調ファン用白羽織」は約9000円、他にファンの充電器やバッテリーセットが約15000円。
 心頭滅却したって暑いものは暑い。

 政府は「三密」を避けるよう呼び掛けているが、「三密」はもともと仏教の言葉だ。
 真言宗や天台宗などの密教は、体や行動の修行を「身密」、言動の修行を「口密」、心や理念の修行を「意密」という。
 身密、口密、意密の三密は仏さまに近付き、密閉、密集、密接の三密はウイルス禍に近付く。

2020年08月11日

人間50年、いや80年、いや100年

 日本人の平均寿命がどんどん長くなっている。
 男は81歳、女は87歳。
 終戦直後の男50歳、女53歳からそれぞれ30年以上も長くなった。
 明治以前の平均寿命は30代から40年代だったらしい。
 70歳まで生きる人は「古来、稀(まれ)」だったから「古希」。
 織田信長が桶狭間の戦いに向かう際に吟じた幸若舞『敦盛』の一節は
 「人間50年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。ひとたび生を得て滅せぬ者のあるべきか」。
 人の一生は50年に過ぎない。天上世界と比べたら夢や幻のようなもの。命あるものはすべて滅びる。
 本成寺の変で信長が亡くなったのも49歳だった。

 とはいえ、これは平均値。
 短命もいれば長寿もいる。
 1000年前の平安時代、関白として藤原氏全盛時代を築いた藤原頼通は83歳まで生きた。
 10円玉の表に刻まれている平等院鳳凰堂を建立した人で、76歳まで関白を務めた。
 頼通の姉で一条天皇の皇后、紫式部が女房として仕えた藤原彰子も87歳、頼通の妻の隆姫女王は93歳まで生きた。
 幼いころ頼通に冷遇されたものの、即位後は藤原氏から権力を奪い返したのが白河法皇。平清盛の本当の父親という説もある法皇が崩御したのも77歳。
 平安時代であっても、権力者たちは現代と変わりなく長く生きた。

 自民党の二階俊博幹事長は昭和14年生まれの81歳。
 ちょうど日本人男性の平均寿命だが、まだ現役バリバリ。
 平安時代同様、権力中枢の人々は長生きする。
 二階氏は衆院初当選時から田中角栄元首相に師事し、田中派、竹下派、羽田派を経て平成5年に自民党を離党。新生党、新進党、自由党、保守党を渡り歩き、約10年ぶりに自民党に復党。経産相などを経て28年8月に幹事長に就任した。
 幹事長就任時の年齢は自民党史上最高齢の77歳。
 最年少記録は田中元首相の47歳。
 最長通算在職日数は田中元首相の1497日だが、二階氏が来月8日まで幹事長を務めると、この記録を塗り替える。

 日本という国も、田中幹事長のころは青年期だったが、いまは老年期のようになっている。

2020年07月10日

レジ袋と包丁

 レジ袋と包丁には共通点がある。
 レジ袋は今月から有料になった。政府が省令を改正して義務化した。
 資源の節約と海洋プラスチックごみ、地球温暖化などの問題に対応するためという。
 レジ袋を減らすと本当に海洋プラスチックごみが減り、地球温暖化に効果があるのだろうか。
 包装資材メーカーの清水化学工業は、ポリ袋こそエコなのだと主張している。
 ポリエチレンは石油精製時に必然的にできる。石油をガソリン、重油などに精製した後の残りもので作っている。捨てるよりも無駄なく使う方がエコだ。紙袋より少ないエネルギーで作ることができるうえ、軽くてかさばらないために輸送エネルギーも少なくて済む。
 ポリ袋は市町村が処理しているごみのわずか0・4%でしかなく、レジ袋をなくしてもごみ減量化や地球温暖化の効果は微々たるものという。

 海洋プラスチックごみも、主な原因となっているのは漁網やロープ、ブイ、ペットボトル、発泡スチロールなどだ。
 ポリ袋は海洋プラごみのわずか0・4%でしかない。
 レジ袋はごみ袋などとして再利用もできる。その後、燃えるごみとして処理すれば、焼却を助ける燃料になることはあっても、海洋に流れ出ることはない。
 海洋プラごみになるのは、レジ袋をごみとして処理せず、ポイ捨てしたものだけだ。
 路上などに捨てられたレジ袋が側溝から川や海に流れ出る。

 包丁を凶器とする殺人事件や傷害事件が多発した時代があった。切れ味の良さで選ばれたのかどうか分からないが、三条産の包丁を使う犯人も多かった。
 三条商工会議所には全国各地の警察からよく「○○という包丁はそちらの産地で作られているものか」といった問い合わせがあった。
 「包丁は危険だから子どもには持たせるな」などという馬鹿げた意見もあった。
 包丁が悪いのではなく、包丁を悪いことに使う人間が悪いのだ。
 包丁を目の敵にして隠してみたところで、悪人は別の凶器を使うだけだ。
 海洋プラごみの問題も同じ。
 レジ袋が悪いのではなく、レジ袋をポイ捨てする人間が悪いのだ。
 世の中からなくすべきはレジ袋ではなく、ポイ捨てだ。
 レジ袋を有料化したところで、ペットボトルや古いエコバックなどのポイ捨てが続けば海洋プラごみは減らない。

2020年05月02日

ネコの室内 ヒトも室内

 ACジャパンが「にゃんぱく宣言」というテレビCMを流している。
 さだまさしさんの『関白宣言』が新郎から新婦へのメッセージだったのに対し
 「にゃんぱく宣言」はネコから飼い主に対するメッセージとなっている。
 ネコの画像が流れるなか、
 「お前、俺の飼い主ならば
  俺の体、俺より管理しろ
  家の外に出してはいけない
  飼えない数を、飼ってはいけない
  忘れてくれるな、俺の頼れる飼い主は
  生涯、お前ただ一人ラーラーラー」
 という詞を、さださん本人が歌い、
 「正しく飼って、ずっと一緒に。日本動物愛護協会。ACジャパンはこの活動を支援しています」
 というナレーションで終わる。

 ネコの健康を飼い主が管理するのは分かる。
 飼えない数を飼ってはいけないのも当然だが、
 「家の外に出してはいけない」ものなのか。
 以前、飼いネコは家の外にも出歩いていた。深夜には、ネコたちがあちこちを歩き回っていた。
 発情期を迎えた、いわゆる盛りのついたネコの鳴き声は不気味でうるさかった。
 そういえば最近、あの声を聞かなくなった。

 なぜ家の外に出してはいけないのか。日本動物愛護協会は
 「世の中にはネコが好きな人だけではありません。外に出せば、虐待や誘惑、交通事故の危険があります。交通事故で命を落とすネコの数が殺処分数を超えている地域もあります。また、他のネコとのけんかや接触でケガや伝染病、ネコエイズなど不治の病に感染することもあります」と説いている。
 不必要な繁殖が増えれば、野良ネコや殺処分を増やすことにもつながる。
 最近は野良ネコも見なくなった。
 野良ネコがいたからエドガー・アラン・ポーの『黒猫』や萩原朔太郎の『猫町』といった小説が生まれたのに。

 ネコは家の外に出なければ病気や事故のリスクは減るが、運動不足になりやすい。
 そこは飼い主が気配りしてやらなければならない。
 我々人間も外に出なければ感染のリスクは減るが、運動不足どころか収入が減って生活を維持していけなくなる。
 ネコの場合は飼い主に面倒を見る責任がある。
 人間の場合、政府は外出するなと言っておきながら、補償などについては知らん顔をしている。

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